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事業承継と相続の違いとは?子どもに譲る適期を知って備えよう

事業承継と相続の違いとは?子どもに譲る適期を知って備えよう

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「後継者はいるが、事業承継の時期は決まっていない」「自分が死んでから後継者に事業承継すればよい」という経営者の方は少なからずおられるでしょう。そもそも、事業承継と相続の違いはどこにあるのでしょうか。ここでは、事業承継と相続の違いについて解説します。

後継者が経営者から会社を引き継ぐ「事業承継」

事業承継とは、経営者が後継者に会社を引き継ぐことです。「引き継ぐ」というと相続を思い浮かべる人もいるでしょう。相続との違いを押さえながら、事業承継について理解しましょう。

事業承継と相続のちがいとは

事業承継が「経営者の存命・死亡にかかわらず、後継者が事業を受け継ぐこと」であるのに対し、相続は「死亡した人の資産や負債などの財産を相続人が受け継ぐこと」です。
 

事業承継において後継者が受け継ぐものとは、事業にかかわる財産などを指します。事業承継の方法や引き継ぎの対象となるものについては、次項で詳しく説明します。ここでは、事業承継と相続の違いを理解するために「相続」について詳しく見ていきましょう。
 

相続とは、死亡した人=被相続人の財産を相続人が受け継ぐことです。「財産」には現金有価証券、動産・不動産はもちろん、借金なども含まれます。事業承継は経営者の存命・死亡にかかわらず行われると述べましたが、経営者の死亡にともなって行われる事業承継は、相続を伴います。
 

また、相続には民法によって以下のようなルールがあります。
 

  • 相続は、死亡によって開始する(民法第882条)
  • 相続人になれる者は被相続人の子や配偶者、直系尊属、兄弟姉妹である(民法887、889、890条)
  • 民法が定める方式で書かれた遺言書には、民法のルールに関係なく相続人や財産の分割方法を決める効力がある(民法893、902、960)

 

相続では、経営に関係のない相続人にも株式の相続権があります。また、遺言があっても遺留分侵害額請求ができるため、分割協議においても経営上でもトラブルになりやすく、注意が必要です。

事業承継の方法と引き継ぎの対象

事業承継は経営者の存命・死亡にかかわらず行われます。事業承継の時期や後継者について法的なルールはありません。経営者が存命の場合、経営に関わっている間に後継者を決め、数年をかけて事業承継を行うのが一般的です。後継者を誰にするかによって、事業承継には以下のような方法があります。
 

  • 親族内承継…子や配偶者、子の配偶者などの親族に承継する
  • 従業員等への承継…社内の役員などに承継する
  • M&A…親族・社内に後継者が見つからないため、第三者に会社を売却する

 

事業承継で経営者が後継者に引き継がせるものは、会社の経営上必要となる財産です。経営に関係ない財産は含まれません。経営上必要な財産とは、以下のようなものを指します。
 

  • 経営権(経営者が所有する自社株式)
  • 会社の経営に必要な不動産、設備、運転資金などの資産(負債も含む)
  • 知的財産(経営者の人脈や信用、経営理念など)
  • 事業承継時の経営者の状況によって課される税金が異なる

    経営者が存命時の事業承継と、相続がともなう事業承継で異なる点のひとつに継承時に課される税金が挙げられます。それぞれのケースについて、詳しく見てみましょう。

    経営者存命中の事業承継には贈与税・所得税がかかる

    経営者が存命中に事業承継を行う場合、会社の経営に必要な株式や不動産などを後継者に引き継がせる際に、後継者に対して贈与税、または現経営者に対して所得税が課せられます。

    ・後継者に対して贈与税がかかる場合

    現経営者から後継者に対して「贈与」つまり無償で与える形で財産が引き継がれると、後継者に対して贈与税が課せられます。1年(1月1日~12月31日)の間に後継者が引き継いだ財産のうち、基礎控除額である110万円を差し引いた額に対して、金額に合わせた税率や控除額を用いて税額が決まります。
     

