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法人を売却するとどのような税金がかかる? 法人売却と税金の関係

法人を売却するとどのような税金がかかる? 法人売却と税金の関係

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後継者がいない、または、新しい事業を始めたい等の理由で、法人を売却しようと考えている経営者は少なくありません。M&Aなどが一般化している現在において、会社売却自体はスムーズに運ぶ場合が多いです。そこで、気を付けたいのが税金のことです。ここでは、法人を売却するとどのような税金がかかるか解説します。

■法人の売却には株式譲渡と事業譲渡がある

一言で法人の売却といっても、実は2つの種類があります。それが「株式譲渡」と「事業譲渡」です。株式譲渡と事業譲渡がそれぞれどのようなものかを見ていきましょう。

法人の売却における株式譲渡とは

「株式譲渡」とは、売却しようと考えている法人の株式を別の個人や法人に売却することをいいます。法人の株主には、個人である場合と法人である場合があります。経営者の多くは個人で、自分の会社の株式を保有している場合が多いです。会社の株式を譲渡することで、購入者はその会社の意思決定に影響を与えることができ、売却した経営者は資金を得ることができます。

法人が株主である場合とは、例えば、親会社が子会社の法人を売却する等のケースです。子会社の株式を譲渡することで、経営権を放棄する代わりに、資金を得られます。

法人の売却における事業譲渡とは

「事業譲渡」とは、会社そのものを売却するのではなく、その会社で行っている複数の事業の内の1つ(または複数事業)を売却することをいいます。会社そのものを売却するわけではないので、会社の株式を売却することはありません。売却する事業に必要な技術や人員、設備などを売却します。

法人が法人のものを売却するため、通常、事業譲渡で個人が関係することはありません。
法人が事業を売却することで、資金を得ます。

■株式譲渡の場合にかかる税金

ここまでは、法人の売却の2つの方法である、株式譲渡と事業譲渡の概要を見てきました。

登場人物が異なるので、それぞれで税金についても異なります。株式譲渡の場合は、売却する会社の株主が個人である場合と、法人である場合があります。そこで、それぞれにかかる税金について見ていきましょう。

株主が個人の場合の税金

会社の売却で、個人が自分の保有している株式を売却した場合は、その個人に対して税金がかかります。個人に課される税金は、所得税と住民税です。厳密にいうと、株式を売却して利益が出た場合に税金がかかります。

株式を売却して得た利益のことを「株式に係る譲渡所得」といいます。株式に係る譲渡所得の金額は、次の計算式で求めます。

株式に係る譲渡所得の金額=
総収入金額(売却価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)

株式に係る譲渡所得は、サラリーマンの給与所得や個人事業主の事業所得などと税率が異なります。そのため、経営者が個人で他の事業をしていた場合、事業で赤字が出ても株式に係る譲渡所得の黒字を相殺することはできません。株式に係る譲渡所得の税率は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%(令和19年まで)の合計20.315%です。具体例で税額を見てみましょう。

例)売却価額1億円、取得費3,000万円、M&A委託手数料等1,000万円の場合

株式に係る譲渡所得の金額=
売却価額1億円-必要経費(取得費3,000万円+委託手数料等1,000万円)=6,000万円
株式売却に関する税額=6,000万円×20.315%=12,189,000円
株主が法人の場合の税金

次に、会社の売却で、法人が自分の保有している子会社などの株式を売却した場合の税金について見ていきましょう。法人が自社が持っている株式を売却して資金を得るため、法人に対して税金が課されます。法人は個人のように、所得が複数の種類に分かれているケースはありません。株式の売却益と事業の黒字(赤字)をプラスした全体の利益に対して、法人税がかかります。

法人にかかる税金の税率は、法人の規模や利益などによって異なりますが、概ね平均すると30%程度です。自社が持っている株式を売却した場合は、本業の利益に対する税金にプラスして株式売却益に対する税金がかかることになります。株式の売却益の考え方は、個人の場合とほとんど同じです。具体例で法人の税額を見てみましょう。

例)売却価額1億円、取得費3,000万円、M&A委託手数料等1,000万円、税率30%の場合

株式に係る売却益の金額=
売却価額1億円-必要経費(取得費3,000万円+委託手数料等1,000万円)=6,000万円
株式に係る売却益にかかる税金の金額=売却益6,000万円×30%=1,800万円

です。

■事業譲渡の場合にかかる税金

次は事業譲渡の場合にかかる税金について見ていきましょう。事業譲渡の場合、通常は、法人間でのやり取りになるため、法人に対して課税されることになります。

事業譲渡の場合にかかる税金とは

法人が事業を譲渡して、課される税金は、実は大きく分けて2つあります。法人税(法人地方税なども含む)と消費税です。それぞれ見ていきましょう。

①法人税

法人税は、法人が株式を売却した場合と同じ考え方です。事業の売却価格から、取得費や売却に係った経費などを差し引いた利益に対して税金がかかります。取得費の金額については、どのようなものを売却するのかによって、その考え方や求め方が異なります。具体的な取得費の求め方が不明な場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

②消費税

法人が会社を売却する場合に、株式譲渡か事業譲渡かで大きく異なるのが消費税です。株式の売却はその性格上、消費税の課税対象になりません。しかし、事業譲渡の場合は事業で使っているものを売却するため、消費税の課税対象となります。

※事業譲渡するものの中に、土地や有価証券、貸付金などのそもそも消費税のかからないものが含まれる場合、それらの売却金額には消費税はかかりません。

増税後の消費税の税率は10%と高く、場合によっては数百万円の消費税額の増加となる場合もあります。事業譲渡を行う際には、消費税の金額も忘れずにシミュレーションしてから、資金繰りの計画などを立てる必要があります。

事業譲渡の場合の注意点

事業譲渡では、通常は法人間でのやり取りになるため、法人に対してのみ税金がかかると説明しましたが、実は、個人にであっても税金がかかる場合があります。それは、事業譲渡によって得られる収入を個人である経営者が受け取る場合です。
法人で行っている事業の大部分を売却した場合や、経営者が会社から退く場合などでは、事業譲渡によって得られる収入を個人である経営者が受け取るケースもあります。この場合、経営者は利益を得ることになるので、経営者個人に対して所得税や住民税が課されることになります。
金額の受け取り方により異なる場合もありますが、通常、この場合の所得税などの税率は、株式の譲渡のように一定ではなく、利益の金額が高いほど税率も高くなります。そのため、確定申告の時期に、思ってもみなかった高い税額の納付となることがあるために、注意が必要です。

■まとめ

法人を売却する場合に注意が必要なのは、税金のことです。株式譲渡にするのか事業譲渡にするのか、個人が関係する行為なのか、法人だけの行為なのかなどによって、税金の種類や納税の対象(個人か法人か)も大きく変わります。
法人を売却する際には、手許残高がどれぐらいになるのか計算し、売却後の資金繰りの計画を立てているはずです。しかし、課税関係を間違えてシミュレーションしてしまうと、大きく計画と異なる結果になり、法人売却の成果が小さくなりかねません。そのため、法人を売却しようと考えた時には、できるだけ早く税理士などの専門家に相談し、綿密な計画を立てるようにしたほうが良いでしょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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