ホテルや旅館業界のM&A現状とは?メリットや最新の事例を紹介
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新型コロナウイルスの影響拡大により、ホテルや旅館業界では業績に大きな打撃を受けている企業も多いです。では、ホテルや旅館業界では倒産が増えているのでしょうか。また、ホテルや旅館業界のM&Aはどのようになっているのでしょうか。
ここでは、ホテルや旅館業界のM&Aの現状や、最新のM&Aの事例について解説します。
■ホテルや旅館業界のM&Aの現状とは
はじめに、ホテルや旅館業界のM&Aの現状について見ていきましょう。ホテルや旅館業界とは、宿泊や飲食、レジャーなどの機能を有する施設で、ホテルや旅館、簡易宿所や下宿などを運営している業界のことです。
ホテルや旅館業界は、インバウンド需要などで好調をキープしていましたが、新型コロナウイルスの影響を大きく受け、ほとんどのホテルや旅館の業績は悪化しています。そのため、ホテルや旅館の倒産件数も増加しています。
帝国データバンクが行った「宿泊業者の倒産動向調査(2020年度)」によると、2020年度の宿泊業者の倒産件数は125件となっており、これは、前年度比で66.7%増と大幅な増加となっています。また、この調査では、倒産の原因についても報告されており、全体の57.6%(125件のうち72件)が、倒産の原因を新型コロナウイルスの影響によるものとしています。これは、新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要が激減しただけでなく、緊急事態宣言により国内の顧客の宿泊もなくなったことが、倒産に直接的な原因となったことを示しています。
では、ホテルや旅館業界の倒産件数が増えたことは、ホテルや旅館業界のM&Aにどのような影響を与えたのでしょうか。M&AのデータサイトであるMARR Onlineによると、2020年の不動産やホテル業界のM&Aは158件ありました。2019年は181件だったので、件数としては前年比12.7%減となっています。
ただし、M&Aの件数ではなく、金額面で見てみるとM&Aの金額合計は前年が4605億円だったのにに対し、2020年は6328億円と前年比で37.4%も増加しています。この背景には、大型施設や付加価値の高いホテル・旅館が売りに出されたり、案件の幅が広がったりしたことが考えられます。インバウンドの回復を見込み、ホテルや旅館業界のM&Aは今後も続くとみられます。
■ホテルや旅館業界のM&Aのメリット
ホテルや旅館業界のM&Aが活発化している理由は、ホテルや旅館業界のM&Aに多くのメリットがあるためです。
そこで、ここでは代表的なホテルや旅館業界のM&Aのメリットを見ていきましょう。
■売り手側のメリットとは
まずは、ホテルや旅館業界のM&Aにおける売り手側のメリットです。売り手側のメリットには、次のようなものがあります。
・借入金の個人保証や担保を解消
売り手側のメリットとして、まずは経営者の利益の確保ができることが挙げられます。その代表的なものが、借入金の個人保証や担保の解消です。
M&Aにより、借入金の個人保証を相手企業に移したり、売却したお金で借入金の返済をすることで、借入金の個人保証や担保の解消をすることができます。このことで、M&A後に経営者の負担がなくなるなど利益を確保できます。
・雇用を守ることができる
M&Aの際に経営者が気になるのが、従業員のことです。従業員の生活のことを考えると、M&Aに躊躇する経営者もいるかもしれません。しかし、M&Aでは、従業員の雇用を守ることを条件にすることで、M&A後もそのまま授業員がホテルや旅館などで働き続けられる買い手を見つけられます。
・売却後に残ったホテルや事業の経営基盤にすることができる
ホテルを複数所有している場合や、ホテルや旅館業界以外の事業も行っている場合は、ホテルの売却代金や今ある資源を、売却後に残った事業に集中することができるため、経営基盤を強くできるメリットがあります。
