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債務超過の企業でもM&Aできる? 債務超過でM&Aする際の注意点とは

債務超過の企業でもM&Aできる? 債務超過でM&Aする際の注意点とは

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企業が債務超過に陥ると倒産や廃業をイメージするかもしれません。しかし、債務超過の企業や事業でも、利益が出ていて将来性が見込めるならM&Aによる売却が可能です。ただし、債務超過ならではの注意点があります。
  ここでは、債務超過の企業や事業でもM&Aができる理由や注意点について解説します。

債務超過と赤字の違いとは

「債務超過」は債務が資産よりも多い状態を指しますが、よく似た表現に「赤字」があります。いずれも企業の経営状態を示す表現としてはネガティブなものですが、それぞれが示している状態は異なるものです。

債務超過とは債務の超過のこと

債務超過とは、資産よりも負債のほうが大きい状態を指します。もっとも、資産や負債は「ストック=決算日など“ある時点”における財産の状況」を示す指標であり、売上や人件費、原材料費とこれらの収支である利益・損失の流れを表すものではありません。したがって、1年間の企業活動を通じて利益が出ていても、債務超過になることはあり得ます。

赤字とは利益がマイナスのこと

赤字とは、利益よりも損失のほうが大きい状態を指します。資産や負債が「ストック」を示す指標であるのに対し、利益や損失は「フロー=1年間など“ある一定期間”における経済活動の結果」を示したものです。したがって、赤字であっても債務超過にはなっていないこともあります。

債務超過M&Aのメリット・デメリットとは

債務超過の企業・事業であってもM&Aによる買収は可能です。債務超過であることが買い手・売り手双方にとってメリットとなることもあります。

債務超過でもM&Aはできる

債務超過の企業・事業でもM&Aによる買収の対象になるケースは珍しくありません。先に述べたように債務超過と赤字は必ずしも連動せず、債務超過であっても利益を出していて、負債を返済できている企業がたくさんあるからです。
 
債務超過の企業・事業を買収または売却することは、買い手・売り手それぞれにメリットがあります。デメリットと合わせて見てみましょう。

債務超過M&Aのメリット・デメリット

●メリット
・買い手のメリット
買い手にとっては、利益の出ている企業・事業を割安で買収できる可能性があります。M&Aの交渉を行う過程で売却対象の企業・事業の価値評価を算定しますが、評価方法には以下の3つの方法があります。
 

コストアプローチ…売り手企業の純資産をもとに評価する方法
インカムアプローチ…売り手企業に将来期待される収益力をもとに評価する方法
マーケットアプローチ…売り手企業と類似する企業と比較して、株式価値を算定する方法

債務超過になっている黒字企業・事業で、特に中小企業では、コストアプローチとインカムアプローチを合わせた方法で企業価値を算出することが多いです。この方法では、資産や負債とのれん代(年間利益に一定年数をかけたもの)を足して企業・事業価値とするため、債務超過になっていると評価が下がります。その結果、業績のよい企業・事業を割安で買える可能性が出てきます。
 

また、以下のように条件は限られますが、節税効果を得られる場合もあります。
 

▽赤字を出している企業を買収した場合、その企業を存続させて黒字化すると、買収した企業の繰越欠損金と利益を相殺することで節税につながる(ただし、一定の制限があるので注意)
 

▽赤字を出している企業を買収し、吸収合併する場合「みなし共同事業要件」を満たせば、吸収された側の繰越欠損金は買い手側企業が引き継げる
 

・売り手のメリット
売り手のメリットにはいくつかあります。一つ目のメリットとして挙げられるのが、借入金についている経営者の個人保証が外れることです。金融機関などからの借入金に対して多くの場合、経営者個人が連帯保証人になっています。買い手側が連帯保証を引き継いでくれれば、個人保証を外すことができます。
 

二つ目のメリットは、売却益が得られることです。債務超過の状態なので、そうでない場合に比べて企業・事業価値は落ちるものの、黒字を出していれば売却益を得られる可能性があります。
 

三つ目のメリットは、従業員の雇用を維持できることです。何年も企業が債務超過の状態になっていると、経営者は会社を倒産させることを考えますが、倒産すると雇用している従業員が路頭に迷ってしまいます。債務超過でもM&Aによって買収されれば、買い手側が買収した企業の従業員をそのまま引き継いでくれる可能性が高いです。
 

