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【完全解説】事業譲渡の流れから メリット・デメリットまで
更新日:
■事業譲渡とは
事業承継との違い
事業譲渡とは、会社の一部または全部の事業を第三者に売却することです。
「事業」とは単に個々の資産や取引の寄せ集めではなく、その事業について必要な要素が緊密に関連しながら、全体が形成されるものです。したがって、事業譲渡における譲渡対象には、目に見える資産・負債はもちろん、営業権などの無形資産、人材なども引継ぎの対象となります。事業譲渡は取引行為に該当し、合併、会社分割などの組織再編行為とは異なります。
一方、事業承継とは現在の経営者が、後継者に対して自社の株式やその他の財産を承継させることを言います。事業承継の方法は、①親族内承継、②従業員等への承継、③M&Aの3種類に分類されます。
事業承継は事業譲渡よりも広い意味であり、事業承継の一つの方法として、M&A(事業譲渡)が含まれるという点で言葉の定義が異なっています。
■事業譲渡のメリット・デメリット
譲渡側のメリット
事業譲渡を用いることで譲渡側には、以下のメリットがあります。
- ノンコア事業のみを切り出せる
- 事業譲渡によって得た資金を他の事業に投資できる
事業譲渡は、複数事業を行っている会社において、一つの事業だけを切り出して売却できます。例えば、本業のA事業、ノンコア事業のB事業の2種類がある場合、ノンコア事業のB事業を第三者に売却し、そのお金を本業のA事業に回すことが可能になります。
譲り受け側のメリット
事業譲渡を用いることで譲り受け側には、以下のメリットがあります。
- 欲しい事業を選択することができる
- 必要な資産のみを引き継げる
- のれんの損金算入が可能
株式譲渡と比べて、買い手にとって必要な資産のみを譲渡対象とすることができます。また、事業譲渡において発生したのれん(営業権)は、税務上5年の定額償却が求められ損金算入することができる点もメリットに挙げられます。
譲渡側のデメリット
事業譲渡を用いることで譲渡側には以下のデメリットがあります。
- 譲渡事業の財務数値が必要
- 売却後は、当該事業から得られるキャッシュフローを享受できなくなる
事業譲渡を行う上で、対象事業のみのPL数字は投資判断に必要となります。事業部ごとの損益を把握していない場合には、会社全体の財務諸表の他、対象事業のみを切り出した財務諸表を作成しておく必要があります。
譲り受け側のデメリット
事業譲渡を用いることで、譲り受け側には以下のデメリットがあります。
- 資産・負債の承継を個別に実施する必要がある
- 消費税の負担が生じる
株式譲渡と異なり、事業譲渡の場合、資産・負債の承継を個別に実施していく必要があり、対象資産が多い場合には引継ぎに時間がかかってしまいます。
また、事業譲渡で取得した資産については、消費税の課税資産と非課税資産を区分しなければなりません。事業譲渡において発生した営業権をはじめ課税資産については、消費税の対象となる点は留意が必要です。
なお、消費税以外においても、譲渡側においては、事業譲渡にかかる損益は法人税や所得税の対象となります。法人税においては繰越控除等が、所得税においてはさらに損益通算も可能です。
譲り受け側においては、資産によっては不動産取得税や登録免許税などが発生する場合もあります。
■妥当な譲渡金額はどのように決める?
事業譲渡の金額は買い手と売り手の交渉によって決まりますが、妥当な金額は以下の計算方法により計算します。
- DCF法
- マルチプル法
- 修正純資産法
- 年買法
DCF法は事業譲渡から得られる将来キャッシュフローを割り引くことにより現在価値を計算する手法です。マルチプル法は類似した上場企業の評価倍率を元に評価額を求めます。修正純資産法は資産・負債を時価評価した金額、年買法は対象事業の営業利益×●年分+純資産と計算する方法です。
実務上、どの計算方法を利用しなければいけないといった決まりごとはありません。状況に応じて適切な手法を選択する必要があります。
■事業譲渡の流れ
STEP1 ソーシング
事業譲渡の最初のステップは、交渉相手を探すことです。探し方は以下のような手法があります。
- M&A仲介会社やFAへの相談
- M&Aマッチングサイトへの登録
- 専門家などからの紹介
- 直接アプローチ
費用や探すのにかかる時間、リスクなど、メリット・デメリットを比較検討の上、どのように交渉相手を探すのかを決定します。
STEP2 交渉
具体的な交渉相手が決まった後は、事業譲渡の基本的な条件のすり合わせを行います。譲渡対象資産、金額、おおよそのスケジュールなど事業譲渡の重要な部分において両者の合意を得た後、基本合意書を締結します。
基本合意書の締結後は、買い手はデューデリジェンスを実施し、契約書の交渉を行います。
STEP3 機関決定
事業譲渡契約書の締結のためには、譲渡企業における株主総会の特別決議または取締役会決議が必要です。株主総会の特別決議が必要な場合は、売り手の事業全てを売却される場合や譲渡する事業の重要性が高い場合に限られます。
譲り受け企業においては、取締役会設置会社であれば取締役会決議により事業譲渡を承認します。
STEP4 事業譲渡契約書の締結
両者の機関決定後、事業譲渡契約書を締結します。事業譲渡契約書に記載される主な内容は以下の通りです。
- 譲渡対象資産・負債の一覧
- 譲渡金額
- 譲渡実行日
- 実行の前提条件、表明保証、補償、義務、などM&A全般にかかわる条文
STEP5 譲渡実行
契約書に記載された譲渡実行日に、譲渡企業は資産・負債の受け渡しを、譲り受け企業は譲渡金額の支払を実行します。譲渡実行後、名義変更が必要な資産・負債については必要な諸手続を実施する必要があります。また、実行の前に、許認可等が必要な場合は、譲渡実行前に取得しておくことが求められます。
■事業譲渡を見据えた上で用意しておくもの
将来的に事業譲渡を実施する可能性がある場合、事前に用意しておくべき事項は以下の通り2点あります。
- 事業部別の財務数値の準備
- 専門家との繋がり
- 事業譲渡の相場感など、事業譲渡に関する知識を深めておく
事業譲渡を行う場合には、事業部別の貸借対照表、損益計算書が必要です。いざ、事業譲渡を進めるとなってから作成を始めるのでは、事業譲渡のプロジェクトが始まるまでに時間がかかってしまいます。
また、事業譲渡を成功させる上では、専門家との繋がりを前もって作っておき、いつでも動ける体制を作っておくことが大切です。
安値での売却を避ける、不利な契約を締結しないなど、事業譲渡に関する知識を付けておくことも重要です。
■まとめ
事業譲渡は、M&Aのスキームの一つで株式譲渡と並んでよく利用されています。株式譲渡と異なり、譲渡対象となる資産・負債を個々に列挙する必要があり、譲渡実行時には、それぞれ個別に譲渡側から譲り受け側に承継していく手続が必要です。
税務においても、譲渡資産に課税対象となる資産が含まれていれば消費税も考慮しなければならず、当然に法人税または所得税についての深い知識が必要です。また、交渉相手を探すのは、なかなか自社だけで実施することは難しい面があります。
そのため、事業譲渡を成功させるためには、ソーシング、交渉、契約などに関しては専門家に依頼することがおすすめです。事業譲渡に詳しいプロフェッショナルに相談することで、自社では難しい部分を進めてもらえます。
M&Aに関する相談は初回は無料であることも多いため、M&Aに詳しい専門家を比較検討のうえ、早めに相談するようにしましょう。
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