病院・クリニックの業界動向
病院・クリニックの件数(2019年時点)
厚生労働省によると、日本全国での病院の数は、年々減少傾向、一方で診療所は増加傾向にあり、特に無床の診療所を中心に増加している。
【病院・一般診療所の年間推移】
出所:医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚生労働省)
病院・クリニック業界の現状・課題
国民医療費は年々増大傾向
厚生労働省の発表によると、平成30年度の国民医療費は、総額で43兆3,949億円で、 平成29年度より3,239億円の増加となり、過去最高を記録した。 年齢階級別の内訳比率は、70歳以上が49.9%で21兆6,708億円となり、全体の約半数を占めている。
【国民医療費推移】
出所:厚生労働省
【年齢別_国民医療費】
出所:厚生労働省
診療所医師の約半数は60歳以上
病院医師と診療所医師での年齢別の人数の比較では、病院医師の60歳以上の医師数は全体の15%程度の人数に対して、診療所での60歳以上の医師の人数は、29.8%と約半数を占めている。
【病院医師の年齢別人数】
出所:厚生労働省
【診療所医師の年齢別人数】
出所:厚生労働省
診療所では8割以上が後継者不足
日本医師会総合政策研究機構の「日医総研ワーキングペーパー」によると診療所では86.1%、病院では68.4%が「後継者が決まっていない」という調査結果が出ている。全業種の66.5%に比べて、診療所、病院共に高い結果となった。
【診療所の後継者不足率】
【病院の後継者不足率】
【全業種の後継者不足率】
出所:日医総研ワーキングペーパー(日本医師会総合政策研究機構)
病院全体でみると7割以上、私的病院においても4割以上が赤字
働き方改革における診療報酬改定
医療機関における収入は診療報酬が中心だが、2年に1度の診療報酬改定の見直しが行われており、その内容によっては経営に大きく影響する。 2020年度の改定では、診療報酬本体は0.55%引き上げ、薬価と材料価格は、合計で1.01%下げられます。
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置
平成29年度の税制改正により、医療法人が一定の認定要件を満たして認定を受けた場合には出資者の出資持分に係る相続税・贈与税の猶予・免除等を受けられる「持分なし医療法人への移行促進制度」の特例措置の適用期限がが3年延長となった。また、従来、持分なし医療法人移行時には当該医療法人は個人とみさなされ、贈与税が課される可能性があったが、 “認定医療法人制度の認定を受けること”、”移行期間までに持分なし医療法人へ移行すること”、”持分なし医療法人へ移行後6年間、「認定医療法人」の認定要件を維持していることを確認すること”の3つの要件を満たしている場合は非課税対象となる 。
医師・看護師の確保
質の高い医療サービスを提供し続けるためにも、医師・看護師確保が重要な問題となっている。特に看護師については特に深刻で、その需要が供給を上回っている。
当面は各医療機関による看護師の争奪戦となる。
最大のコストは人件費であると言えるが、最も割合の多い看護師の人件費の高騰が病院経営を圧迫する場合も少なくない。 看護師や准看護師の資格を保有するが、出産や子育てなどにより現場を離れていた「潜在ナース」の活用も注目を浴びている。
また、医師においては、診療科や地域の偏在が問題となっており、絶対数を増やすと共に偏在傾向の是正も必要。
また、厚生労働省による看護職員需給分科会によると、2025年の看護職員の需要推計は188万~202万人となる予測で、実際の供給推計は175万~182万人程度見込まれるとしている。つまり、6万人~27万人が不足する結果となっており、今後の看護職員の確保が課題となってくる。
【医師の需要と供給の見通し】
出所:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会第4回資料 (医師需給分科会)」
【看護師の需要と供給の見通し(常勤換算)】
参考:厚生労働省「第七次看護職員需要見通し」
病院・クリニックにおけるM&A活用のメリット
- 後継者問題を解消できる
- 創業者利益を得てハッピー・リタイアができる
- 大手との融合で規模・生産性の向上による収益性の確保
- 医業への集中ができる
- 個人保証、担保提供から解放される
譲渡側のM&Aのメリット
- 病床数の増加が図れる
- 医師・看護師などの優秀な有資格者を確保できる
- 地域シェアの拡大が図れる
- 病床数規制等の参入障壁を回避できる
- 規模の利益の享受
譲受側のM&Aのメリット
病院・クリニック業界のM&Aのポイント
- 病床稼働率は適正か
- 1日当たりの患者数はどのくらいか
- 人員体制(有資格者のの人数、年齢構成、経験)、労務問題(雇用形態)
- 医療サービス及びスタッフのホスピタリティ
- 診療体制、安全面、サービス面等に問題はないか