●デメリット
・買い手のデメリット
買い手側はM&Aを行うにあたり、売り手企業・事業の現在の収益や将来性を調査して買収を決定します。しかし、買収した企業・事業が将来的に想定したほどの利益を生み出さないリスクはあります。
 

・売り手のデメリット
買い手側のメリットで述べたように、債務超過の状態にあることで企業や事業の価値評価が低くなります。本来、企業や事業が持つ収益力やポテンシャルよりも低く評価され、割安で買収される可能性があります。

債務超過でM&Aする場合の注意点

債務超過の企業や事業をM&Aの対象にする場合、売り手は買い手や自社の債権者に対する配慮が必要です。ここでは2つの注意点を挙げておきます。

詐害行為とみなされないようにする

債務超過を抱えている企業が自社やその事業をM&Aで売却する場合、詐害行為とみなされないように注意する必要があります。
 

債務超過の企業は本来、倒産する前に自社の資産を売却し、銀行や取引先などの債権者にお金を支払います。しかし、倒産前に資産を第三者に安い価格で売却してしまうと、債権者はお金を返してもらえなくなります。
 

このように、債権者への返済を免れようとして資産を減らす行為を「詐害行為」とよびます。債務超過の企業は格安で売却されるケースが多く、売り手の債権者から詐害行為とみなされる可能性があります。
 

M&Aにはさまざまな手法があり、よく用いられる方法として株式譲渡と事業譲渡があります。
・株式譲渡…株主が保有している株式を売却し、企業の経営権を譲渡する
・事業譲渡…事業の一部を譲渡する
 

株式譲渡は資産・負債のいずれも買い手が引き継ぐため、取引は詐害行為とはみなされません。しかし、事業譲渡では、買い手は資産のみを引き継ぐことができます。買い手の資産だけが減って負債は買い手に残るため、買い手の債権者はお金を返してもらえなくなる可能性があるのです。
 

法律では、詐害行為によって債権者が不利益をこうむることがないよう、債権者の「詐害行為取消権」を保障しています。詐害行為取消権とは、詐害行為を無効とする権利です。
 

M&Aが詐害行為であると売り手の債権者が見なした場合、詐害行為取消権を行使され、裁判所に詐害行為と認められるとM&Aは取引無効とされてしまいます。あるいは、M&Aの取引自体が無効にならない場合でも、買い手が売り手側の債権者から追加で支払いを求められることがあります。

詐害行為とみなされないようにするには、売り手は事業譲渡の際に売却価格が安くなりすぎないよう注意する必要があります。詐害行為とみなされないような売却価格を出すには、M&Aの専門業者や公認会計士などの専門家に相談することをおすすめします。

債務超過でM&Aする場合は情報開示をしっかりと行おう

上述したように、債務超過企業のM&Aには詐害行為とみなされるリスクがあり、売り手側の債権者が詐害行為取消権を行使すると、買い手側にも負担がかかります。売り手側が債務超過の状態で事業譲渡によるM&Aを行う場合は売り手側に情報開示をしっかり行い、債務超過の企業を買収するリスクを買い手側に認識してもらいましょう。
 

そもそもM&Aにおいて、売り手は契約書の中で表明保証条項を付けることが一般的です。「表明保証」とは、売却する企業や事業に関して買い手側に伝えた財務・法務などの情報が事実であることを保証することです。
 

M&Aの契約締結後、債務超過が発覚して詐害行為となる可能性があることがわかると、売り手側は買い手側から表明補償違反を問われ、契約解除や損害賠償を求められる事態になりかねません。債務超過であるかどうかにかかわらず、M&Aにおいて売り手は情報開示に対する誠実な対応が求められます。

まとめ

債務超過の企業や事業でもM&Aの対象とすることは可能で、売り手にも買い手にもメリットがあります。しかし、売り手は売却の際、自社の債権者に売却が詐害行為とみなされないよう注意が必要です。また、債務超過の事実や詐害行為のリスクなど、売却する企業や事業に関する事実を契約前に買い手に伝えておくことも重要です。
 

債務超過の企業・事業のM&Aでは、企業・事業の価値評価をはじめとして専門家の高度な知識が必要になる局面がいくつもあります。M&Aの実績が豊富な専門業者に相談しましょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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