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adobeがfigmaを2兆8,700億円で買収!その理由と今後の戦略は?

adobeがfigmaを2兆8,700億円で買収!その理由と今後の戦略は?

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2022年9月、PDF閲覧ソフトや写真加工ソフトなどで知られる米adobe(アドビ)社は、デザイン共同変種ツールを手がける米figma(フィグマ)社を2兆8,700億円で買収すると発表しました。アドビ社が莫大な資金をかけて、創業10年の企業を買収した理由はどこにあるのでしょうか。

adobeがデザイン共同編集ツールを手がけるfigmaを買収

まずは、アドビ社とフィグマ社の概要を見てみましょう。

PDFの閲覧・作成ソフトでなじみ深いadobe

アドビ社は、PDF閲覧ソフト「Acrobat Reader」やPDF編集ソフト「Acrobat Pro」でおなじみのソフトウェア企業です。ビジネスシーンで「紙書類の電子化」といえばPDFファイルにすることとほぼ同義で使われることが多いですが、PDFというファイル書式を開発したのがアドビ社です。創業は1982年とソフトウェア系企業としては老舗の部類に入ります。
PDF系のソフト以外にも画像や映像、デザインといった分野に特化したソフトを世に送り出しており、「Illustrator」「Photoshop」といったソフトは、Webはもちろん、雑誌やポスターなどの制作現場でも欠かせないものになっています。また、デザインのプロだけなく、写真愛好家やデザインを勉強する学生などからも高い支持を得ています。

リモートワークの定着とともに急伸したfigma

一方のフィグマ社は、2012年に創業した企業です。複数の人がインターネットのブラウザを使い、クラウド上でデザインを共同編集できるツール「Figma」を開発し、2016年にリリースしました。「複数人で議論をしながら、リアルタイムでデザインを共同制作する」というコンセプトが当たり、複数の企業で採用されるようになりました。
料金プランは月額12ドルと45ドルの有料プランのほかに、無期限無料のプランがあります。無料プランでも共同で作業ができたり、テンプレートやプラグインなどが使えたりするため、アマチュアのデザイン入門ツールとしても人気です。
「Figma」の存在感がさらにクローズアップされるようになったきっかけは、新型コロナ禍によってリモートワークが一般化したことが挙げられます。「Figma」を使えば、出社しなくても協業できることで、利用者数が増加したのです。

adobeの買収と企業戦略

アドビ社は、なぜフィグマ社を買収したのでしょうか。その背景には、アドビ社の近年の企業戦略があります。

買収を繰り返して成長を続けるadobe

アドビ社はこれまでも多くの企業を買収しながら、事業領域と規模を拡大してきました。自社の事業を強化する意味合いでの買収だけでなく、競合企業の買収も積極的に行っています。
たとえば、2005年に買収したマクロメディア社は、アドビ社と競合するソフトを多く出していた企業です。また、2009年に買収したオムニュチュア社はウェブ解析を手がけており、アドビ社はこの買収をきっかけにマーケティング分野に進出します。
近年は電子署名技術やモバイルアプリのプラットフォーム、動画広告プラットフォーム、マルチチャネル広告管理、デジタルマーケティングなど、マーケティング分野の企業買収に動いています。

事業戦略にのっとった買収

アドビ社はマーケティング分野への進出とともに、ソフトウェアのクラウド化も事業戦略のひとつとして位置付けています。2007年に現CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏が就任し、「Illustrator」「Photoshop」「Acrobat Pro」などの各種ソフトについて、2013年にソフトウェア販売からクラウドをベースにしたサブスクリプションサービスへと移行しました。アドビ社の動きはソフトウェア業界におけるさきがけとなり、マイクロソフト社もその後「Office」をソフトウェア販売からサブスクリプション販売に切り替えています。
これまでにアドベ社が買収した企業の中には、クラウド上でサービスを展開する企業や事業も含まれており、今回のフィグマ社の買収もアドベ社の事業戦略にのっとったものといえます。実は、アドビ社にも「Adobe XD」という共同作業ができるデザインツールがありますが、「Figma」に対して優位な地位を確立するまでは至っていません。そこで、自社と競合する企業を買収することで、事業戦略をさらに推し進めようと考えているのでしょう。

