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株式交付とは? 株式交換との違いやメリット・デメリットを解説

株式交付とは? 株式交換との違いやメリット・デメリットを解説

更新日:

M&Aを通じた企業再編に関心を持つ経営者の方は多いと思います。令和3年、新たに制度化された株式交付は、買収対価として株式を使う手法です。株式を対価とする方法には株式交換がありますが、株式交付と株式交換はどう違うのでしょうか。
ここでは株式交付の概要やメリット・デメリットについて解説します。

株式交付は子会社化の新しい手法

株式交付とは、M&Aにおいて買い手が売り手を子会社化する際、対価を自社の株式または金銭で支払うことです。令和3年に施行された改正会社法で、株式交付は子会社化の新たな方法として制度化されました。
 

子会社化」とは、親会社が子会社の株式の過半数を保有し、子会社の経営権を握ることです。株式交付制度ができる前から、M&Aによる子会社化の方法として株式譲渡や株式交換、現物出資などが使われていました。あとで詳しく解説しますが、株式交付はこれらの方法のデメリットを補うものとして制度化されました。
 

会社法第2条32の2では、株式交付について以下のように定義しています。
 

「株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。第七百七十四条の三第二項において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。」
 

条文を簡単にまとめると次のようになります。
 

  • 売り手・買い手ともに日本の会社法上の株式会社である
  • 買い手が売り手を子会社化することを目的とする
  • 買い手は売り手の株式を譲り受け、売り手に対して自社の株式を交付する(現金で払うことも可能)

 

たとえば、株式交付の方法を使ってA社がB社の発行済み株式51%を譲り受け、A社=親会社・B社=子会社という関係を築くケースについて見てみましょう。
 

(1)A社はB社の一部の株主から発行済み株式51%に相当する株式数を譲り受ける
(2)株式を譲り渡したB社の株主は、対価としてA社の株式を受け取る
(3)A社はB社の発行済み株式の51%を保有し、B社を子会社にする。(2)以外のB社の株主は、B社の発行済み株式の49%を保有することになる。また、(2)の株主が新たにA社の株主として加わる。
 

ただし、以下のような場合、株式交付はできません。
 

  • 売り手または買い手が日本の株式会社以外の法人、または清算株式会社である
  • 買い手・売り手がすでに親会社子会社関係にある

株式交付制度が創設された背景

株式交付制度ができた背景には、これまでの方法ではM&Aによる子会社化が促進されないという問題点がありました。
 

ここでは、2つの問題点に着目して、株式交付制度ができた背景について解説します。

従来の手法は子会社化のハードルが高い

株式交付制度ができる前から、子会社化の方法として株式譲渡・株式交換・現物出資などの方法がありました。しかし、買い手にとってこれらの方法を活用した子会社化は、ハードルが高くなりがちでした。

・株式譲渡

買い手が売り手の株式を譲り受け、その対価を現金で渡す手法です。この場合、買い手は多額の資金を用意する必要があります。

・株式交換

株式交換も買い手が売り手の株式を譲り受け、買い手の株式をその対価とする方法です。ただし、株式交換は売り手の株式をすべて譲り受け、売り手を完全子会社にすることが条件です。
 

買い手は必ずしも売り手を完全子会社にしたいとは限りません。なぜなら経営権を握るためには、売り手の株式の過半数を保有すれば済むからです。そのため、株式交換には消極的になるケースが少なくありませんでした。

・現物出資

売り手の株主を譲り受けた対価として、買い手が自社の不動産や特許などの現物を売り手に渡す方法です。ただし、現物を対価とする場合、裁判所から選ばれた検査役が価値を評価し、対価としてふさわしいと認められなければなりません。調査には、費用と数か月の時間が必要です。
 

株式交付は株式を対価としたM&Aの手法であるため、多額の現金を用意する必要がありません。また、完全子会社としないケースにおいても、株式を対価として子会社化ができるようにしています。

