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M&Aの買収金を分割払いするアーンアウト その目的とは?

M&Aの買収金を分割払いするアーンアウト その目的とは?

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M&A成約後、買い手は買収金を一括で支払うのが一般的です。しかし、実績よりも技術力や将来性を評価されているような企業を買収する場合、契約書に分割払いを盛り込めます。
今回は、買収金を分割払いする「アーンアウト」という手法について、概要やその目的を解説します。

M&Aの契約におけるアーンアウト(分割払い)条項とは

M&Aの最終契約書で、買収金を何度かに分けて支払う「アーンアウト」が条項に盛り込まれるケースがあります。まずはアーンアウトとは何か、どのようなときに用いられるか見てみましょう。

アーンアウト(買収金の分割払い)とは

M&Aの買収金は一括で支払うのが一般的です。しかし、最終契約書で「アーンアウト(earn out)」という条項を設けると、分割で支払うことが可能です。たとえば「ある企業の株式を1億円で買収する場合、契約時に5,000万円を支払い、翌年に設定した目標を達成すれば残りを支払う」といった内容を盛り込みます。
 

残りが支払われる条件として設定される指標は、売上高や純利益、営業利益、営業キャッシュフローなどがあります。また、アーンアウトの評価期間は3年程度が一般的です。
 

アーンアウト条項の内容は売り手側・買い手側双方で交渉して決められます。そのため、アーンアウトは「条件付取得対価」ともよばれています。
 

アーンアウト条項を盛り込むケース

M&Aにおいてアーンアウト条項が盛り込まれるのは、売り手側と買い手側で企業評価の見解に違いがある場合です。
 

たとえば、売り手側に歴史や実績があまりない場合、現在の売上や営業利益だけでなく、将来性や買収によって買い手が得られる効果も企業評価に反映させてほしいと考えます。一方、買い手側にとって、将来性という不確定要素を買収金額に反映させることはリスクにつながります。
 

このような場合、買収金額を下げるとM&Aそのものが不成立に終わる可能性があります。両者の見解の相違を埋め合わせし、M&Aを成立させる方法として有効なのがアーンアウトです。
 

売り手側が短期間で急激な成長を目指すスタートアップ企業や、ニッチな分野で高い技術力を持つ中小企業などの場合、アーンアウト条項が盛り込まれるケースが多くみられます。

買い手側から見たアーンアウトのメリット・デメリット

ここでは、買い手側にとって、アーンアウトにはどのようなメリット・デメリットがあるか解説します。

買い手側にとってのメリット
・M&A成立時の負担を軽減できる

一般的に、買い手側は株式などの譲渡を行う際に一括で買収金を支払う必要があります。手元資金が足りないと融資で賄う必要があり、その後利息を支払わなければなりません。しかし、アーンアウト条項を盛り込めば分割で支払えるため、M&A成立時の金銭的負担を軽減できます。
 

M&Aは買収金以外にもさまざまな費用が必要になります。仲介業者への仲介手数料・成功報酬の支払いや、デューデリジェンスに携わる税理士や司法書士などへの報酬などが発生します。一度に出ていく資金を少しでも抑えられるという点で、アーンアウトは有効です。

・不確定な将来に対するリスク回避

企業買収を投資として考えるなら、買収金を分割で支払う方法は、投資に対する一種のリスク回避になります。売り手側が「今後の業績は期待できるが、これまでの実績はまだ十分ではない」という状況の場合、算出された買収金に対して、買い手側が「これだけの金額を投資してもよいのか不安」と感じるのは当然のことです。
 

買収金を分割払いにしておけば万が一、買収した企業の業績が上がらなかったとしても、買収金を一括で支払った場合に比べて損失を抑えられます。

・買収した企業のモチベーションアップにつながる

買収金のアーンアウトは、買収した企業にとってはインセンティブのような役割を果たし、モチベーションアップにつながります。
 

アーンアウト条項は売り手側の将来性を加味して最終契約書に盛り込まれるものですが、言い換えれば「買い手側は売り手側の現状に満足していない」ということです。アーンアウト条項を設定することで、売り手側が買収されたあとも成果を出し続けられる可能性があります。

