税理士の無料紹介相談窓口
0120-374-024
メールお問い合わせ 年中無休で24時間受付中

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡はこうすべき!メリットやポイント・流れを解説

税理士事務所・会計事務所の事業譲渡はこうすべき!メリットやポイント・流れを解説

更新日:

経営者の高齢化などの理由により事業を存続できない場合に、事業譲渡を選択すると廃業を免れることが可能です。少子高齢化の影響で、いずれの業界でも後継者不足が問題となっています。
今回は後継者へ税理士事務所・会計事務所を事業譲渡するメリットやポイント、具体的な流れをご説明します。

税理士事務所・会計事務所業界の現状・動向予測

近年、税理事務所・会計事務所で、事業継続が難しくなっているところは少なくありません。その背景を探ってみましょう。

税理士事務所・会計事務所の現状

個人経営の税理士事務所・会計事務所は、所長税理士1名と数人の税理士補助、あるいは税理士1名のみという構成で業務を行っています。このような事務所で事業継続が困難になる要因として、以下のようなことが挙げられます。

・高齢化する所長税理士と事業承継の難しさ
中小企業の経営者の高齢化が問題となっていますが、所長税理士も同様に高齢化が進んでいます。10年に一度日税連が行う「税理士実態調査」の最新版(2014年4月発表)によると、2014年1月1日時点で登録している税理士の年齢層で最も多い年代は、60代の30.1%でした。さらに70(13.3%)・80代(10.4%)も合わせると、60代以上の割合は53.8%です。
2004年に行われた前回の調査では、60代の割合は18.4%、60代以上の割合は52.9%でした。10年間で60代以上の割合は微増ながら、60代の割合が大きく増えていることがわかります。この調査の数字には企業に勤めている社員税理士も含まれているため、開業している税理士に絞ると60代以上の税理士が占める割合はさらに増える可能性があります。
さらに、税理士事務所・会計事務所の事業継続を難しくしている要因のひとつは、所長税理士に子ども、あるいは事務所に従業員がいても、税理士資格を持っている者でなければ事業承継ができないことです。

・税理士試験受験者・合格者減少による人材不足

税理士試験受験者、および税理士登録に必要な5科目到達者の人数が減少し、業界内の人材不足も顕著になっています。
税理士試験受験者と5科目到達者を2012年と2021年で比較すると、以下のとおりになります。受験者の減少により、5科目到達者も減っていることがわかります。
 

税理士試験受験者 5科目到達者
2012年 48,123 1,104
2021年 27,299 585

 

また、税理士のもとで働く従業員は、働きながら5科目到達を目指しますが、到達後に独立・転職してしまい、事務所の後継ぎになってくれないケースも少なくありません。
 

・顧問料低下と競争激化
かつては業界内に一定の基準があった顧問料ですが、現在は基準がなくなっています。顧問先となる企業数が減少していることもあり、顧問先獲得のために顧問料は減少傾向にあり、競争も激化しています。
 

・将来性
さまざまな業界で、AIに仕事を取って代わられるといわれていますが、税理士業界も例外ではありません。仕訳や書類作成といった業務では、すでに自動化が進んでいます。最終的な決定や変化が激しい法律への対応など、人間でなければできない業務はありますが、業務内容は絞られる可能性はあります。

生き残りをかけた税理士事務所・会計事務所の事業譲渡が増加

近年、個人経営の税理士事務所・会計事務所は、事業を継続させるためにM&A(合併・買収)を行い、他の税理士事務所・会計事務所に事業を引き継いでもらうケースが増えています。
後継者がいない、あるいは将来的に希望が持てないという理由で所長税理士が引退したいと考えていても、安易に廃業すると、従業員や抱えている顧問先に迷惑をかけてしまうからです。
一般的なM&Aには株式譲渡・事業譲渡・合併(新設合併・吸収合併)など、さまざまな手法がありますが、個人経営の税理士事務所・会計事務所のM&Aでは事業譲渡の方法がよく用いられます。

税理士事務所・会計事務所を事業譲渡するメリット

事業譲渡の概要や、税理士事務所・会計事務所が事業譲渡を行うメリットについて見てみましょう。

M&Aの一手法、事業譲渡とは?

