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M&Aで作成する基本合意書とは 意向表明書との違いについても解説

M&Aで作成する基本合意書とは 意向表明書との違いについても解説

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M&Aで作成する契約書のひとつに、基本合意書があります。基本合意書は、売り手企業側と買い手候補側がM&Aについて合意ができた時点で作成され、最終的な契約の締結に向けてスムーズな交渉を進める効果があります。
  ここでは、基本合意書に記載する内容の詳細や、同じくM&Aで作成される意向表明書との違いについて解説します。

M&Aで作成する基本合意書とは

M&Aを検討する過程で、売り手企業はさまざまな買い手候補企業から条件提示を受け、譲渡先を検討します。売り手企業が買い手候補企業の中から特定の候補に絞って交渉し、合意ができたのち、双方の間で交わすのが「基本合意書」です。
 

基本合意書には、交渉内容やスケジュールなど、売り手側と買い手候補側がM&Aの実現に向けて合意した事項が記載されます。合意内容を書類にしておくことで、条件の細部にかかわる交渉をスムーズに進めることができます。
 

基本合意書の締結後、買い手候補によって売り手の財務状況などを調査する「デューデリジェンス(適正な評価をするための調査)」が行われ、最終的な譲渡価格が決まります。

M&Aで作成する基本合意書の記載内容

基本合意書には以下のような項目を記載します。合意後のプロセスをスムーズに進めるために、基本合意書にはできるだけ細部を詰めた内容を記載しましょう。
 

●基本条件

  • ・M&Aの形態…株式譲渡や事業譲渡、合併など、どの方法でM&Aを行うのか
  • ・譲渡価格…基本合意書を作成する時点で合意している譲渡金額や、金額算出の根拠
  • ・役員の処遇…譲渡後の売り手側役員の留任・辞任について。また、辞任する場合の退職金についても記載
  • ・従業員の雇用…譲渡後、売り手側従業員の雇用をいつまで維持するか

M&Aの形態や譲渡価格は、デューデリジェンスの結果によっては変更が必要になることもあるため、双方で協議できるように定めておきます。
 

●スケジュール
基本合意書締結後、デューデリジェンスの実施から最終契約締結、株式譲渡または事業譲渡の手続・決済までのおおよそのスケジュールを記載します。基本合意書締結から最終契約締結までは2~4ヶ月間とされることが多いようです。
 

●デューデリジェンス
買い手候補側がデューデリジェンスを実施し、売り手側はデューデリジェンスに協力しなければならない旨を記載します。

デューデリジェンスには財務デューデリジェンス・法務デューデリジェンス・税務デューデリジェンスなどの種類があり、具体的にどのような調査を行うか明記することもあります。
 

●独占交渉権の付与・違約金
基本合意書を締結する買い手候補が独占的に売り手と交渉する権利を「独占交渉権」といいます。基本合意書には3〜6ヶ月の有効期間が設定するケースが多いですが、有効期間中における独占交渉権の付与や違約金の取り決めを基本合意書に記載することが多いです。
 

●秘密保持義務、善管注意義務の設定
「秘密保持義務」とは、売り手・買い手候補の契約・交渉の存在とその内容、および双方が開示した情報について、互いの承諾を得ず第三者に開示してはならないことを指します。また、秘密情報に当たらない事項についても、明記します。

「善管注意義務」とは、民法644条に定められた「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」を指します。M&Aの過程における善管注意義務とは、交渉の過程で売り手側の経営者は買い手候補の許可なしに資産の譲渡や処分、借入れなど企業価値を下げるような行為をしない義務を負うことをいいます。
 

●一般条項
「一般条項」とは、契約の内容に関係なく規定される条項のことで、契約書などの最後に記載されます。基本合意書の場合、以下のような内容を記載します。

  • ・費用負担の規定…デューデリジェンス費用や弁護士、税理士などの専門家に対する報酬を、買い手・売り手候補のどちらが負担するのか明記。両者が費用を分担し、その方法を具体的に決めることも多い
  • ・準拠法…基本合意書が準拠・解釈の根拠とする法律の規定。売り手・買い手候補がいずれも日本企業なら、日本法を基準法とする旨を記載
  • ・裁判管轄…紛争が発生した場合、どこの裁判所で第一審の手続を行うのか記載

