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経営資源集約化を促進する中小M&A推進計画とは?

経営資源集約化を促進する中小M&A推進計画とは?

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中小企業の経営資源が散逸しないよう集約化することを目的とした、中小M&A推進計画を中小企業庁が取りまとめました。新型コロナウイルスの影響で経営が立ち行かなくなった中小企業にとって、M&Aはメリットも大きいため、活用してみてはいかがでしょうか。

この記事では、中小M&A推進計画の詳しい内容と、メリット・デメリットについて解説します。

■経営資源集約化税制が改正

経営資源集約化税制とは、中小企業者がM&Aで取得した株式総額の一部を必要経費として計上できる制度です。5年経過したときに、経費として計上した金額分を5年間で均等にし、収益として集計します。この経営資源集約化税制が2021年に改正され、「中小M&A推進計画」として取りまとめられました。

改正された内容と改正の目的

新型コロナウイルスの影響で、2020年に約5万件もの中小企業が休業や廃業をし、日本経済に大きなダメージを与えました。また、コロナ禍に関係なく少子高齢化が進んでいくことによる「経営者の高齢化」も問題視されています。そこで、以下の2つを目的に経営資源集約化税制が改正されました。
●経営者の高齢化や新型コロナウイルスの影響に対応し、中小企業の経営破綻や休業を回避すること
●事業再構築を含めて中小企業の生産性の向上を図ること

経営資源集約化税制で改正された内容は、主に2つです。

1. 中小企業事業再編投資損失準備金の繰入れ

経営力向上計画の認定を受けた青色申告法人の中小企業者が、M&Aで取得した株式の購入価格の70%を中小企業事業再編投資損失準備金として積立てたとき、その金額分の損金算入を認められます。ただし、損金算入を認めてもらえるのは、以下の要件が揃っている必要があります。
・他企業の株式などを取得(購入の場合は取得価額が10億円以下)している
・株式などの取得日を含む事業年度終了の日まで持ち続けている

2. 中小企業事業再編投資損失準備金の取崩し

中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てた準備金の金額は、株式の全部・一部を持てなくなった場合や株式などの帳簿価額を減額した場合、取り崩さなければなりません。また、5年間経過したあとは、原則として5年間で均等額を取り崩して収益として集計する必要もあります。

■中小企業のM&Aにおけるメリット・デメリット

中小企業庁は、「経営資源の散逸の回避」「生産性向上等の実現」「リスクやコストを抑えた創業」の3つの観点から中小企業のM&Aを推進しています。近年、中小企業の経営課題の一つとして経営者の高齢化が問題視されており、後継者不在の事業を承継するための選択肢としてM&Aが挙げられているのです。
そうした中小企業のM&Aには、売却する側、取得する側の双方にメリット・デメリットがあります。

売る場合のメリット

売る場合のメリットは、後継者がいなくてもM&Aを利用することで買い手企業に事業を継承してもらえることです。また、事業を売却することで、今後の生活資金として使える利益を得られるというメリットもあります。
なお、中小企業でよく利用されている「事業譲渡」という形で事業自体を売却すれば、企業を存続させたまま事業の一部を譲渡できる上、残したい資産や従業員を確保できます。

売る場合のデメリット

事業譲渡と違って「株式譲渡」という方法で株式を売却してしまうと、売却益が出た場合には税金が発生し、翌年に確定申告で納税しなければなりません。
また、最適な買い手が見つかるとは限らず、譲渡する企業によっては自社の従業員に不当な契約内容の再契約を求められるデメリットもあります。M&A成約後の条件などを確認するなどして、譲渡後のトラブルを避けるよう気をつけましょう。

買う場合のメリット

買う場合のメリットは、株式を取得した企業のノウハウを得られることです。新事業を行う場合、その事業に関するノウハウがないと何もできず、始めるまでに時間がかかります。M&Aを利用することで、新事業に関するノウハウを得られ、短時間で新事業を始められます。
また、事業を拡大するには従業員の研修費や施設費など、様々なコストがかかります。しかし、M&Aは事業そのものを得ることも可能なため、結果的に初期投資が抑えられるメリットもあります。

買う場合のデメリット

企業を購入するのは、それ相応のお金を支払う必要があります。そのような大金を投じても、思ったような成果が得られず、事業に失敗する可能性があることが買い手のデメリットです。また、購入した企業との相性が悪いと、融合までに時間がかかったり社内の問題で優秀な人材が流れたりすることもあります。M&Aで企業を購入する際は、自社との相性やシナジーがあるのかを確認しましょう。