事業譲渡は、企業の設備や従業員などを譲渡する方法です。税理士事務所・会計事務所の場合、事務所を営むために必要な従業員や顧問先、事務所の建物、備品などを個別に譲渡します。譲渡するものとしないものは取捨選択できます。
企業が持つ株式を譲渡して経営権を買い手に移す方法を「株式譲渡」といいますが、事業譲渡は事業に必要な資産だけを譲渡するので、経営権は買い手に移りません。数件の顧問先だけ残して事務所を存続させ、従業員と大部分の顧問先を譲渡するといったことも可能です。
なお、個人事業主の税理士事務所・会計事務所は当然のことながら株式譲渡はできません。

税理士事務所・会計事務所を事業譲渡するメリットやポイント

譲渡側
●事務所が存続する

税理士事務所や会計事務所を事業譲渡すれば事務所を存続させられます。廃業すると、クライアントや従業員に迷惑をかける可能性もありますが、事業譲渡をすればこの問題を解決できます。
また、事務所を存続させるとこれまで築き上げてきた信頼を維持できます。例えばクライアントとの関係性、従業員の愛社精神も持続できます。廃業すると、せっかく築き上げてきたものを失うため、事業譲渡する大きなメリットと言えます。
なお、クライアントや従業員のすべてが事業譲渡に納得するとは限りません。不満が出てしまう可能性もある点を考慮するといいでしょう。
 

●売却益を得られる

事業譲渡は事業を売却することが一般的です。無償で譲渡する場合もありますが、今回は有償で売却する場合について考えましょう。事業を有償で売却すれば、譲渡側は売却益を得られます。廃業してしまうとまったく市場価値は無くなってしまいますが、事業譲渡であれば価値を生み出せます。
ただし、事業譲渡で得た利益は課税対象となります。それを考慮したとしても廃業するよりは、メリットがあるでしょう。例えば、まとまった現金が手に入れば、新しいビジネスの立ち上げなどを検討できます。税理士事務所や会計事務所の経営から離れ、売却益を元手に新しい事業を始めてもいいでしょう。

譲受側
●規模やエリア、営業ルートを拡大できる

譲受側は新たに税理士事務所や会計事務所を吸収することで、事務所の規模や対応エリアを拡大できます。また、既存の顧客が手に入るため、営業ルートも拡大できるでしょう。
自分たちで規模・エリアを拡大するためにはリスクが伴います。新たに事務所を構え、従業員を雇用するなど多額を投資しなければなりません。投資額に見合うリターンを得られるかは、事業を進めてみないと分からないでしょう。
しかし、事業譲渡ならば、譲渡される事務所の収益性から投資に対するリターンをあらかじめ予測できます。低リスクで事務所や従業員を獲得できる点でメリットと言えるでしょう。
 

●新しいスキルが手に入る

事業譲渡で新たな人材を確保すれば、事務所として新しいスキルが手に入る可能性があります。例えば自社にいない分野の専門家が所属していれば、スキルや知識を獲得可能です。
自社内で一から人材を育成するとなると、時間・お金などのコストが発生します。また、人材の成長度合いにも依るため、全体でかかるコストを予測しにくいでしょう。
事業譲渡ではすでにスキルを有す人材を簡単に確保できます。事前に譲渡側の事務所企業が持つスキルについて確認しておく必要はありますが、簡単に新しいスキルを手に入れられる可能性がある点はメリットです。
 

●新規法人・専門部署の立ち上げができる

譲受側は人材に余裕が生まれるため、新規法人や専門部署の立ち上げが可能となります。既存の人員を他の事業に充てることで、さらなる事業拡大が可能です。
上記でもご説明したとおり、事業譲渡を受けることで事務所の規模を拡大できます。担当できるエリアが増えることは、事務所にとって大きなメリットです。これに加え、法人や部署を立ち上げできます。事務所の規模が大きくなると安定性が増すため、多くのことにチャレンジ可能です。

税理士事務所・会計事務所を事業譲渡する流れ

事前準備

事業譲渡するにあたって事前準備が必要です。十分な準備をしなければ、事業譲渡が失敗してしまうかもしれません。
まず、税理士事務所や会計事務所を売却する目的を明確にしておきましょう。明確な目的を持てば、「どのような事務所に事業譲渡すべきか」を判断しやすくなります。譲渡先のイメージを持つようにしましょう。
また、目的を踏まえてコンサルタントやM&Aアドバイザーと契約しておきましょう。自力で対応することも可能ですが、専門性の高さを踏まえるとおすすめできません。仲介会社やM&Aアドバイザー、金融機関や法律事務所など専門家と契約し、事業譲渡をサポートしてもらうことが理想です。
なお、事業譲渡に向けて交渉する際には、一般的に以下の資料の提示を求められます。これらを事前に準備しておけば、交渉が始まってからスムーズに物事を進められるでしょう。
●会社案内・サービス紹介
●就業規則
●税理士・公認会計士の人数や経歴が分かる資料
●事務所全体のスタッフ数や業務内容が分かる資料
●クライアント一覧
●直近3期分の決算書
●税務関連書類
●固定資産台帳
●給与台帳
 

譲渡先との交渉

事前準備が完了すれば、事業譲渡の交渉先を選定します。交渉先を自分で探す選択肢もありますが、上記でご説明したコンサルタントM&Aアドバイザーなどを利用して探すことをおすすめします。譲渡先の候補が複数見つかった場合は、それぞれの候補と具体的な内容・条件について交渉を進めてください。事業譲渡の条件で合意できる事務所企業が見つかれば、基本契約を締結します。