 

●法的拘束力の有無
基本合意書で記載されている各条項について、法的拘束力を持たせるかどうかを記載します。

本来、基本合意書を取り交わしても、M&Aを実行する義務はないとされています。デューデリジェンスの結果、基本合意書で記載した内容について変更が生じる可能性があるからです。基本合意書は売り手・買い手候補双方で合意した事柄を文書として残すことで、契約交渉の着地点の目安にするとともに、心理的な拘束力を持たせる意味合いがあります。

基本合意書の締結そのものはM&Aの実行に対して法的拘束力を持ちませんが、M&Aの成立に至るまでの条項のうち、法的拘束力を持たせたい条項については基本合意書の中で明記し、トラブルが起きないようにしておきます。たとえば、以下のような条項について、法的拘束力を持たせます。

  • ・デューデリジェンス
  • ・独占交渉権
  • ・秘密保持義務、善管注意義務
  • ・費用負担

なお、スケジュールについては、法的拘束力を持たせないことが多いです。

基本合意書の中で「第●条から第●条についてのみ法的拘束力を有する」または「第●条から第●条以外の条項については法的拘束力を持たない」のように記載し、法的拘束力を有するものと持たないものを明確にしておきます。
 

基本合意書締結ののち、デューデリジェンスを経て最終契約書を締結します。基本合意書にはM&Aに対する法的拘束力がないことから「法的拘束力のある最終契約書を締結するのだから、基本合意書は省略してもよいのではないか?」と考える売り手もいます。
 

しかし、M&Aにかかわる交渉の中でも重要となる独占交渉権や秘密保持義務について、文書の中で法的拘束力を持たせることができるため、基本合意書は作成しておくべきです。
 

基本合意書と意向表明書との違い

基本合意書と似たような文書として「意向表明書」があります。意向表明書とは、買い手候補が売り手に対し、株式や事業の譲受と希望する条件を伝える書面のことです。意向表明書は両者が内容に合意して記名押印する「契約書方式」ではなく、一方が書面を作成する「差入方式」で作成され、法的拘束力はありません。
 

売り手に対して複数の買い手候補が現れた場合、交渉前に各買い手候補は売り手に意向表明書を提出し、売り手は複数の買い手候補の中から1社を選んで交渉を進めます。
 

その後、売り手と買い手候補1社の間で合意ができた時点で作成するのが、基本合意書です。基本合意書は契約書方式で作成され、上述したように条項の一部に法的拘束力を持たせます。
 

基本合意書と意向表明書の違いをまとめると、以下のようになります。

意向表明書 基本合意書
作成者

買い手候補(複数の場合あり)

売り手と1社の買い手候補が合意のもとで作成する

作成時期

交渉開始前

合意後

法的拘束力

なし

一部あり

まとめ

M&Aを進める中で作成する基本合意書は、売り手側と買い手候補側の交渉の中で合意に至った内容をまとめた文書です。合意内容を文書として残すことで、細部を詰める交渉がスムーズに進むメリットがあります。
 

また、基本合意書を締結したことで、かならずM&Aを行わなければならないわけではありませんが、基本合意書に盛り込んだ独占交渉権や秘密保持義務などに対して法的拘束力を持たせることができます。基本合意書の条項に法的拘束力を持たせることは、売り手・買い手候補双方の利益を守るうえで重要です。
 

基本合意書などの契約文書作成だけでなく、最終契約に至るまでM&Aには専門的な知識が必要になる局面が数多くあります。M&Aに関心のある方は、M&Aを成功させた経験が豊富な税理士や、専門サービス会社に相談されることをおすすめします。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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