世界最大額のM&Aから成功事例・失敗事例まで 9つの事例を紹介
更新日:
■世界最大規模のM&A3選
まずは、世界最大規模のM&Aの事例を3つご紹介します。
Salesforce.comによるSlack Technologies Inc.の買収
SFA・CRMツールを提供するSalesforce.comは、ビジネスチャットツールで高いシェアを誇るSlackを提供するSlack Technologies Inc.を277億ドル(約2兆9,000億円)で買収しました。Slacesforce.comが取り扱うSalesforceは世界90ヵ国以上で導入されており、圧倒的シェアNo.1を誇ります。
今回の買収でSalus CluodとSlacKの連携が進み、ビジネスコミュニケーションの加速やシステム効率の向上などが期待されています。
Microsoft社によるLinkedInの買収
世界最大規模の時価総額を誇るMicrosoft社は、さまざまな企業の買収を進めています。その中でも注目すべきは、LinkedInの買収でしょう。買収価格は262憶ドル(2兆9,800億円)と、世界最大規模のM&Aになりました。
LinkedInはbusiness向けのSNSで、キャリアやスキルを登録してビジネスパーソン同士が繋がる仕組みです。ユーザー数は4億人ほどで、そのうち約半数は副社長や役員クラスだとされています。
武田薬品工業によるシャイアーの買収
武田薬品工業株式会社は、希少疾患の医薬品の開発・製造を行うShire plcを買収しました。今回の買収により、武田薬品工業のグローバル性が向上したとともに、希少疾患の研究へ積極的な投資により、医療業界に変革をもたらすことが期待されています。武田薬品工業の株主のうち89.1%の賛成、Shire plcにおいては99.8%の賛成を得ています。買収の公表から8ヶ月という比較的短い期間で買収を完了したため、両社の交渉がスムーズに進んだと考えられるでしょう。
■M&Aの成功例3選
M&Aに成功すれば、シナジー効果により収益性や安定性が高まります。M&Aの成功事例を3つご紹介します。
楽天によるFablicの買収
楽天市場や楽天モバイルなどを展開する楽天株式会社は、フリマアプリの「フリル」を展開する株式会社Fablicを完全子会社化しました。フリマアプリは、不用品を手軽に販売できることが時代の流れに適していることから、急速に普及しています。急速に拡大するフリマ業界にいち早く参入し、利益を確保することが狙いです。
ソフトバンクグループによるス日本テレコムとボーダフォンの買収
ソフトバンクグループは、積極的にM&Aを行うことで新事業への参入や事業拡大を行ってきました。その代表的なものが日本テレコムとボーダフォンの買収です。
2004年当時のソフトバンクグループはインターネット事業に参入したばかりで、情報管理などのノウハウも薄く、情報漏洩による信用力の低下などが起こっていた時期でした。そこでインターネットのODNを展開していた日本テレコムを2004年に買収し、ODNユーザーの獲得や信用力の向上だけでなく、通信インフラの統合によるコスト削減、顧客満足度の向上など、さまざまなシナジー効果を得ることに成功しています。
また、2006年に行ったボーダフォン日本法人の買収では、携帯電話事業の新規参入による事業拡大だけでなく、グループ各社でのセールスプロモーション活動による顧客獲得などのシナジー効果を得ることができました。
今では、インターネット事業、携帯電話事業ともに、ソフトバンクグループの中核をになっている事業に成長しています。
ソフトバンクグループのような巨大企業は、今後もあらゆる事業を積極的に買収すると考えられるため、随時チェックしておきたいところです。
ソニーによるFunimation Productions, Ltd.の買収
ソニー(Sony Pictures Television Networks)は、映画版のアニメなどを配信するアメリカのFunimation Productions, Ltd.を約165億円で買収しました。世界的に高い人気を誇る日本アニメのライセンスを抱えており、北米においては高い知名度を持ちます。現在では、ストリーミング配信サービスが注目を浴びており、同社も「FunimationNOW」というサービスを展開しています。
Sony Pictures Television Networksはソニー・ピクチャーズエンターテインメントの子会社で、同社の番組や他社の映画などの配信が主な事業です。今回のM&Aには、アニメの配信先を増やす目的があります。また、Funimation Productions, Ltd.としても、ソニー側の顧客獲得が可能になるため、今回の買収を了承したものと考えられています。
■M&Aの失敗例3選
M&Aは必ず成功するわけではありません。最後に、M&Aの失敗例を3つご紹介します。
キリンによるブラジル企業の買収
飲料メーカーのキリンは、2011年にブラジルのスキンカリオールを約3,000億円で買収しました。スキンカリオールはブラジルでビールの製造販売をしており、ブラジルでの販路拡大が主な目的です。しかし、M&Aの実施後にブラジルの景気が低迷し、2017年にはオランダのハイネケンに約770億円で売却する結果となりました。
この失敗例からは、海外のM&Aの難しさがわかります。キリンのスキンカリオール買収は、現地の景気変動や買収後に現地通貨レアルの価値が下がり続けたこと、他社との競争の激化など、さまざまな要因により失敗に終わりました。
この事例から、海外でのM&Aで成功するためには、景気変動などの事前調査はもちろんのこと、買収後のさまざまな変化への対応力が重要となることを示しています。
Microsoftによるノキアのデバイス事業の買収
Microsoftは数々の企業を買収しているため、それだけ失敗例も多く存在します。フィンランドの通信インフラベンダーのノキアのデバイス事業を買収した際には、約72億ドルもの資金を投入しています。目的は、GoogleやAppleに遅れを取っていたスマートフォン事業を加速させることです。しかし、先行者利益による差は非常に大きく、遅れを取り戻すことはできませんでした。
翌年には従業員の大量リストラおよび約76億ドルもの減損損失(将来、投資額の回収ができないと見積もられた損失額)の計上に至っています。M&Aに成功すれば、他社との遅れを取り戻すことに成功した可能性があります。しかし、単にデバイス事業を買収すれば、スマートフォン業界でシェアを伸ばせるわけではありません。
ライザップによる複数企業の買収
ライザップグループは、短期間で非常に多くのM&Aを実施したことから世間から注目を浴びています。M&Aの数が多いほどに失敗例も多いのは、ライザップも例外ではありません。赤字企業の買収後、経営を改善できずに多額の減損損失を計上した例があります。このようなM&Aの失敗は、グループ全体の経営に支障をきたします。
中には、ライザップの手腕によって黒字化を実現した例もいくつかありますが、不用意なM&Aの多用は禁物でしょう。
■まとめ
MicrosoftやSalesforce.comなど、世界の名だたる企業が巨額のM&Aを実施しています。M&Aに成功すれば、時価総額が上がるほか、他分野でのシェア拡大、既存事業の成長などが期待できます。M&Aは成功すればシナジー効果によって大きなメリットを得られますが、失敗すれば経営を圧迫する恐れがあるため、安易に行える方法ではありません。買い手と売り手の関係性の把握、M&Aの実施後の予測が重要なポイントと言えるでしょう。
カテゴリから探す
人気記事ランキング
おすすめページ
M&A相談センターについて