税制上の問題がM&Aの促進を阻む

企業を買収して子会社化するにあたり、親会社となる買い手が買収の対価として、子会社の売り手の株主に自社の株式を渡すと、売り手の株主には譲渡益に対する税金が課せられる場合があります。しかし、組織再編税制の適格要件を満たすと譲渡益は繰り延べられ、売り手の株主は自らの株式を譲渡した(買い手の株式を受け取った)時点では課税されません。
ただし、このような税制上の優遇を受けるには、株式交換前の売り手・買い手の支配関係に応じてクリアしなければならない要件が複数設定されており、組織再編税制は企業にとってM&Aの促進にはつながりませんでした。
そこで、株式交付では、税制上の優遇を受けるための要件を簡素化しています。

株式交付のメリット・デメリット

ここでは、株式交付のメリット・デメリットについて解説します。

株式交付のメリットとは
・買い手は売り手の全株式を取得する必要がない

株式交付では、親会社となる買い手は、株式交換のように子会社となる売り手の全株式を取得する必要はありません。買い手が「対象企業の株式の過半数を所有できれば十分」と考えるケースでは、株式交付が有効です。
 

株式交換のように、買い手が売り手の全株式を取得して完全子会社化すると、売り手の旧株主は新たに買い手の株主となります。しかし、既存の株主と新たな株主が対立するリスクがあるため、経営権の掌握を目的とする場合、完全子会社化しないほうがよいケースもあります。

・買い手は売り手の新株予約権も取得できる

売り手が新株予約権を発行していれば、買い手がそれを取得できます。新株予約権を所有していると、権利を行使するための一定の金額を振り込むことで、売り手に新株を発行させたり、売り手が保有する株式を取得したりできます。
 

売り手を子会社化したあと、新株予約権を持った株主にその権利を行使されると、買い手である親会社の株主保有比率が低下してしまうリスクがあります。そのため、売り手が新株予約権を発行している場合は、取得したほうがよいです。

・株式交換よりも税制優遇を受けられる要件がシンプル

株式交換による売り手企業の子会社化は、売り手の株主の譲渡益に税が課されるケースがあります。株式交換よりも株式交付のほうが、税の支払いを繰り延べられる税制優遇の要件がシンプルです。
 

株式交付の場合は「売り手の株主が買い手に株式を渡した対価として得る価額のうち、80%以上を買い手の株式とすること」だけが要件です。この要件をクリアすれば、買い手の株主は税制優遇が受けられます。
 

ちなみに、株式交換前に買い手・売り手の支配関係がない(買い手が保有している売り手の株式が議決権割合で50%以下)場合、売り手の株主が税の支払い繰り延べの税制優遇を受けるには「売り手の株式を譲渡した対価は買い手の株式のみ」「買い手と売り手の事業内容に関連性があること」など7つの要件を満たす必要があり、ハードルが高くなっています。

株式交付のデメリットとは
・株式交付の対象は売り手・買い手ともに国内で設立された株式会社のみ

株式交付ができるのは、売り手・買い手ともに日本で設立された会社だけです。海外の企業を親会社(買い手)としたり、合同会社を子会社化したりすることはできません。このことは、M&Aを活発化させる意味ではマイナスに働く可能性があります。

・既存の子会社は対象外

すでに「子会社=議決権ベースで50%超の株式を保有している」となっている企業を対象に、株式交付を行うことはできません。株式交付は、あくまで子会社となっていない企業を子会社化するための方法です。

・株式を必ず交付する必要がある

株式交付では、必ず買い手の株式を売り手の株主への対価に含める必要があります。株式交換では対価として買い手の株式を交付せず、金銭や買い手の親会社の株式などを交付できますが、株式交付ではそうしたことはできません。
 

さらに、税制優遇を受けるには、対価の80%以上を買い手の株式にする必要があります。

まとめ

株式交付は、子会社の経営権を握る程度の株式を取得したい場合などに有効な方法です。子会社化の手法として株式交換が知られていますが、子会社とする企業の株式をすべて取得する必要があるため、完全子会社化を目指す場合しか活用ができませんでした。
株式交付では、売り手の株主に対する税制優遇の要件も株式交換よりもシンプルになっており、M&Aによる子会社化を進めやすくなっています。しかし、まだ新しい制度であるため、株式交付についての情報はまだ多くありません。株式交付について関心がある方は、M&Aの専門家に相談しましょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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