譲渡価格の合意

事業譲渡に向けて価格交渉をします。譲渡価格については、事前に価格算定の手法を用いて検討しておくといいでしょう。第三者機関に依頼すれば、どの程度の価格で事業譲渡できるのか算出してもらえます。
ただ、この価格は交渉する基準として利用するものです。最終的な価格は交渉で決定しなければなりません。また、価格交渉する際には、以下についても検討し、工数がかかる作業は価格に反映させる必要があります。
●従業員の待遇
●クライアントの引き継ぎ方法
●事業譲渡後、譲受側の税理士へのフォロー内容や期間と方法
●事業譲渡対価の支払方法や期日
●導入済みシステムの引き継ぎ
●残債の引き継ぎ
税理士のフォローについては、譲受先が法人ならば「代表社員税理士」「社員税理士」「勤務税理士」「雇用外」であるのか、個人ならば「勤務税理士」「雇用外」であるのかなどを確認しておきましょう。譲受側の立場によりフォロー内容や期間、方法が異なるため、それらを踏まえて譲渡価格を決定してください。

譲渡契約と資産の引き継ぎ

条件について合意が取れれば、事業譲渡に向けて契約を結びます。譲渡契約を結ぶ流れとなるため、自身で対応するか、 専門家に依頼して必要な書類を作成しましょう。
書類を作成でき、譲受側の事業所との契約 を結べれば、税理士事務所や会計事務所の資産を引き継ぎします。引き継ぎ方法などについては交渉で決定しているため、その内容に沿って滞りなく引き継ぎを進めましょう。
また、引き継ぎと合わせて事業譲渡の対価を支払ってもらう必要があります。他にも、事業譲渡後にフォローが発生する場合もあるため、一連の手続きが完了するまで気は抜けません。

税理士法人・会計事務所の事業譲渡を成功させるポイント

税理士事務所・会計事務所が事業譲渡を成功させるには、いくつかのポイントがあります。

税理士法人・会計事務所の価値を高める

事業譲渡で売却益を得るなら、できるだけ高い価格で譲渡したいものです。そのためには、事務所の価値を高める必要があります。
税理士事務所・会計事務所の価値を高める大きな要素が「人材」と「顧問先」です。税理士試験の5科目合格者ではなくても、複数科目合格者で実務経験が豊富なスタッフや、営業に長けているスタッフなどがいれば、人材不足の税理士業界にあって大きなプラスになります。
また、クラウドの導入など省人化に積極的な企業や、税理士と円滑にコミュニケーションが取れる企業など、優良な顧問先を多く抱えていることも事務所の価値をアップします。
従業員のスキルアップを奨励したり、優良顧客を確保するために営業したりして、事務所の価値を高める施策を打ち出しましょう。

事業譲渡の決断は早めに

上記で述べたような事務所の価値を高める取り組みは、時間をかける必要があるため、事業譲渡の決断は早めに行いましょう。事業譲渡を行って一線から退きたいと考えている場合、引退を予定している年から数年前には準備を始めるのが理想的です。
事業譲渡に関する相談は、M&Aを支援する支援機関に頼ることをおすすめします。支援機関として商工会議所や金融機関、弁護士・税理士などの士業専門家、M&A仲介会社などがあります。
金融機関や士業、M&A仲介会社を探す場合、中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録されている業者を選ぶことをおすすめします。中小企業庁の「事業承継・引継ぎ補助金」を活用して、M&Aにかかる費用の補助を受ける場合、登録支援機関からのサポートが対象となります。

譲受先を見つけるときは専門業者を活用する

事業譲渡の譲渡先となる事務所、または税理士法人を探すにあたって、所長税理士自身が知り合いの税理士などを探す方法もあります。しかし、細かい条件を詰めたり、対価を交渉したりするのが難しいため、譲渡先を探して売り手との間に立ってくれるM&A仲介会社を活用するとよいでしょう。
税理士業界は特殊な業界なので、税理士業界を熟知し、譲渡先の情報を多く持っている業界特化型のM&A会社がおすすめです。

まとめ

税理士事務所や会計事務所の事業譲渡についてご説明しました。事業譲渡は譲渡側も譲受側もメリットがあります。それぞれのメリットを理解しておきましょう。
事業譲渡の大まかな流れは決まっています。事前に準備しておいた方がよいものもあるため、これらは事業譲渡を思い立ったタイミングから準備しましょう。また、並行して事業譲渡をサポートしてくれるM&Aアドバイザーやコンサルタントなどを見つけることをおすすめします。
事業譲渡の詳細については、譲受側との交渉で決まる部分が多くあります。互いの意見がぶつかることもあるため、歩み寄りながら事業譲渡に向けて合意を目指しましょう。

▶ 会計事務所・税理士事務所のM&A TOP

松崎ぶっち(ライター)
立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。
M&A無料相談はこちら
ページのトップへ