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半沢直樹の買収防衛策の全容とは? 覚えておきたい防衛策と用語解説
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■買収の種類
買収と言えば、企業や個人が企業を買うことを指しますが、これには友好的買収と敵対的買収があります。それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
友好的買収
友好的買収とは、買収する側とされる側の間で協議を重ね、合意を得たうえで実施される買収です。事前に買収する承諾を得ているため、「友好的」と言えます。買収の手法には、株式譲渡や事業譲渡、第三者割当増資などがあり、どの方法であっても事前に合意を得ている買収はすべて友好的買収にあたります。
実際に行われている買収のほとんどが友好的買収です。合意を得たうえで実施することで、交渉や手続きなどがスムーズに進みます。
敵対的買収
敵対的買収は、買収する側とされる側の間で合意がない状況で買収を仕掛けるケースです。買収は、相手の同意を得ていなくても実行できます。そのため、買収されたくない相手から敵対的買収を仕掛けられた場合、買収防衛策を講じなければ経営権を奪われるのです。
敵対的買収は、基本的に株式公開買付によって行われます。経営権を取得するには、議決権の過半数の取得を目指すことになり、それ相応のコストがかかります。また、買収防衛策によって失敗するリスクが高く、さらには世間からの評判も落ちる恐れがあるため、実際にはほとんど行われていません。
■買収防衛策の種類
敵対的買収に対しては、買収防衛策を講じる必要があります。さまざまな方法があるため、自社の状況に合わせて選ぶことが大切です。買収防衛策の種類を詳しくみていきましょう。
ポイズンピル
株式数を増やすために、新株予約権を既存株主に付与する方法です。株式数が増えることで、過半数の取得に必要なコストが増加すると同時に、現時点での持ち株比率が低下するため、買収を防げます。買収にかけるコストが増えることで、買収に対する意欲を低下させたり、コストと買収のメリットのバランスを崩したりできます。
ホワイト・ナイト
敵対している企業による買収を防ぐべく、別の企業と友好的買収や合併をする方法です。対象となる会社が第三者割当増資を実施したり、新株予約権を付与したりすることで実現できます。「半沢直樹」で実施が検討されていた買収防衛策がホワイト・ナイトです。
パックマン・ディフェンス
パックマン・ディフェンスは、敵対的買収を仕掛けきた企業に対し、こちらも買収行為を行う手法です。また、買収に必要な資金調達を目的として資産を処分したり借入金を増やしたりすることで、自社の魅力を低下させ、買収の意欲を削ぐことも目的です。
ゴールデンパラシュート
ゴールデンパラシュートは、買収される側の役員退職金を高くすることで、結果的に買収の意欲を削ぐ方法です。買収に成功した場合、会社の経営陣を一新します。このとき、既存の役員に対しては役員退職金の支払いが必要です。
役員退職金が高額だと、買収後に資金がショートしたり事業の発展に必要な資金が不足したりする恐れがあります。結果的に敵対的買収が成功したとは言えなくなるため、買収の意欲が低下するのです。
ティンパラシュート
ティンパラシュートは、従業員の退職金を高くすることで、買収意欲を削ぐ手法です。ただし、買収後に人的整理を行うケースでなければ効果はありません。また、人的整理を行わなくても、買収を機に多数の退職者が現れることが予測される場合は、ティンパラシュートの効果があります。
敵対的買収を仕掛けてきた企業が人的整理を行うのか、買収後にどれだけの社員が退職するのかなど、事前の調査が必要です。
マネジメント・バイアウト
マネジメント・バイアウトは、経営陣が自社株を買い取ることで非上場化し、買収企業が経営権を取得できないようにする手法です。非上場化すれば、株式を自由に売買できなくなるため、敵対的買収を防げます。
チェンジ・オブ・コントロール
チェンジ・オブ・コントロールは、敵対的買収を仕掛けてきた企業に経営権が渡ったときに、制限がかかったり契約が解除されたりするように条項を設定する手法です。
例えば、過半数の株式を他社が取得した場合は、催告なく特定の企業との契約を解除できる条項を定めた場合、敵対的買収を成功しても会社の売上が大きく低下する恐れがあります。そのため、買収意欲を削ぐことが可能です。
クラウン・ジュエル
クラウン・ジュエルは、買収企業にとって魅力的な事業や資産、子会社を他の企業へ譲渡したり分社化したりすることで、買収意欲を削ぐ方法です。クラウン・ジュエルは、「王冠の宝石」を意味します。王冠は「会社」、宝石は「買収企業にとって魅力がある事業や資産など」です。そして、王冠から宝石を外して魅力を低下させることで買収を防ぎます。そのため、クラウン・ジュエルと呼ばれています。
ただし、クラウン・ジュエルを実施した取締役は、善管注意義務違反(※1)や忠実義務違反(※2)に問われる可能性があります。
※2 法令や定款、株主総会会議を遵守し、会社の利益や信頼のために責務を忠実に果たさなければならないという義務に違反すること
資産ロックアップ
資産ロックアップは、買収直後に買収された資産の売却ができないように定款で定める手法です。敵対的買収を仕掛ける企業は、資産の売却を目的としているケースがあります。目的と合致している場合は、資産ロックアップは有効な買収防衛策です。
ジューイッシュ・デンティスト
ジューイッシュ・デンティストは、敵対的買収を仕掛けられた際にマスコミに対して自社の評判を落とすような発言や情報公開を行い、社会的信用を低下させることで買収意欲を削ぐ手法です。
このような状況で買収したとしても、社会的信用が落ちたことで業績が低迷する恐れがあるため、買収意欲は大きく低下します。
■半沢直樹で行われた買収防衛策
「半沢直樹」に登場した買収防衛策は、ホワイト・ナイトです。電脳雑技団がスパイラルに対して敵対的買収を仕掛けました。そこで、スパイラルの社長は、昔から尊敬していた人物が社長を務める「フォックス」と友好的買収を行うことで、電脳雑技団による敵対的買収を防ぐ作戦を立てたのです。
しかし、フォックスと電脳雑技集団は裏で繋がっており、フォックスとスパイラルが友好的買収を実行した後に、電脳雑技集団がフォックスを買収することで、電脳雑技団のフォックスの株式の持ち分が過半数に達し、スパイラルも買収される作戦でした。
その作戦が発覚後、スパイラルは半沢直樹をアドバイザーに迎え入れ、フォックスを買収することで電脳雑技団による敵対的買収を阻止しました。
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■まとめ
敵対的買収を仕掛けられたときに、100%買収を防げる方法は存在しません。会社の価値や社会的信用を落とすような手法もあり、どの手法を選ぶか慎重に検討することが求められます。安全性が高いのは、「半沢直樹」にも登場したホワイト・ナイトでしょう。しかし、ドラマの中の話とはいえ、敵対的買収を仕掛けてきた企業と裏で繋がっているケースもあるかもしれません。いずれにしても、敵対的買収を仕掛けられたときは、自社を守るために買収防衛策を講じることを検討しましょう。
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