税理士の無料紹介相談窓口
0120-374-024
メールお問い合わせ 年中無休で24時間受付中

NTTに続け? これからTOBが増えそうなこれだけの理由

NTTに続け?  これからTOBが増えそうなこれだけの理由

更新日:

昨年末、NTTによる子会社NTTドコモに対するTOB(株式公開買付)が成立し、ドコモの東京証券取引所への上場が廃止になりました。NTTは、ドコモを完全子会社化したことにより、今後、携帯電話料金の値下げといった課題にグループの総力を挙げて取り組んでいく方針だ、と伝えられました。ところで、そもそもTOBとは、どういうものなのでしょう? 持っていた株がその対象になったら、どうなるの? わかりやすく解説します。

■公開株式を、市場を通さず直接売買する

NTTは、2020年9月29日にドコモのTOBを発表し、翌9月30日から11月16日までドコモ株の買い付けを進めた結果、保有比率を90%超(ドコモの自己株式などを除く)に高め、完全子会社化にめどをつけました。

 

TOBとは、ある上場企業の不特定多数の株主に対して、買付価格や期間などを公にしたうえで、保有する株券の譲り渡しを要請し、取引所外でそれを買い付けることを言います。企業買収や、今回のNTTのように合併や子会社化といった企業再編の手段などとして用いられます。

 

ちなみに、持ち株比率が50%を超えれば、役員人事も含めた経営の支配権を握ることができます。さらに、2/3以上になると、事業譲渡、会社分割をはじめ、会社にとっての重要事項についての決定権を持ち、100%の完全子会社にすれば、少数株主に気兼ねすることなく経営ができるようになります。子会社から得る利益も、最大化されることになるのです。

 

ただし、市場の外で株を買い取ろうというのですから、相場より安くては話になりません。通常は、TOB発表時点の株価にプレミアを付けた買取価格が提示されることになります。ドコモの場合は、3,000円前後だった株価に対して、3,900円での買い取りとなりました。それだけコストをかけても、完全子会社にするメリットがあるというのが、NTTの判断だったわけです。

 

■敵対的TOBとは?

NTTのTOBは、その対象となったドコモも株の買い取りに同意した「友好的」なものでした。しかし、TOBが、いつもそのようなものだとは限りません。むしろ、本来の意味は、ある会社の経営権を狙って仕掛けられる「敵対的なTOB」にある、と言えるかもしれません。そういう意味では、昨年は、NTTドコモも含めて“TOBの事例研究”のような案件が相次いだ1年でした。2つ挙げてみます。

〈コロワイドvs大戸屋の「敵対的TOB」〉

1つは、外食大手のコロワイドが、もともと20%近く保有していた大戸屋ホールディングスの株式を買い増し、経営陣を一新する目的で行ったTOBです。仕入れや調理方法の改革を迫ったのに対し、大戸屋がそれに反対の姿勢を示したため、敵対的TOBという強硬手段に訴えたのでした。

 

減益が続いていたところに、コロナ禍が直撃したことから、立て直しを急ぐ必要があるというコロワイドの判断で行われた買取の結果、同社の持ち株比率は19.16%から46.77%に高まり、TOBは成立となりました。

〈ニトリvs DCM vs島忠の「異例のTOB」〉

もう1つ注目されたのは、家具日用品大手のニトリホールディングスが、ホームセンターを展開する島忠に対して実施したTOBです。12月28日までの買付期間に77%あまりの応募があり、50%取得を目標としていたTOBは成立しました。ニトリは、残る島忠株も買い進め、完全子会社化を目指すとしています。

 

これ自身は、島忠も同意した友好的なTOBでしたが、実は買い手には「先客」がいました。ホームセンター大手のDCMホールディングスが、やはり完全子会社化を目指して、先に島忠のTOBを始めていたのです。結局、それは成立せず、DCMよりも3割ほど高いプレミアムを提示したニトリが、“後出しじゃんけん”よろしく勝利を収めました。

 

普通こうしたケースで考えられるのは、「最初に仕掛けられた敵対的TOBから、対象となった企業を救うために行われる友好的TOB」といったパターンです。ちなみに、この場合に、敵対的TOBで経営権を奪おうとする相手に対抗すべく現れる第三者を、「ホワイトナイト(白馬の騎士)」と呼びます。

 

ところが、この島忠の案件では、DCMとのTOBも友好的なものでした。ですから、後発のニトリのほうは、当初敵対的TOBのスタンスにあったのです。しかし、その後、島忠側が子会社化に関するニトリの提案を受け入れたことから、「友好的TOB同士が争う」という異例の展開になりました。

 

■「完全子会社化、上場廃止」のトレンドは続く?

NTTの件に話を戻すと、ドコモに対するTOBの目的は、同社の上場を廃止して完全子会社にすることでした。親会社と子会社が共に株式を上場している状態を「親子上場」と言います。NTTは、コストをかけてその解消を図ったことになりますが、では、「子どもも上場させる」意味は、どこにあったのでしょう?

 

親子上場が花盛りだった1990年代当時、そのメリットとして、次のようなことが意識されました。

 

  • 子会社の経営の独立性が高まる
  • 子会社の資金調達がしやすくなる
  • 子会社の知名度が上がり、営業や採用で有利になる
  • 親会社は経営権を維持できて、子会社の成長による利益を享受できる

 

しかし、実はこの親子上場は、欧米などではあまりポピュラーではなく、批判の対象にさえなることがあります。それには、次のような問題があるからです。

 

  • 子会社が親会社の影響を受ける結果、最適の経営方針を貫けなくなる可能性がある
  • 逆に親会社からすると、完全子会社などに比べ子会社に対する影響力は低くなり、グループとして最適の方針が実現できない可能性がある
  • 親子のどちらかが、買収価値に対して割安な株価に放置されることがあり、買収の対象になりかねない

 

遅ればせながら、日本でもこうした親子上場のデメリットが認識され始めた結果、今後その解消に向けた動きが加速することになりそうです。解消の方法は、大きく言って「自分の元に呼び戻す」か、「完全に独り立ちしてもらう(保有する子会社株の売却)」か、「他者に嫁いでもらう(事業譲渡)」か――になります。今後、「呼び戻す」ためのTOBが加速するのは、間違いなさそうです。

 

さきほども説明したように、TOBによる買取価格には、プレミアが付くのが普通です。今から親子上場の解消に動きそうな会社の株を仕込んでおいて一儲け、というのも可能かもしれません。

 

■まとめ

株の買取価格などを公にして、市場の外で売買するTOB。デメリットが認識された親子上場解消の手段として、今後、その件数の増加が予想されます。

M&A無料相談はこちら
ページのトップへ