積極的買収で成長する企業の事例を紹介

アドビ社のように買収をしながら成長する企業は少なくありません。ここでは、積極的な買収で成長している企業の事例を紹介します。

LINEやZOZOを傘下に置くZホールディングス

Zホールディングス(ZHD)は、1996年1月にYahoo! JAPANを手がけるヤフー株式会社として設立された企業です。2019年に持株会社への移行とともに現在の社名となりました。
ZHDは、ヤフー時代からネットでビジネスを展開するさまざまな企業を買収しており、消費者になじみの深い企業もたくさんあります。一例を挙げると以下のようになります。

企業名 サービス
㈱GYAO 有料動画配信サービス「GYAO」
バリューコマース㈱ アフィリエイトマーケティング事業
㈱一休 旅行予約サイト「一休.com」などを運営
dely㈱ 料理動画レシピサービス「クラシル」運営
㈱ZOZO 衣料品通販サイト「ZOZOTOWN」運営
LINE㈱ メッセージアプリ「LINE」運営
㈱出前館 デリバリーサイト「出前館」運営

ZHDの買収はグループ内で展開する事業と競合するサービスを手がける企業を買収し、競争的に優位に立つための戦略です。しかし、買収した企業が他の企業との厳しい競争に苦戦している例も少なくありません。たとえば、「一休.com」は「楽天トラベル」に比べて劣勢を強いられています。

リースからエネルギー、球団経営まで多角化を進めるオリックス

1966年「オリエント・リース」の社名でリース業を始めたオリックスは、ひとつの事業分野からその隣接事業にも進出し、事業領域を拡大してきました。現在は法人金融サービスやメンテナンスリース、事業投資など6つの領域で事業を手がけています。
事業投資の分野では、国内のメガソーラーやアメリカで地熱発電事業を手がける企業など、エネルギー分野に積極的な投資を行っています。
一方、企業買収もオリックスの事業拡大には欠かせないアクションです。2000年以降は海外の生命保険会社や投資銀行、資産運用会社などを買収したほか、国内でもマンション販売会社や会計ソフト会社などを買収しました。また、古いところでは、1988年にプロ野球の阪急ブレーブスを買収し、オリックス・バファローズとして現在に至っています。

さまざまな小売業を束ねるセブン&アイホールディングス

セブン&アイホールディングスは2005年、セブン‐イレブン・ジャパンとイトーヨーカ堂、デニーズジャパンによって設立された純粋持株会社です。国内外で買収を行いながら事業を拡大していますが、国内では多様な業態の小売業を中心に買収を進めています。
2022年現在、完全子会社・グループ企業を合わせると、関連企業は51社にのぼります。主なものを挙げると、セブン-イレブンやイトーヨーカドーはもちろん、西武百貨店やそごうといった百貨店、赤ちゃん本舗やロフト、タワーレコードといった専門店など、ブランド力のある店舗をグループ傘下に持っています。また、通販事業を手がける㈱ニッセンホールディングスや、チケット事業を手がける㈱ぴあもグループ企業です。

まとめ

今回は、アドビ社がフィグマ社を買収したニュースから、アドビ社の事業戦略についてご紹介しました。フィグマ社が提供するデザイン共同編集ツール「figma」はリモートワークの定着とともに高い支持を集めており、アドビ社としては自社に類似サービスがあるにもかかわらず2兆8,700億円という高額で買収しました。
自社と競合する企業を買収する背景には、市場の中で優位に立とうとする目的に加え、「figma」のポテンシャルが「サービスのクラウド化」という自社の事業戦略とも合致していることが挙げられます。
アドビ社だけでなく、日本の企業もまた、それぞれの戦略に応じて企業買収を行っています。買収という観点から、企業が何を考えているのか推察してみるとおもしろいでしょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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