M&Aの査定や価格算定はどうすべき?決定方法やポイントを解説
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M&Aの査定とは
そもそもM&Aとは
M&Aは会社や経営権の取得を指す言葉です。株式譲渡、事業譲渡、吸収や合併などの手法が用いられます。一般的にM&Aは企業規模を拡大したり、新しい事業を手に入れたりするためにおこなわれます。企業戦略の一環としてM&Aは大きな意味を持ちます。
なお、M&Aのどの手法においても重要なことが「企業の価値」です。M&Aでは金銭のやり取りが発生するため、価格算定が重要となります。
なぜ査定が重要なのか
M&Aで査定が重要視される理由は、交渉の基準となる価格が必要であるためです。M&Aを実施する際に基準となる価格がなければ、相手が提示した金額の妥当性を判断できず、交渉をスムーズに進められません。そのため、事前に査定をして、その価格を基準に交渉を進めるようにしましょう。
ただ、査定された金額はあくまでも交渉の基準に利用するだけです。最終的な売買価格は交渉で決まるため、認識に違いがないよう注意してください。
M&Aにおける価格算定の方法3つ
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、期待される収益からリスクを差し引いて企業価値を評価するものです。主要な方法が2種類あるためこれらをご説明します。
●DCF法
企業が将来的に生み出す「フリーキャッシュフロー」に注目して価格算定する方法です。将来的なキャッシュフローからリスクを差し引いて算出します。
将来的なキャッシュフローを予測する必要があるため、まずは事業計画の作成が必要です。計画に基づいてキャッシュフローを予測し、そこから一定のリスクを割合で差し引いて査定します。また、事業に用いない資産を加えたり、有利子負債を差し引いたりして最終的な価格を算定しましょう。
無形資産も含むため、キャッシュフローだけでは判断できない企業価値を算定できるメリットがあります。ただ、リスクの割合には明確な基準がなく、算出に利用する数値によって算定結果が大きく変動するデメリットもあります。
●配当還元法
将来的な配当額の期待値を算出するものです。配当は毎年同じ割合で増加すると仮定し、どの程度の価値を見出せるのかを算定します。
ただ、配当は企業側が調節できる数値です。そのため、配当方針を変更させるなどすれば、会社の価値が変動してしまいます。これでは正確な企業価値が算定できないため、積極的に利用される手法ではありません。
コストアプローチ
コストアプローチは企業が保有する資産と負債に注目して企業価値を算定する方法です。純資産を利用して算定するため、客観的な数値かつ直感的に理解しやすい特徴があります。
●簿価純資産法
企業が持つ資産と負債を、帳簿を利用して算出します。単純に帳簿を参照して、資産の合計から負債の合計を差し引いた数値が利用されます。
ただ、これは帳簿に記載されている数値のみを利用するため、企業価値を正しく反映しているとは限りません。例えば市場の評価などは反映されておらず、現在ではほとんど利用されない算定方法です。
●時価純資産法
企業の資産や負債を時価換算してから企業価値を算定するものです。簿価純資産法とは異なり時価換算しているため、企業価値を正しく算定しやすくなっています。
ただ、資産のみに注目しているため、無形資産などの価値は考慮できません。そのため、無形資産を考慮した他の算定方法と組み合わせ、複数のアプローチで算定する場合が多いです。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、他企業の価値を利用して算定する方法です。同じ規模の企業がどのような価格で売買されたかを参照し企業価値を算定します。
●類似会社比較法(マルチプル法)
価格査定の対象となる企業と類似している上場企業から算出されたマルチプル(倍率)を利用して価格算定する方法です。比較対象とする企業選びが結果を大きく左右するため、慎重な選択が求められます。
なお、査定対象が上場企業の場合は市場株価による算定が可能です。そのため、類似会社比較法は非上場企業に対して利用されます。
●類似業種比較法
単体の企業ではなく、類似する業種に属する上場企業の株価を利用して価格算定する方法です。複数の企業の株価を平均して1株あたりの配当や年間利益金額などを算出します。
ただ、こちらは税法上の公正さを意識して設けられた算定方法です。そのため、M&Aに最適化されたものではありません。
●市場株価法
上場企業の価格算定に利用される方法で、市場の株価を使用します。株価は一時的に上下する場合があるため、数ヶ月の終値の平均から算出することが一般的です。
市場価格は急騰することもあれば急落することもあります。これら一時的な要因を排除するために、市場株価法では平均値を利用します。
●類似取引比較法
類似する企業のM&A事例を参照し、その取引の成立価格を利用して価格算定する方法です。実際に成立した価格を利用するため、M&Aの相場価格などを把握できます。
ただ、類似する企業のM&A事例が見つかるケースは多くありません。対象となる事例数の少なさから、利用しにくい方法です。
M&Aの価格を決定する流れ
客観的な企業評価
まずは客観的な営業評価から始めます。譲渡側にも譲受側にも属さない第三者が企業価値を評価するのが理想的です。どちらかが評価する場合はありますが、第三者が評価することで客観性が高まります。
また、第三者が関わることで、企業価値の評価方法も信ぴょう性が高まります。譲渡側や譲受側が決定すると都合のよい評価方法を選択する可能性がありますが、第三者の決定ならば納得感を感じやすいでしょう。
もちろん、第三者に企業評価をしてもらうからといって、全く口出しできないわけではありません。何かしら意にそぐわない部分があるならば、その点は意見してもいいでしょう。
個別交渉
最終的な価格は双方の合意に基づいて決定されます。何かしらの手法を利用した価格算定は実施されますが、その金額が絶対的なものではありません。
もちろん、算定された金額が基準になることは間違いありません。譲渡側も譲受側もまずは客観的に算定された金額から交渉を開始すべきでしょう。
ただ、譲渡側は「できるだけ高く売却したい」と考え、譲受側は「できるだけ安く購入したい」と考えるものです。M&Aに限らず売買ではこのような思考が働くため、交渉を経て最終的な価格を決定します。
なお、それぞれに考え方があるため、交渉が長期化する可能性もあります。価格について意見が対立すると、どちらかが譲歩するまで交渉が続いてしまいます。また、結果的にM&Aが成立しない場合もあるため、そこは注意点として認識しておくといいでしょう。
まとめ
M&Aにおける企業の価格算定についてご説明しました。企業の価値はさまざまな手法を用いて算定可能であり、算定した価格はM&Aの基準として利用されます。
ただ、世の中には「完璧」といえる算定手法はありません。そのため、企業価値を算定する際は複数を組み合わせる場合があります。多角的に企業価値を算定し、M&Aの基準価格とします。
また、算定した価格は絶対的なものではありません。最終的な価格は譲渡側と譲受側の合意によって決定されます。価格算定をしても個別交渉が必要となるため、その点は認識しておきましょう。
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