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M&Aで退職金はどうなる!?売り手と買い手の取り扱いや処理を解説

M&Aで退職金はどうなる!?売り手と買い手の取り扱いや処理を解説

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M&Aにあたって退職金がどのような取り扱いを受けるのか気になる経営者は多いでしょう。退職金は従業員にとって重要な制度であるため、経営者は正しい知識を持って処理する必要があります。今回はM&Aの際の退職金に関して、従業員と役員、売り手と買い手でどのような取り扱いになるかをご説明します。

従業員の退職金

従業員の退職金は以下の3種類に分けられます。

名称 支給方法 概要
退職一時金 退職時に一括で支給 勤続年数などを元に会社所定の方式で算出する
確定給付年金 年金もしくは退職一時金と同時 会社が契約した金融機関などが運用し、運用益が出た場合は含めて支給する
確定拠出年金 年金もしくは退職一時金と同時 会社が契約した金融機関のうち、従業員が選択した方法で運用し、運用益・損失を含めて支給する

一般的にイメージされる退職金は退職一時金を指すと考えられますが、実際には上記のとおり3種類が存在します。財源は退職一時金が会社内部に積立しているものであるのに対し、確定給付年金や確定拠出年金は会社が金融機関へと支払う掛け金と運用益です。
また、退職金の算出方法には以下の手法が採用される傾向にあります。

役員の退職金

役員にも退職金は支給可能で、その算出方法に制限はありません。そのため、基本的には従業員と同じ方法で退職金を算出し、役員に対して支給できます。
ただ、従業員と同じ制度を導入できるものの、実際には退職一時金のみを導入している企業が多く見られます。総務省の調査によると、調査対象の97.8%もの企業が役員の退職金を「退職一時金のみ」と回答しました。退職一時金と年金を併用している割合は1.7%に過ぎません。役員の退職金は一時金のみで支払うことが一般的となっています。

M&Aにおける退職金の取り扱い

続いてはM&Aの実施にあたって、企業が支払うべき退職金はどのような取り扱いになるのかご説明します。

従業員の退職金

従業員の退職金の取り扱いに一律のルールはありません。これはM&Aが株式譲渡・吸収合併や吸収分割・事業譲渡などどのような手法で実施されるかに左右されるためです。M&Aの手法によって従業員の取り扱いや資産の引き継ぎ方が異なるため、退職金の取り扱いも異なってきます。
退職金の取り扱いは主に「一度支払われる」「引き継がれる」のどちらかです。
一度支払われる場合は、売り手側がその時点での退職金を支払い、買い手側に退職金は引き継がれません。M&A完了後は買い手側の退職金制度へ改めて加入し、場合によっては勤続年数のみ買い手側に引き継がれます。退職金が支払われず引き継がれる場合は、売り手側が退職金を支払うのではなく、買い手側が退職金の情報や制度を引き継ぎ退職時に支払います。つまり、買い手側が将来的に退職金を負担しなければなりません。

役員の退職金

役員の退職金はM&Aによって退職するかどうかによって取り扱いが異なります。売り手側を退職することになれば退職金が支払われますが、事業譲渡によるM&Aで役員が転籍せずに留まる場合は退職金が支払われません。
ポイントは役員が元の会社に留まるかどうかです。仮に買い手側の役員に就任するとしても、売り手側を退職しているならば退職金は支払われます。役員を続けるかどうかがポイントではないため、その点は誤って理解しないよう注意してください。
なお、退職金が支払われる場合は売り手側の負担となります。買い手側が役員の退職金を負担することはありません。

退職金制度の統合が必要

M&Aを実施後は可能な限り退職金制度を統一すべきです。同じ会社の中に複数の退職金制度があると、事務手続きの負担が大きくなってしまい、通常業務に悪影響が出る可能性があります。
退職金制度を統一するためには、M&Aにあたって退職金を清算しておくことが重要です。買い手側は負担を軽減するために、売り手側へ退職金の精算を依頼しましょう。売り手側が退職金を支払えず引き継ぐことになると、取り扱いには負担がかかり、M&Aを実施後に悩みのタネとなりかねません。可能な限り退職金は引き継がないようにし、M&Aの際に退職金制度の統合を目指すべきです。

M&Aで退職金を取り扱う際のポイント

M&Aで退職金を取り扱う際にはポイントがあるため、続いては意識してもらいたいポイントを2つご説明します。

税金を考慮

M&Aの実施にあたっては、売り手側も買い手側も税金を考慮すべきです。税金を意識して退職金を処理しなければ、M&Aの実施後に税金の支払いで後悔するかもしれません。
退職金と税金の関係を踏まえて考慮してもらいたいことは、M&Aにあたって売り手側が受け取る対価の他に、退職金も受け取る方法を採用することです。両方を受け取るようにすれば、「株式譲渡にかかる税率20.315%」と「退職金にかかる税率0%~27.5%」とそれぞれに異なる税率が適用され、実質的に20.315%よりも低い税率で手元資金を確保できます。
ここで誤って理解してはならないことは、譲渡資金と退職金の両方を受け取ると、それぞれ個別に課税される点です。両方を受け取ることで税率が下がる仕組みではなく、課税対象額を工夫することで、全額を譲渡資金として受け取るよりも納める税金を減らせます。譲渡資金には通常の20.315%が課されますが、退職金には20.315%未満の税率が課されることで実質的な税率が下がる仕組みです。

適切な金額を算出

M&Aにあたっては必ず適切な退職金を算出して支給しましょう。会社が事前に定めたルールに則らない方法で不当に高い退職金を支給すると、損金として認められない可能性があります。M&Aの障壁となってしまう可能性があるため、「最後だから」とルールを破ってはなりません。
退職金の算出方法は冒頭でご説明したとおりで、これらのうちいずれかを会社で採用しているはずです。M&Aの際も必ずそのルールに従って、適切に退職金を算出してください。
 

M&Aにあたって退職金の取り扱いは課題になりやすい部分です。適切に処理しなければ、会計部門などの負担となりかねません。できるだけ一度支給して、制度の統合を目指しましょう。また、売り手側は退職金を併用することで実質的な税率を下げられる可能性があるため、不明点は顧問税理士に確認すると安心です。

まとめ

M&Aにあたって退職金をどのように取り扱いすればよいのかご説明しました。退職金はM&Aの手法によって取り扱いが異なるため、「退職金を支給してM&Aの手続きを進める」「退職金を引き継げるようにM&Aを進める」のどちらが適切なのか検討すべきです。
ただ、M&Aの買い手側と売り手側で退職金の制度が異なる場合があります。そのため、可能ならばM&Aにあたって退職金を支給し、退職金制度の統合を目指すといいでしょう。異なる退職金制度が併用されていると会計部門などの負担になるため、M&Aにあたってはそのような負担軽減も考慮すべきです。

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