MBOとは?TOBとの違いや大正製薬などの事例、株価の推移について解説
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MBOの目的とは?TOBとの違い
MBOは企業が既存の株主から自社の経営権を取得すること
MBO(マネージメント・バイ・アウト)とは、自ら経営する企業の経営権を既存の株主から取得し株式上場を廃止することです。
2023年11月時点に日本におけるMBOは1兆円(金額ベース)を超え、過去最高額となりました。
2023年11月26日の日本経済新聞では、2023年のMBOは16件、金額ベースで1兆1,000億円を超え、過去最高に達したことが報道されました。
2023年は、大正製薬ホールディングスのMBO買い付け額が総額約7,100億円と過去最大額を記録しています。
背景には、東京証券取引所が企業に株価を意識した経営に取り組むよう要請したことなどがあるといわれています。
株式の買収を経営陣の自己資金で賄える場合は、自己資金で自社株を買い占めるという方法でMBOを行います。しかしこの方法は多額の自己資金を必要とするため、用いられるケースは稀です。
多くの場合は、経営者や投資ファンドなどの買収グループが買収を目的とした特別目的会社(SPC)を設立し資金調達を行ってから自社を買収します。
MBOは、大別すると非公開型、企業分割型・事業再生型・買収防衛型の4つがあります。
類型 | 内容 |
---|---|
非公開型 | 株式上場を廃止して非上場企業とする |
企業分割型(のれん分け) | 事業の一部や部門、子会社の分離・独立を図る |
事業再生型 | 投資家などから集めた資金を元に、経営不振に陥った企業を再生させる |
買収防衛型 | 買収される恐れがある時に、防衛手段として実施される |
事業承継を目的とするMBOの事例もあります。
実際には、複数の目的が同時に内在しMBOが行われることもありますが主な内容や特徴は上の4つです。
TOB(株式の公開買い付け)との違い
TOB(Takeover Bid)は株式の公開買い付けを意味します。企業または個人が対象企業の株式を一斉に買い取り、経営権を取得する方法です。
MBOは自社の株式を取得することで、TOBは買い付け期間や価格などを公表して市場外で大量に株式を買い付けることです。
一般的にMBOにおける自社株式の買い付けは、TOBにより行われます。
金融商品取引法27条の2第1項により「市場外の株式の買い付けによって、所有権の割合が5/100を超えるものは公開買付けによらなければならない」旨が定められているのです。
TOBには、経営陣の許可を得ずに買収を行う敵対的TOBと経営陣に承認され買収をする友好的TOBがあります。
2024年2月6日には、KDDIがローソンにTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表し話題になりました。
企業の買収方法は、他に以下のような種類があります。
MBI (Management Buy In) | 外部の経営陣による買収。投資家・ファンド・金融機関などが企業を買収し、経営の専門家を送り込み立て直しを図る |
---|---|
EBO (Employee Buyout) | 従業員による企業の買収。従業員が自社株式を買い取って経営権を取得し事業を承継する |
LBO (Leveraged Buyout) | 金融機関などから資金を借り入れ、将来性のある企業を買収する |
MBOのメリット・デメリット
MBOの主なメリット・デメリットを見ていきましょう。
MBOのメリット
MBOの主なメリットは以下の5つです。
2. 敵対的買収を防止できる
3. 既存の事業・従業員を引き継ぐことができる
4. 他の買収方法と比べ、従業員からの反発が少ない
5. スムーズな事業承継により後継者問題が解決できることも
上場会社では、株式の持ち分割合によっては株主が議決権を行使することで経営の意思決定に関与することが可能です。よって、意思決定に時間がかかることがありますが、株式を非公開化し経営権を取得することで効率的な経営やスピーディーな意思決定が期待できます。
敵対的買収を回避する、MBOの仕組みを利用してスムーズな事業承継ができるなどのメリットもあります。
外部の経営者・他社などに買収されるケースと異なり、既存の従業員を引き継ぐことができますので比較的社員からの反発が少ないでしょう。
MBOのデメリット
MBOを行うことで、現在の株主と対立してしまう可能性、企業の財務状況が悪化してしまう恐れがあります。
MBOは現在の株主から株式を買い取る手法ですので、株主とMBOについて、もしくは取得金額などで揉める可能性があります。多額の資金を必要としますので、企業の負債が増えることも予測されます。
これまでのように、株式公開による資金調達も不可能になってしまいます。
意思決定が早くなる一方で、経営が不透明化してしまうという点もデメリットです。
MBOの事例、株価はどうなった?
大正製薬ホールディングス
大正製薬ホールディングスは2023年11月24日、MBOを実施すると発表しました。
株式取得を目的に設立された大手門株式会社は、2023年11月27日から2024年1月15日までTOB(株式公開買い付け)を実施しました。総額は約7100億円に上ります。
2024年3月の臨時株主総会を経て、東京証券取引所から上場廃止となる見通しです。
過去5年の株価の推移は以下のとおりです。
MBO発表後は、一般的に既存の株主に買収プレミアムを上乗せした買い取り価格が設定されるため株価が上昇します。
大正製薬ホールディングスは主力の医薬事業が薬価制度改革や医療の個別化にともなう開発難易度の上昇など厳しい状況にあり、今後はネット販売や海外事業を強化する予定です。
ベネッセホールディングス
株式会社ベネッセホールディングスは、2023年11月10日に株式を非公開化するため、創業家がMBOを目的として設立した新会社がスウェーデンの投資会社と協力し自社の株式をすべて買い付けることを発表しました。
ベネッセホールディングスも買収プレミアム価格になっています。
MBOが実施された後は株式を非公開化し、引き続き創業家グループが経営に取り組むとのことです。ベネッセホールディングスは、少子化の影響などで事業環境が厳しくなっておりスピーディーな意思決定・事業拡大につなげたいとしています。
ニチイ学館
2020年5月、株式会社ニチイ学館はMBOを目的としたTOB(株式公開買い付け)の実施を発表しました。
ニチイ学館は医療関連・介護事業を主力としていますが、業界の人材不足や事業の多角化が想定ほどの成長に至らず経営陣が長期的に厳しい事業環境を想定していました。
今後中長期的な成長・企業価値向上を実現するためには、既存事業の収益力強化と今後成長が見込まれる分野への進出が必要で、新たな経営体制を構築する必要がありMBOを実施しました。
まとめ
MBOは企業が既存の株主から自社の経営権を取得することです。この記事でMBOの仕組みやメリット・デメリットなどを知り、今後の参考にしていきましょう。
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