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ここだけは注意しておきたい会計事務所のM&A

ここだけは注意しておきたい会計事務所のM&A

更新日:

会計事務所(税理士事務所)のM&Aに注目が集まっています。税理士の平均年齢が上昇傾向にあり、事業承継としてのM&Aが増加しているためです。今回はM&A業界全体と税理士業界全体の概要を確認した後、M&Aにおける会計事務所特有のポイントを整理していきます。
この記事の監修者
キークレア税理士法人
代表税理士 三嶋泰代

M&A業界と税理士業界について

M&A業界の概況と展望

(株)レコフデータの統計によると、日本のM&Aは2011年の1,687件からから2017年の3,050件まで一貫して増加傾向を維持しています。

(株)帝国データバンクの調査によると、中小企業経営者の経営者年齢のピークは1995年の47歳から2015年には66歳にまで増加しています。このような深刻な経営者の高齢化に対する事業承継対策として、中小企業間のM&Aも活発になっています。M&A全体を見ると大企業によるクロスボーダーM&Aに加えて、中小企業間のM&Aが今後も増加していくことが予想されています。

記事監修者からの
ワンポイントアドバイス
経営者年齢のピークが47歳から66歳と推移していますが、20年の間で19歳ピークがずれただけですので、事業承継が全く進んでいないことがわかります。
キークレア税理士法人代表税理士 三嶋泰代
税理士業界の概況と展望

税理士の平均年齢が高くなっています。日本税理士連合会の調査によると60歳以上の割合が50%を超えています。中小企業全体だけでなく、税理士業界でも高齢化が進んでいるのです。また、クラウド会計ソフトの一般化などにより税理士の顧問料金など価格競争が激化しています。経営コンサルティング業務等への進出、弁護士や社会保険労務士などの他士業との連携によるワンストップサービスの提供、M&Aを利用した大規模化によるスケールメリットの拡大、等々の対策が業界全体で進んでいくことが予想されます。

記事監修者からの
ワンポイントアドバイス
税理士は科目合格制であるため時間をかけて勉強ができること、税務署に23年勤務すれば税理士になれることが、平均年齢を押し上げている要因となっています。
キークレア税理士法人代表税理士 三嶋泰代

会計事務所のM&Aによる譲渡側・譲受側それぞれのメリット

売却による譲渡側事務所のメリット

ポイント:顧客への安定的なサービス提供・雇用の維持

長年お付き合いのあるお客様と従業員を売却することに心理的な抵抗がある代表者様も多いのが実際ではないでしょうか。後継者不在などの状態であれば、売却によって顧客への安定的なサービス提供と従業員の雇用を守ることができます。自前で後継者育成ができていないのであれば売却は良い選択肢の1つと言えます。

また、大手会計事務所との連携により顧客に対してもより良いサービスを提供できる可能性があります。弁護士なども在籍する大手会計事務所との連携によりお客様に頼られる事業者になれる可能性も高いのです。

購入による譲受側事務所のメリット

ポイント:スピーディな規模拡大・人材の確保

譲受側事務所のメリットはスピーディに規模拡大を行えるという点です。新規営業せずとも対応エリアを拡大することができます。また、人材不足と言われる中、専門的な人材である税理士他を迅速に確保できる点も魅力と言えるでしょう。

譲受側事務所は大手事務所だけではありません。例えば、新規開業予定の税理士が既往事務所を買収することで事業をスタートするという考え方もあります。新規開業予定の税理士としては、安定顧客基盤を引き継いだ形で事業を開始できるため、そのリスクを軽減することができます。

記事監修者からの
ワンポイントアドバイス
新規開業予定の税理士が事務所を引き継ぐケースは近年増えています。新規営業の手間が減りますが、なかなか事務所を承継してくれない、などのトラブルも増え始めているようです。
キークレア税理士法人代表税理士 三嶋泰代