    したがって、1年間に引き継いだ財産が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。この仕組みを活用すれば、うまく節税が可能です。ただし、引き継ぐ財産の額が大きい場合、すべて引き継ぎ終わるまで時間がかかるというデメリットがあるので注意が必要です。
     

    また、現経営者が60代以上で後継者が18歳以上、かつ現経営者の子や孫であるなら「相続時精算課税制度」を活用して、引き継いだ財産から最大2,500万円を非課税にできます。 2,500万円の“非課税枠”は数回に分けて使えるため、時間をかけずに大きな金額の財産を贈与するなら、相続時精算課税制度の活用は節税につながります。
     

    ただし、贈与を受けた翌年に贈与税の申告書を提出する必要があります。また、現経営者が亡くなった際、相続税を計算するときに贈与した財産も贈与時の時価で加算されるので、現経営者が亡くなったときに手元に残った財産との兼ね合いで節税につながらないケースもあります。

    ・経営者に所得税がかかる場合

    現経営者から後継者が財産を「譲渡」つまり有償で財産が引き継がれると、現経営者が得た譲渡所得に対して所得税が課せられます。譲渡所得とは、売却価格から財産の取得にかかった価格を差し引いた額です。財産の種類によって税率は異なりますが、非上場の株式を譲渡した場合は20%(所得税15%+住民税5%)です。
     

    譲渡の場合、経営者に税金がかかることに加え、後継者が財産を引き継ぐための資金を用意しなければならない点が問題になります。特に、従業員への承継を行う場合は大きなハードルとなることが少なくありません。

    相続にともなう事業承継には相続税がかかる

    経営者が亡くなり、相続にともなって事業承継が行われる場合には、後継者に相続税が課されます。相続税は被相続人(亡くなった経営者)の遺産総額から基礎控除や相続人数に応じた控除額を差し引いて「課税遺産総額」を出し、課税遺産総額に対して何段階かの計算を経て、各相続人の相続税額が決まります。

    事業承継・相続と事業承継税制

    上述したように、経営者が存命中・死後によって税金の種類は異なりますが、いずれにせよ事業承継には税金がついてまわります。贈与税・相続税の軽減に活用していただきたい制度が「事業承継税制」です。ただし、譲渡の場合は活用できないので注意しましょう。
     

    事業承継税制とは「事業を承継した後継者に対し、贈与税や相続税の支払いが猶予される」というものです。事業承継税制には「法人版」と「個人版」がありますが、ここでは「法人版」について説明します。
    法人版事業承継税制の正式な名称は「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除」といいます。後継者が非上場株式等を贈与または相続で受け継いだ場合、課税される贈与税・相続税の納税が猶予され、さらに先代経営者や後継者の死亡などがあると、それらの税金が免除されます。
     

    なお、法人版事業承継税制を活用するには、経営する会社が「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(円滑化法)」に基づく認定を都道府県から受ける必要があります。そのうえで贈与税または相続税の申告書を提出し、非上場株式等を保有し続けている間は継続届出書を税務署へ提出することで納税が猶予されます。
     

    その後、先代経営者や後継者の死亡など所定の事由が生じた場合、免除届出書・免除申請書を提出することで贈与税・相続税の全額または一部が免除されます。
     

    なお、贈与または相続によって得た株式のうち、全株式を対象に納税猶予を受けるには、円滑化法の認定を受ける前に「特例承継計画」を都道府県知事へ提出する必要があります。

    まとめ

    事業承継は経営者の存命・死亡にかかわらず後継者に事業を受け継がせることであり、相続は死亡した人の財産を相続した人が受け継ぐことです。つまり、経営者が亡くなってから行われる事業承継には、相続をともなうということになります。
     

    財産の所有者が変わる事業承継には、税金がつきものです。経営者が存命の場合、後継者に対する贈与税または経営者に対する所得税が課され、経営者が死亡した場合は、相続人である後継者に相続税が課せられます。
     

    相続や贈与がかかわる事業承継については、事業承継税制を活用して後継者の税負担を軽減することができます。事業承継や相続の意味、関連する税金などについて理解したうえで、専門家の意見も参考にしながら事業を譲る時期について考えておきましょう。
     

    長谷川よう(ライター)
    会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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