買い手側にとってのデメリット
・アーンアウト条項が交渉の長期化を招くことも

アーンアウト条項の内容をめぐり、買い手側と売り手側で意見がまとまらず、交渉の長期化を招くことがあります。
 

アーンアウト条項では、買収金の支払い方法や目標指標に何を用いるか、目標達成までの期間設定などが決められます。条項の内容によっては売り手側が不利となるケースもあり、売り手側・買い手側ともに慎重にならざるを得ません。
 

買収金の一括払いなら必要ないやり取りが生じ、M&Aの成立まで時間がかかる可能性があります。

・期待された業績が出なければ相応の損失が出る

M&A成立時に買収金の一部を支払ったあと、買収した企業が思ったような業績を上げられなければ、残りの金額を支払う必要はありません。これは必要以上の損失が出ずに済んだともいえますが、「それ相応の損失が出た」ともいえます。
 

そもそも、アーンアウト条項が設定されるM&Aは、買い手が「買収を希望する企業の現状に対して買収金額は妥当ではないが、将来性込みで受け入れる」ケースです。そういう意味で、アーンアウト条項を設定するようなM&Aは、見込み違いのM&Aになるリスクをはらんでいるといえます。

売り手側から見たアーンアウトのメリット・デメリット

次に、売り手側にとって、アーンアウトにどのようなメリット・デメリットがあるか見てみましょう。

売り手側にとってのメリット
・アーンアウト条項の設定によってM&Aが成立しやすくなることがある

高い技術力を持ちながら実績が乏しいベンチャー企業やスタートアップ企業などの場合、算出した企業価値や買収金額が買い手側に受け入れてもらえないケースがあります。そこで、アーンアウト条項を盛り込めば、金銭的リスクを回避したい買い手側の同意を得られる可能性があります。

・業績が上がれば、買収金額以上のお金を得られる可能性がある

アーンアウト条項の内容によっては、業績が上がれば買収金額に上乗せした額を受け取れることもあります。アーンアウト条項に「買い手側が設定した目標設定を上回った場合は、買収金額の分割払いに加えてインセンティブを上乗せする」といった内容を盛り込むようにします。

売り手側にとってのデメリット
・M&A成約時に得られるお金が少なくなる

買収金の分割払いに応じると、当然のことながら成約時に得られるお金は一括払いの場合よりも少なくなります。
 

企業を売却した経営者は引き続き買収された企業で事業にかかわる場合と、事業から離れる場合があります。後者の場合は、一括払いで得た資金を別のことに活用しようと考えている人もいます。M&Aの最終契約書にアーンアウト条項を盛り込むと、そうした思惑が外れてしまうことがあります。

・業績が一定基準をクリアしなければ買収金の残額が得られない

アーンアウトは「条件付取得対価」とよばれているように、アーンアウト条項で定められた条件をクリアしなければ、買収金の残額は得られません。
 

上記同様、買収による対価を元手に別のことを始める計画がある場合、売り手側によってアーンアウト条項はデメリットにつながります。

アーンアウト条項を盛り込むときの注意点

アーンアウト条項では、売り手側に買収金の残金を支払う条件として、売上高や純利益などの指標が設定されます。しかし、買収後、売り手側が残金を支払うのを渋り、業績操作を行ったり、事業モデルを変更したりして買収企業の目標クリアを阻害する恐れがあります。
 

買い手側のモラルに期待したいところですが、現実的には性善説に頼ってばかりもいられません。買収企業の目標達成を阻害するような業績操作の禁止や、アーンアウトの期間中に買い手・売り手双方の合意なしに事業モデルを変更しないことを、最終契約書に盛り込むよう売り手側から提案しましょう。

まとめ

スタートアップ企業のように、企業の現状よりも将来性に期待して買収を行う場合、買い手は一括で買収金を支払うことに関して大きなリスクを感じます。このようなケースでは、買い手・売り手双方の交渉でM&Aの最終契約書にアーンアウト条項を盛り込み、買収金を分割払いにすることができます。
買い手にとって、リスクを抑えつつ大きなリターンを得る方法としてアーンアウトは有効です。ただし、アーンアウト条項の具体的な内容などは、専門家の意見を取り入れながら考えていく必要があります。M&Aを専門的に手がける仲介会社に相談しましょう。
 

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