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大型M&Aに欠かせない「投資銀行」とは? その役割について解説

大型M&Aに欠かせない「投資銀行」とは? その役割について解説

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投資銀行の存在をご存じでしょうか。投資銀行は株式や債券などの有価証券を取り扱い、上場や資金調達など、法人の有価証券にかかわる動きをサポートする役割を担っています。また、M&Aにも投資銀行の存在は欠かせません。
ここでは、投資銀行の役割や、投資銀行が関わっているM&Aの事例について紹介します。

投資銀行は有価証券を取り扱う

まずは「投資銀行」とは何なのか、いわゆる普通の“銀行”との比較を通じて見てみましょう。

商業銀行と投資銀行の違い

投資銀行とは、有価証券を扱う金融機関のことです。法人が有価証券を発行する際のサポートや有価証券の売買、あるいは有価証券を通じたM&Aのサポートなどを業務としています。「銀行」と名乗っていますが、顧客の預貯金を企業に融資するような銀行業務は行っていません。
アメリカではこのような業務を「Invest Banking」とよび、日本語に訳すときに投資銀行としてしまったため、この名称が定着しました。しかし、実際に行っている業務は証券業です。
銀行業とは個人や法人からお金を預かり、融資を行う金融機関を指しますが、銀行業を手がける、いわゆる一般的に銀行とよばれている金融機関は「商業銀行」です。簡単にいえば、銀行業を行っているのが商業銀行、証券業を行っているのが投資銀行となります。

日本の投資銀行の具体例

法人が有価証券を発行する際のサポートなどを行う投資銀行ですが、こうした業務だけを専門的に手がけている日系の投資銀行はありません。個人向けの証券会社が投資銀行の業務を兼ねており、野村・大和・みずほ・日興SMBC・三菱UFJ の5大証券会社は投資銀行の業務も行っています。つまり、個人に有価証券を販売しながら、法人が有価証券を発行する際のサポート業務なども手がけているということです。
5大証券会社は後述する投資銀行の4大業務をほぼカバーしていますが、岡三証券やいちよし証券などの準大手も、投資銀行ビジネスの業務の一部を手がけています。
外資系では、モルガン・スタンレー証券やゴールド・サックスマン証券などが、日本で投資銀行業務の一部である「有価証券を通じたM&Aのサポート」を行っています。
また、近年は商業銀行の中にも、投資銀行業務の一部を手がけているところがあります。

投資銀行の4大業務とは

投資銀行のおもな業務は以下の4つに大別されます。
 

  • M&Aアドバイザリー業務
  • IPO業務
  • ECM業務
  • DCM業務

 

ここでは、それぞれの業務について解説します。

M&Aを支援する「M&Aアドバイザリー」業務

中小企業から大企業まで、近年は企業間のM&A(企業の買収・合併)が活発に行われています。M&Aで買い手から売り手へ支払われる対価は現金だけでなく、株式が用いられることもあり、証券を扱う投資銀行(証券会社)の介入が必要になります。
上場企業間のM&Aでは、買い手が売り手株式の買付期間と価格などを公告し、株主から市場外で買い付けるTOB(公開買い付け)が行われることがあります。TOBには証券業の免許を持つ投資銀行の介入が必要になることもあり、投資銀行がM&A全般においてサポートする「M&Aアドバイザリー業務」を行っています。
株式の売買だけにとどまらず、買収企業の選定や買収交渉、買収対象企業の企業価値算定、デューデリジェンス(対象企業の審査)、買収の実行などM&A全般において、企業をサポートします。

株式上場を支援する「IPO」業務

IPO(Initial Public Offering)とは新規公開株式ともよばれ、企業が新たに証券取引所に株式を上場することを指します。投資銀行では、企業のIPOをサポートする公開引受のことをIPO業務とよびます。
IPOのためには証券取引所の審査を受けますが、証券取引所が定めている審査基準をクリアする必要があります。また、上場後に安定した企業経営ができるよう、上場する前に企業の課題を改善することも重要です。
上場準備を企業が独力で行うのは難しいため、投資銀行がアドバイスやサポートを行うことになります。

株式の増資や分割を支援する「ECM」業務

ECM(Equity Capital Market)とは「株式の資本市場」と直訳でき、株式を発行して資金を調達する場を指す表現です。投資銀行のECM業務とは、企業が株式の増資・分割を行う際にサポートする業務です。適切に増資や分割を行い、市場の需給バランスが崩れて株価が下がらないようにします。
適切な増資や分割を行うために、投資銀行のECM業務担当者は事前に市場調査を行い、増資・分割後の株価の動きや投資家の購入見込みなどを分析し、企業に提案します。また、IR活動とよばれる投資家へのプロモーション活動も担います。

債券発行を支援する「DCM」業務

DCM(Dept Capital Market)のDeptは債券のことで、DCMは債券を発行して資金調達を行う場を意味します。つまり、投資銀行のDCM業務とは、企業が債券を発行して資金を調達することをサポートする業務です。
DCM業務の担当者は、債券発行による資金調達を行う企業に対し、どれぐらいの債券を発行すればよいか企業の返済能力を考慮して提案します。また、債券を購入してくれる機関投資家にプロモーション活動を行い、投資家を集めるのもDCM業務の仕事です。

投資銀行のM&Aへの関与例

投資銀行の主な業務内容がわかったところで、実際に投資銀行がM&Aにどのように関与しているか、いくつか事例を挙げて説明します。

・NTTによるNTTドコモの完全子会社化

2020年9月、NTTは連結子会社のNTTドコモを完全子会社とするために、NTTドコモ株式のTOBを実施すると発表しました。買付総額は4兆円超となり、同年11月に子会社化を完了させました。
 

この案件に関わった投資銀行は、野村證券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券など4社(ファームも含む)。野村證券はNTTドコモ側、三菱UFJモルガン・スタンレー証券はNTT側としてこの案件を担当しました。

・投資会社KKR傘下企業による日立物流の株式取得

2022年4月、世界的投資会社KKRは傘下の企業を通じ、日立製作所グループの日立物流の株式のTOBを発表しました。
 

近年、日立グループは親子上場の解消を目的にグループ企業の売却や完全子会社化を進めていました。KKR傘下企業が日立物流株式のTOBを表明したことについても、親子上場の解消になることから了承したと思われます。
 

TOBは2023年3月に完了し、日立物流は日立グループから離れました。なお、TOBによる買付総額は4,400億円超でした。
 

この案件に関わった投資銀行は、KKR側がSMBC日興証券など2社。日立物流側には、スイス系証券会社の日本法人であるUBS証券が関与していました。

まとめ

投資銀行とは、有価証券を扱う金融機関のことです。おもな業務として、企業が株式を上場させたり、株式などを使ってM&Aを行ったり資金調達をしたりする際のサポート業務が挙げられます。
銀行と名乗っていますが、投資銀行の業務は証券業に相当し、日本ではおもに5大証券会社がその業務を手がけています。
近年、M&Aを活用した企業再編の動きがニュースでよく報じられ、TOB(株式の公開買付)という言葉もよく聞かれるようになりました。企業のTOBを支えているのも投資銀行です。経済ニュースを見る際、投資銀行の存在にも注目してみてください。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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