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複数株式を1つにまとめる「株式併合」の目的とは?注意点や手順も解説

複数株式を1つにまとめる「株式併合」の目的とは?注意点や手順も解説

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複数株式を一つにまとめる「株式併合」は、経営者に株式を集約する「スクイーズアウト」を目的として行われるケースが増えています。 株式併合は企業側にとって経営しやすい体制を構築できるメリットがある一方、株主にとっては不都合なことも少なくありません。株式併合のメリット・デメリットを押さえておきましょう。

すでに発行されている株式を減らす「株式併合」

株式併合とは、複数の株式を1株に統合し、発行済株式数(市場に出回っている株式の数)を減らすことです。株式併合を行う目的は、端的に言えば「株価を上げるため」「少数株主から株を買い取るため」です。
 

株式併合を簡単な例で説明しましょう。企業Aが5:1の株式併合を行った(5株を1株にまとめる)とします。Aの株式を200株持っている株主は、株式併合によって保有する株式数が40株に減ります。ただし、株式の1株当たりの価値は株式併合前の5倍となるため、株式の資産価値そのものは変わりません。
 

しかし、株式併合の比率によっては、併合後に1株未満の株式(端株)や単元未満株(100株以下の株式)が生まれてしまうことがあります。上記の例でいえば、株式併合によって株主が保有する株式数が40株に減っており、単元未満株となってしまいます。
 

単元未満株は議決権の行使や売買ができないことから、株式併合は株主に不利益をもたらす可能性があります。そこで、株式併合は株主総会の特別決議がなければ実行できないようになっています。

株式併合を行うための手順

以下の条件で、株式併合を行うまでのおおまかな流れを見てみましょう。
 

  • 取締役会を設置する非公開会社
  • 株式併合によって端株が発生する
  • 発行している株式は普通株式のみ。種類株式は発行していない

(1)取締役会を開いて決議を行う

取締役会を開き、株式併合と株主総会の招集を決定します。

(2)事前書面の備置き

株主総会の2週間前、または株主への通知日のいずれか早い日から、株主総会決議事項などを記載した事前書面を本店に備え置きます。備置期間は効力発生後6か月間を経過する日までです。

(3)株主への通知

非公開会社の場合は株主総会開催日の7日前(定款で7日以下の期間を定めている場合は、定款に従う)までに、株主に株主総会の招集通知を発送します。
 

株式併合によって所有する株が端株となる株主は、株式買取請求権を行使できます。株主買取請求権を行使する株主は、株主総会までに株式併合への反対を会社に通知し、株主総会の特別決議に反対します。

(4)株主総会の特別決議

株式併合の承認を得るには、株主総会での特別決議が必要です。特別決議が成立するには、議決権の過半数を持つ株主が出席し、議決権ベースで2/3以上の賛成が必要です。
 

株主総会では、取締役が株式併合の理由を説明するとともに、下記の株式併合に関わる項目について特別決議を行います。
 

  • 株式併合の割合
  • 株式併合の効力発生日
  • 効力発生日における発行可能株式総数
※種類株式を発行している場合、併合する株式の種類についても特別決議を行う

(5)承認後の通知

株主総会特別決議の成立後、株式併合によって端株が発生する場合は、株式併合の効力発生日の20日前までに、株主と登録株式質権者に対して株主総会での決議事項を通知します(端株が生じない場合は2週間前までに通知)。
 

なお、(2)で株式併合に反対した株主は、株式併合の効力発生日の20日前から前日までの間に、会社に対して端株の買取を請求できます。

(6)効力発生

効力発生日になると、株主が持っている株式は併合割合に応じた株式数になります。また、効力発生日以降に端株の買取が行われます。

(7)事後書面の備置き

効力発生日から6か月間、事後書面として、効力発生時の発行済み株式総数などを記載した書面を本店に備え置きます。

(8)株式併合の登記

効力発生日から2週間以内に、株式併合にともなう変更登記を申請します。

株式併合の目的と注意点

株式併合の概要とプロセスについて述べましたが、そもそも株式併合はどのような目的で行われるのでしょうか。
 

ここでは、株式併合を行う目的と注意点について解説します。

株式併合を行う目的とメリット

企業は「経営しやすい体制づくり」を目的に、株式併合を行います。具体的な目的とメリットとして、3つのパターンを見てみましょう。

・株式の管理コストを抑える

発行済株式数を減らして株主数を減らすことで、株式の管理コストを抑えます。
 

株式の管理コストとは、株式総会の招集や配当金、株主優待などを株主へ通知するためにかかる郵送費、株主総会の運営費などを指します。発行済株式数が多いほど株主数も増え、株式の管理コストもかかります。そこで、株式併合によって発行済株式数を減らします。

・株価を調整する

会社の業績は良いのに株価は低い、いわゆる「割安」の状況である場合、株価を上げるために株式併合を行います。
 

また、東証が示す「必要最低投資金額」に近づけるため、株式併合を行うこともあります。必要最低投資額とは、東証が「個人投資家が投資しやすい額」としている金額のことで、「100株で5万円以上50万円未満」を望ましい水準としています。

・スクイーズアウトに利用する

近年「スクイーズアウト」を目的とした株式併合が増えています。スクイーズアウトとは、少数株主の株式を強制的に買い取り、少数株主を追い出すことです。
 

株式併合を行って少数株主が所有する株式数を1株未満にし、その端数株を会社が買い取ることで少数株主を排除します。スクイーズアウトは、株式を経営者に集めて経営の自由度を高めたいときなどに使われます。

株式併合を行う際の注意点

企業にとってメリットがある株式併合ですが、株主・企業の双方でデメリットもあり、注意が必要です。

・【株主のデメリット】権利を失うことがある

企業が株式併合を行うことで、議決権や配当、株主優待といった株主としての権利を失うことがあります。
 

株主としての権利を行使するには、一般的に株式取引の単位である「単元株=100株」を所有する必要がありますが、株式併合によって所有する株式数が圧縮され、「株式併合前100株→併合後50株」のように単元未満株となってしまうケースがあります。
 

保有する株式の数が単元未満株になってしまうと、株主としての権利を失うだけでなく、市場での売買もできなくなります。
 

株式併合で生まれた1株未満の端株は企業によって買い取ってもらうことができますが、単元未満株も同様に買い取ってもらえます。

※近年は、配当や株主優待が受けられる単元未満株を取り扱う証券会社が増えています。ただし、そのような単元未満株でもリアルタイムでの売買はできません。
・【企業側のデメリット】購入単位が上がり株式低下の一因に

株式併合によって発行済株式数が減る一方、1株当たりの株価は上がります。株式は単元株=100株単位で売買されるため、100株を購入するための資金は、株式併合前よりも併合後のほうが多く必要になります。
 

単元株の購入ハードルが上がると投資家が手を出しにくくなり、結果的に株価の低下を招くこともあります。

まとめ

株式併合は、複数の株を一つにまとめて発行済株式数の数を減らすことです。株主の数が増えて経営の自由度が下がる懸念がある場合、保有株式数が少ない株主の排除(スクイーズアウト)を目的に行われるケースが多いです。
 

株式併合によって株主の保有資産は変わりませんが、保有する株数が減って単元未満株になったり、端株が発生したりするケースがあります。単元未満株は株主としての権利を享受できないうえ、売買も自由にできなくなります。
 

株主併合の実行に株主総会の特別決議という大きなハードルが課されているのは、株主にとって大きなデメリットをともなうからなのです。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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