■中小M&A推進計画とは

中小M&A推進計画とは、中小企業がM&Aの利用促進化を進めるために、今後5年間にすべき行いの取り組みをまとめたものです。経営資源の散逸を回避する重要性やM&Aによる生産性向上等の実現、リスクやコストを抑えた創業の3つにおけるメリットがあるため、中小M&A推進計画が推進されています。

M&Aとは

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の頭文字を取った言葉で、企業の合併(Mergers)と買収(Acquisitions)を意味します。テレビなどで「2社以上の会社が合体して1つの会社になった、企業が他の企業を買い取った」という内容で報道されることがあり、知らず知らずの内にM&Aを認識していることでしょう。
M&Aは事業継承の観点で多くの中小企業から注目を集めています。家族内や従業員に事業を継承してもらうことが多くありますが、最近は「引き継ぎ手が見つからない」といったことも少なくありません。また、少子高齢化問題による経営者の高齢化が原因で、黒字経営をしている企業の廃業件数が増えています。そうした中で、第三者に事業を継承してもらえるという点はM&Aのメリットの一つとなっています。

中小M&A推進計画の目的

先ほど説明した通り、新型コロナウイルスや経営者の高齢化などが原因で、黒字経営をしている企業も含めた様々な会社が休業・廃業しています。中小M&A推進計画の目的は、このような現状を打破するために、日本経済にとって重要となる中小企業の経営資源を将来につなぐことです。中小M&A推進計画の潜在的な対象者数は、約60万とされています。

中小M&A推進計画の内容
●小規模・超小規模M&Aの円滑化

小規模・超小規模M&Aを必要としている譲渡側の企業が非常に多く、全国の事業承継・引継ぎ支援センターや民間M&A支援機関でも対応しきれていないのが現状です。また、そのような企業はM&Aにコストをかけられず、専門家の意見も取り入れられないことが課題となっていました。
中小M&A推進計画ではこれらを解決するために、事業承継・引継ぎ支援センターのデータベースの改修や支援や手続きのデジタル化などの対策を講じています。官民支援機関の連携を強化して体制を充実させ、小規模・超小規模M&Aをスムーズに行うことが狙いです。
さらに、補助金による支援といった取り組みも行われますM&Aにかかるコストを軽減することで、多くの企業が予算内で安心してM&Aを行えるようになります。

●大規模・中規模M&Aの円滑化

大規模・中規模M&Aは規模が大きい分、内容も複雑なため、専門家やM&A支援機関による的確な支援が必要となります。しかし、「どのような支援を受ければいいのか、どの民間M&A支援機関で支援を受けるべきか」という判断が難しい問題がありました。これを解決するために、中小M&A推進計画は、企業価値評価ツールの提供を推進しています。企業価値評価ツールを活用すれば、中小企業が民間M&A支援機関による適性な支援を受けられるようになります。また、セカンドオピニオン(民間M&A支援機関から意見をもらうこと)にかかる費用も補助されるようになります。
他にも、PMI(M&A実施後の経営統合)の体制が整っていない問題もあるため、M&A実施後の支援制度を強化することを講じました。また、中小企業向けファンドによる支援を充実させます。

●中小M&Aに関する基盤の構築

事業承継はトラブルが発生することが多いため、早めに・計画的に行うことが大切です。しかし、継承者がいないことやその他経営に関する問題を優先してしまうことが多く、対応が遅れてしまう問題が発生していました。この問題を解決するために、事業承継に関する気付きやノウハウを提供する「事業承継診断」を「企業健康診断」へと改組されます。企業健康診断では、事業承継に関することだけでなく、現状の企業価値まで把握できるようになります。
また、現状の中小M&Aの制度では実施するために様々な障害があり、M&Aの実施に対する障害や、最悪の場合断念を余儀なくされる問題がありました。そのため、中小M&A推進計画では会社法の特例の創設といった対策を講じています。

さらに、M&A支援機関の対応や支援などの質を下げないように、「M&A支援機関に係る登録制度の創設・M&A仲介に係る自主規制団体の設立」が併せて策定されました。

■まとめ

税制改正によってM&Aをより利用しやすくなっているため、利用を考えている中小企業は一度検討してみましょう。また、M&Aを行う際にかかる税金は節税することもできます。M&Aの方法と納税との兼ね合いで悩みが生じている場合は、いつでも相談できる顧問税理士に相談できると安心できます。

平坂ゆうり(ライター)
お金に関する勉強に注力しているフリーライター。
節約術や貯金関係の記事を中心に、お金以外のジャンルも幅広く担当。
幅広いジャンルの執筆経験を活かして、読者に分かりやすい丁寧な執筆を心がけます。
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