■買い手側のメリットとは
次に、買い手側のメリットを見ていきましょう。買い手側のメリットには、次のようなものがあります。
・未進出の地域に自社ブランドを展開することができる
事業を拡大する場合には、自社が進出していない地域への進出は不可欠です。しかし、未進出の地域への進出は1から商圏を構築する必要があるなど、手間や時間がかかります。M&Aを行えば、売り手側が持っている顧客や取引先などを通じ、比較的容易に、未進出の地域に自社ブランドを展開することができメリットがあります。
・新たな顧客を獲得できる
新たなにホテルや旅館などを建てる場合は、新しく顧客を開拓していく必要があります。しかし、M&Aでホテルや旅館を取得すれば、買い取ったホテルや旅館の顧客をそのまま獲得できます。
・人材やノウハウを獲得できる
M&Aのメリットとして、人材やノウハウを獲得できることがあります。特にホテルや旅館のM&Aでは、接客マナーなど一定のスキルを身につけた人材や、いままでそのホテルや旅館が築き上げてきたノウハウを獲得できます。新規でホテルや旅館を開業するよりも、事業が成功する可能性は高くなります。
■ホテルや旅館業界のM&A事例
ホテルや旅館業界のM&Aには、売り手側にも買い手側にも多くのメリットがあるため、これまでに多くのM&Aが行われてきました。ここからは、代表的なホテルや旅館業界のM&Aの事例をご紹介します。
・大江戸温泉物語株式会社(海外・投資ファンドによるM&A)
大江戸温泉物語株式会社は、2015年にアメリカの国際的な投資ファンドであるベインキャピタルに買収されました。買収金額は公表されていませんが、日本経済新聞の報道によると約500億円の買収総額だったとのことです。
海外・投資ファンドによるM&Aの多くは、会社の価値を上げて、別の企業への売却などを目的にしています。ベインキャピタルは、2019年に大江戸温泉物語株式会社を1,000億円超で売却しようとしましたが、実現には至りませんでした。
しかし、新型コロナウイルスの影響拡大などにより、大江戸温泉物語株式会社の経営状況が厳しくなったことなどから、複数の中国企業に売却を打診、10億ドル(約1,100億円)超での売却を目指していることが2021年10月初旬に明らかになっています。これからの動向にも目が離せません。
・株式会社菊水(飲食店によるM&A)
飲食店によるM&Aとして有名なのが、カフェ・レストランの直営展開をしている株式会社バルニバービによる、株式会社菊水のM&Aです。2017年に行われました。
京都で古くから旅館を営む株式会社菊水を買収し、菊水が守り続けてきた伝統的な料理旅館とバルニバービの企画力などを融合させることで、新たな価値の創造を目指したM&Aとなっています。
・銀鱗荘(家具店によるM&A)
家具店によるM&Aとして有名なのが、家具大手のニトリホールディングスによる銀鱗荘のM&Aです。2018年にニトリホールディングスは、北海道小樽市の老舗高級旅館「銀鱗荘(ぎんりんそう)」の全株式を取得し、100%子会社化しています。銀鱗荘は、歴史的な建造物としても有名な老舗旅館で、小樽のシンボル的な存在でもあります。
ニトリホールディングスは銀鱗荘をM&Aすることで、新たなビジネスとして、ホテルや旅館業界に参入できました。
■まとめ
ホテルや旅館業界は、新型コロナウイルスの影響拡大により、大きな打撃を受けました。そのため、倒産件数も増加しています。一方、アフターコロナのインバウンド回復を見据えた他業界からの参入もあり、ホテルや旅館業界のM&Aは金額面で前年を上回るなど活発化しています。
ホテルや旅館業界のM&Aには、売り手側にも買い手側にも多くのメリットがあります。これまでも、ホテルや旅館業界だけでなく、他の業界からもホテルや旅館業界のM&Aが多くありました。ホテルや旅館業界のM&Aは、これからもますます、活発化していくと予想されます。
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