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M&Aで使われるスクイーズアウトとは? その手法と流れを解説

M&Aで使われるスクイーズアウトとは?  その手法と流れを解説

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M&Aにおいて、売り手企業の株主の中に少数しか株式を保有していない少数株主がいる場合、買い手企業は売り手企業を100%子会社にするために「スクイーズアウト」という手法で少数株主を排除します。
この記事では、スクイーズアウトの概要やスクイーズアウトの方法についてご紹介します。

■M&Aのスクイーズアウトとは

M&Aによって買い手企業が売り手企業を子会社化する際、円滑な会社運営を考えると持ち株率は100%であることが望まれます。

 

しかし、売り手企業に支配株主(発行済み株式の過半数を保有する株主)以外にも多くの少数株主(少数しか株式を保有していない株主)がいる場合、買い手企業は売り手企業を買収しても、発行済みの全株式を取得できない状況に陥る可能性があります。

 

このような場合に、買い手企業が取る対応策として「スクイーズアウト」という方法があります。これは会社法に基づいて、少数株主を排除する方法です。本来は株主の同意を得て株式を取得しますが、スクイーズアウトの手法を取ると株主の同意は必要ありません。つまり、スクイーズアウトを行うことで、買い手企業は売り手企業の株式を100%取得できます。

 

また、スクイーズアウトによって売り手企業を完全子会社化すると、連結納税制度を適応して損益通算が可能になります。

 

なお、スクイーズアウトはM&A以外に、事業承継や上場企業による上場子会社の完全子会社化などの場面でも用いられます。事業承継で用いられる場合、相続などで親族内に分散している株式を集約し、後継者に全株主を渡すことができます。

 

■M&Aスクイーズアウトの4つの手法

少数株主の同意を得ずに全株式を取得する「スクイーズアウト」には、具体的に4つの手法があります。

・株式等売渡請求

総株主の議決権の90%以上を保有する「特別支配株主」が、ほかの株主に対して株式を自分に売るよう請求することを「株式等売渡請求」といいます。取締役会決議(取締役会がない場合は過半数の取締役の合意)で特別支配株主の請求が認められると、株主総会における決議を経なくてもスクイーズアウトを行うことができます。

・株式併合

複数の株式を合わせて1株に統合することを「株式併合」といいます。発行済み株式の株数を数字の上で減らして少数株主を排除する方法で、株主総会の特別決議で可決されると実行可能です。

 

たとえば、100株を1株とする株式併合を行うと100株未満の株数は1株未満となり、株式としての効力を失い、スクイーズアウトが実現します。1株未満の株式を所有していても、議決権や優待を受けられなくなります。1株未満の株式は会社がまとめて買い取り、その対価を株主で持ち分に応じて配分します。

・全部取得条項付種類株式

株式会社は一般的な「普通株式」のほかに、定款の規定によって普通株式とは異なる内容の株式を発行することができます。これを「種類株式」といい「全部取得条項付種類株式」も種類株式の一種です。全部取得条項付種類株式は、すべての全部取得条項付種類株式を会社が取得することができる株式です。

 

会社が全部取得条項付種類株式を発行する際も、取得する際も株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。

 

発行済みの全株式を全部取得条項付種類株式に変更し、会社が全株主から全部取得条項付株式を取得し、対価を普通株主で払います。その際、少数株主に渡される株式が1株未満になるように比率を工夫します。こうしてスクイーズアウトが実現します。1株未満の株式は、株式併合の時と同様に会社がまとめて買い取ります。

・現金対価株式交換

会社Aの株主が保有している株式を、会社Bの株式に交換することを「株式交換」といいます。これはAをBの100%子会社にする際に用いる方法です。Aの株主はBの株式を所有することになりますが、さらにBの株式合併を行い、少数株主の保有株式を1株未満にします。

 

株式交換を行うには、双方の会社において株式総会の特別決議で承認を得る必要があります。株式交換では、Aの株式とBの株式を交換しましたが、Aの株式を現金と交換する方法もあります。これを「現金対価株式交換」といいます。

 

上記の4つの方法のうち、全部取得条項付種類株式を用いる方法は現在、あまり利用されていません。かつてはスクイーズアウトといえばこの方法を使うのが主流でしたが、手続きが複雑で時間もかかるのが難点でした。

 

このような中、2014年に会社法改正が行われ、株式等売渡請求制度が創設されたり、株式併合に関連して少数株主を保護する制度が整備されたりしました。現在、スクイーズアウトを行う際、買い手企業がすでに売り手企業の議決権の90%以上を保有している場合は株式等売渡請求、そうでない場合は株式併合が用いられることが多いです。

 

■M&Aスクイーズアウトの手順(株式併合)

ここでは、株式併合を使ったスクイーズアウトの手順について紹介します。

 

スクイーズアウトに株式併合を使うとよいのは、買い手企業が保有している売り手企業の株式が、決議権の3分の2(約67%)以上である場合です。決議権の3分の2以上が必要となるのは、株式併合を行うには株主総会の特別決議での承認が必要となるからです。特別決議で承認を得るには、総株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得なければなりません。

 

それでは、株式併合を行う企業(売り手企業)の動きを見てみましょう。

 

①取締役会で株式併合を決議する
株式併合を行う企業に取締役会がある場合は、取締役会を開いて株式併合と株主総会の招集を決議します。

 

②株式併合に関する資料の備置
株式併合が決議されたら、株式併合に関する資料を会社の本店に事前開示書類を備え置きます。「株式併合に関する資料」とは、株式併合の概要や最終年度の貸借対照表などを指します。

 

備え置く期間は、書類の開示を株主に通知・公告した日か、株主総会の2週間前のいずれか早い日から数えて6か月間です。

 

③株主総会の招集通知発送
株主総会の2週間前までに、株式併合を行う企業は株主総会の招集通知を株主に送付します。

 

④株主総会の実施と株式併合の承認
株主総会の特別決議に議決権を持つ過半数の株主が出席し、議決権の2/3以上の賛成を得られると決議されます。株式併合では、株式併合の効力発生日や何株を1つにまとめるのかといったことなどについて、承認を得る必要があります。

 

⑤株主への個別通知
株式併合が承認されたら、株式併合の概要や合併によって1株未満になる「端株(はかぶ)」の買い取り、端株の買取価格などをすべての株主に書面で通知します。

 

⑥株式併合の効力発生
効力発生日を迎えたら、株式併合を行う会社は少数株主から端株となった株式を買い取り、対価を支払うなど株式併合に関する手続きを行います。

 

⑦株式併合に関する事後開示書類の備置・開示
効力発生日から6か月間は、株式併合を行った企業の本店に株式合併の内容などを記載した事後開示書類を置き、株主が閲覧できるようにしなければなりません。

 

■まとめ

M&Aでは買い手企業が売り手企業を100%子会社にするため、少数株主を排除するスクイーズアウトを行います。買い手企業は売り手企業の少数株主を排除するため、少数株主が所有する株式を端株にして取得し、その対価を渡しますが、買取価額をめぐって合意に至らないケースもあります。

 

ケーブルテレビ事業などを行うジュピターテレコムや、外食産業を手がけるレックス・ホールディングスはスクイーズアウトの過程で少数株主から株式を買い取りますが、その価額が安すぎると少数株主から裁判を起こされました。

 

スクイーズアウトを行うには、少数株主の理解をいかに得られるかがカギを握っています。スクイーズアウトを考えておられる場合は、M&Aの知識と経験が豊富な専門家に十分相談しましょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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