飲食業でもM&Aが増加!飲食業の現状とM&Aのメリット・デメリット
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■飲食業の現状と問題点
はじめに、飲食業の現状と問題点について見ていきましょう。飲食業には、ファミレスや居酒屋、中華料理や宅配ピザなど、さまざまな業態があります。店内飲食はもとより、宅配なども飲食業に入ります。
このうち、店内飲食を行っている店を中心に、新型コロナウイルスの影響などによる倒産が増えています。帝国データバンクが公表した「飲食店の倒産動向調査(2020年)」 では、飲食店の倒産動向調査などをもとに、2020年(1月~12月)の飲食店事業者の倒産動向について報告しています。
これによると、2020年における飲食店の倒産は780件で、過去最多の水準となっています。また、業種別の倒産件数では、多い順に「酒場・ビヤホール」が 189 件、「中華・東洋料理店」が105 件、次いで「西洋料理店」100 件、「日本料理店」79 件となっており、店内飲食を行っている店を中心に、倒産が多いことがわかります。
新型コロナウイルスが流行する前から、飲食店には食材などの原料の高騰によるコストの増加をはじめ、人手不足やそれに伴う人件費の高騰などの問題がありました。そこに、新型コロナウイルスの影響で外出自粛の要請が出されたことで店内飲食に来る顧客が激減し、経営の悪化に歯止めがきかなくなり、倒産件数が増加したのです。
しかし、倒産すれば、それまで培ってきたノウハウなどが無駄になってしまいます。そこで、検討したいのがM&Aです。M&Aにより、売却益を得られたり顧客や従業員を守れたりするメリットがあります。
一方、他業界から飲食業に進出を考えている企業にとっては、逆に今がチャンスといえます。飲食店の経営悪化などにより、M&Aの対象となる店舗が増えることで、他業種からの進出がしやすくなるからです。
また、店内飲食からテイクアウトへの業態の転換を考えている飲食店にとっても今がチャンスです。テイクアウトを始めることでで売上の増加が見込めるほか、自治体などによっては、テイクアウトや宅配、移動販売などに業態転換することで、その費用に対して補助金を出す制度を作っているケースなどもあります。
現在、飲食店の置かれている立場は苦しい状況となっていますが、倒産するのではなく、M&Aなどの別の手段を検討しましょう。
■飲食業への進出に重要なM&Aと居抜きの違い
上述した通りコロナ前と比べると、現在は他業種から飲食業への進出がしやすくなっています。
飲食業に進出する方法には、M&Aや居抜きなどがあります。ここでは、M&Aと居抜きについて見ていきましょう。
M&Aと居抜きの違いとは
M&Aと居抜きの大きな違いは、引き継げる内容です。
居抜きとは、飲食店の設備や備品、家具などをそのままの状態にして、店舗などを売買や賃貸することです。一方、M&Aは、飲食店の設備や備品だけでなく、人材や取引先との契約などもそのまま引き継ぎます。このように、M&Aと居抜きでは引き継ぐ対象が大きく異なります。
居抜きのメリット・デメリット
次に、居抜きのメリット・デメリットを見てみましょう。
1.メリット
居抜きでは、借主 は飲食店の設備はそのままの状態で店の 賃貸等ができます。また、店内の改装の手間や費用が抑えられる、引き継いでから短い時間で開業できるなどのメリットがあります。
前オーナーにとっても、原状回復をする必要がなく、費用が節約可能です。
2.デメリット
居抜きのデメリットは、借主 に売り上げの保証がないところです。前の店が失敗した立地の店舗を引き継げるほかは、人材や顧客、前の店のノウハウなどを引き継ぐことはありません。そのため、開業しても、必ず売り上げが計上できる保証がありません。デメリットの大きさを考えた場合は、M&Aのほうがおすすめです。
■飲食業M&Aのメリット・デメリット
M&Aや居抜きは飲食業への進出の方法として活用されますが、居抜きのデメリットの大きさを考えるとM&Aのほうがおすすめです。
そこで、ここからは飲食業M&Aのメリットとデメリットを見ていきます。
売り手側のメリット・デメリット
まずは、飲食業M&Aの売り手側のメリットとデメリットです。売り手側のメリットとデメリットには、次のようなものがあります。
1.メリット
・売却益を得られる
飲食業M&Aの売り手側の大きなメリットが、売却益が得られることです。居抜きと違い、設備だけでなく、ノウハウやのれん代なども含んだ金額での売却となるため、大きな売却益や資金を得られるケースもあります。
M&Aの売却資金により、経営者の借入金を返済できたりM&A後の生活の資金ができたりするメリットがあります。
・顧客や従業員を守れる
顧客や従業員を守れる点も飲食業M&Aのメリットのひとつです。お店の経営から手を引く場合、不安になるのが顧客や従業員のことです。倒産や居抜きでの物件売却などの場合では、顧客や従業員を守れる保証がありません。
しかし、M&Aなら売却後もお店が続くため、顧客が守れます。また、従業員の継続雇用をしてくれる売却先を探すことで、従業員の雇用を守ることも可能です。
・原状回復費等の負担がない
飲食店の店舗や店舗のある土地を借りている場合は、賃貸契約が終わったら、原状回復などを行う必要があります。原状回復工事には、多くの費用がかかりますが、M&Aではお店をそのまま引き継ぐケースが多いため、原状回復費等の負担がありません。
2.デメリット
売り手側のデメリットは、必ず売却先が見つかるとは限らない点です。売却先がすぐに見つからなかったり、条件にあった売却先が見つからなかったりする可能性があります。
■買い手側のメリット・デメリット
買い手側のメリットとデメリットには、次のようなものがあります。
1.メリット
・ノウハウ、顧客、従業員の確保ができる
買い手側の大きなメリットのひとつが、ノウハウや顧客、従業員の確保ができることです。飲食店以外の分野から飲食店に進出する場合はもちろん、同業者が店舗拡大する場合も、ノウハウの習得や従業員の教育にかかる時間が少なくてすみます。
また、買収したお店には常連客などの顧客がいるケースも多く、それらの顧客も引き継げるため、M&A後の売り上げを見込めるメリットもあります。
・営業手続きの簡素化
飲食店の営業を開始する際には、自治体や保健所などにさまざまな手続きが必要になります。M&Aでは、新規で参入するよりも簡素化できる手続きがあり、営業手続きにかかる時間や手間を少なくできます。
2.デメリット
買い手側のデメリットとして挙げられるのが、コンセプトを変えにくいという点です。飲食店M&Aでは、買収した飲食店のコンセプトのもと、ノウハウや従業員、顧客を確保することになります。
そのため、M&Aをしてからすぐにコンセプトを変更すると、従業員が困惑したり、顧客離れが起きる可能性があります。もしコンセプトを変える場合には、少しずつ変えていく必要があるでしょう。
■まとめ
飲食業界では、店内飲食を行っている店を中心に、新型コロナウイルスの影響などによる倒産が増えています。しかし、倒産すれば、それまで培ってきたノウハウなどが無駄になってしまいます。
そこで、検討したいのがM&Aです。M&Aを行うと売却益を得られるなど、売り手側には大きなメリットがあります。また、買い手側にも、居抜きに比べてノウハウや顧客、従業員の確保ができるなどのメリットがあります。
新型コロナウイルスの影響拡大が続けば、今後も、飲食業のM&Aは増加が予想されます。これからも、飲食業のM&Aの動向は、注視しておく必要があるでしょう。
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