売れやすい会計事務所の条件4つ

安定した顧客基盤を確保している

会計事務所が事業売却する際、一般的には事務所の顧問報酬金額(年間)を基本に査定されます。顧問報酬金額(年間)とは一般的に記帳代行や税務申告に関する顧問料で構成されます。単発での相続業務などは査定にいれません。このことから、ある程度売れやすい事務所と売れにくい事務所がわかります。例えば、従業員5名程度で売上高8,000万円の事務所でもスポット的な業務が多ければ価値は低くなりますが、顧問契約が多く安定基盤が確保されている事務所は相対的に高く評価されます。

また、顧客企業の層についても、優良企業が多ければそれだけ魅力は高まりますが、ギリギリで経営している零細企業ばかりでは安定性に欠けると言わざるを得ません。優良な取引先が多ければ多いほど売れやすい事務所ということになります。

顧客だけでなく従業員(=担当税理士)も引き継げる

個人の税理士事務所も税務申告など定型業務だけでは差別化が難しく売上や利益が低下傾向にあるため、経営コンサルティングのような業務に従事している場合があります。このような場合、顧客は担当の税理士=個人に付いていることが多いため、M&A後にきちんと顧客を引き継げるかどうかがポイントになります。譲渡側事務所の担当税理士が引き続き業務に従事するような吸収合併の形であればこの問題は小さくなります。

売れやすい規模感

税理士1人で売上高1,000万円程度の小規模な事務所は売れづらい傾向にあります。顧客が個人としての税理士についている場合が多く、顧客は「先生がやめるなら他の事務所も含めて顧問先を検討する」という判断をすることになります。結果として、譲受側事務所としては顧客基盤の拡充という買収目的を達成できないのです。

前述の「顧客だけでなく従業員も引き継げる」に記載した通り、担当税理士も一緒に買収できない先は売れづらくなるので、売れやすい規模感としても最低従業員1名以上からということになります。

魅力的なエリアもしくは業界

譲渡側事務所の担当しているエリアが譲受側事務所にとって魅力的がどうかは都度異なります。譲受側事務所が事業を営んでいるすぐ近くのエリアを望んでいる場合もあれば、少し離れたところでも良い場合など様々です。

譲渡側事務所が顧問契約を締結している業界が特殊な場合なども売れやすい傾向にあります。法務の知識が必要な業界などを顧問していれば、担当税理士も特殊なスキルを身につけていくことになります。そのようなスキルを持った税理士と顧客を一緒に買収したいと譲受側事務所が考える可能性があるためです。

記事監修者 三嶋税理士からのワンポイントアドバイス

会計事務所のM&Aには色々な注意点があります。また、税理士である従業員がきちんと引き継げないと、顧客基盤を毀損してしまうリスクもあり、譲渡側・譲受側ともに不幸な結果となってしまいます。このように会計事務所M&A「ならでは」の難しさがあります。

税理士であれば自分でやれると考える方も多いようですが、やはり得意な分野は得意な方にお任せする、もしくはセカンドオピニオン的に意見を聞いてみることも失敗を避けるためにも重要です。会計事務所のM&Aは、実績のあるアドバイザーにお願いすることをおすすめします。

この記事の監修者
キークレア税理士法人
代表税理士 三嶋泰代
「顧問先のビジョン達成のために貢献することをもって、日本の中小企業を元気にする」というミッションの下、グループ7社の専門知識によるワンストップサービスを提供。税理士法人が徹底した現状分析を行い顧問先の課題を抽出し、財務コンサルタントが財務戦略を構築する。分析と課題解決によって、顧問先をビジョン達成へと導く。

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uen0(ライター)
政府系金融機関にて約5年法人融資業務に従事。年商1,000万円から200億円まで様々な規模、業種を担当。融資だけでなく、外為、M&A等にも携わる。現在は自身の起業を準備をする傍、個人事業主や起業家向けコンサルティング業務を行っている。
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