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事業承継には事業承継補助金の利用も考えよう! 制度の内容と手続方法

事業承継には事業承継補助金の利用も考えよう! 制度の内容と手続方法

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後継者不足を解消する方法として、事業承継が注目を集めています。事業承継によって事業を引き受けた側を支援するために、中小企業庁では事業承継補助金を交付しており、補助対象事業の経費について、最大2/3の補助を受けることができます。
この記事では、事業承継補助金の制度と手続きについて説明します。

■事業承継補助金とはどんなもの

事業承継補助金とは、事業承継やM&Aをきっかけに事業転換や経営革新などに取り組む中小企業者を対象に、取り組みに必要な経費を中小企業庁が支援する補助金です。2017(平成29)年度から毎年、補助金を希望する事業者を募っており、2020(令和2)年も3月31日~6月5日まで公募が行われました。

2020年10月現在、中小企業庁は概算要求に事業承継補助金を盛り込んでおり、2021年も事業承継補助金の公募は行われる見込みです。2020年の公募要領を参考に、事業承継補助金の制度について見ていきましょう。

事業承継補助金を申請できる事業者には、次の要件を満たす必要があります。

補助対象者の要件

「日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者」「地域経済に貢献している中小業企業者等であること」などの条件を満たす中小企業者等であること(「中小企業者等」の定義は中小企業基本法第2条に準ずる)。事業承継によって事業を引き継いだ者(承継者)が対象となります。

対象となる事業承継の期間

2020年の公募要項では「2017年4月1日から補助対象事業期間完了日(または2020年12月31日のいずれか早い日)まで」に、事業の引き継ぎ(M&Aなども含む)が行われる必要があります。
また、申請時点で事業承継が完了していない場合、承継者の代表者は「対象企業の役員として3年以上の経験を有する者」「個人事業主として3年以上の経験を有する者」などの条件のうち、いずれか満たしている必要があります。
2021年の対象となる事業承継期間については、要項が発表されたときに確認してください。

対象となる事業

事業承継やM&Aなどをきっかけに、承継者が行う事業に伴う経費が補助対象です。対象事業は補助金の交付決定日から2020年12月31日までに行う必要があり、交付決定日以前に発生した経費は対象外です。

具体的には「新商品や新サービスを開発または生産・提供する」「商品やサービスの生産・販売・提供について新たな方法を導入する」「事業転換による新分野への進出」などを指します。経費の詳細については後述します。

■2つの事業承継補助金制度

事業承継補助金制度には、事業承継の形態により次の2つがあります。

  • Ⅰ型:後継者承継支援型(経営者交代タイプ)
  • Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型(M&Aタイプ)

 
上記いずれかの当てはまるほうに申請することになります。それぞれどのような形態になるかは、別項で解説します。

事業承継補助金制度の対象となる経費

先ほど、この補助金は「事業承継をきっかけに承継者が行う経営革新などの取組」が対象であり、取組を行うにあたってかかった経費の一部を補助するものと述べました。ここでは、対象となる経費について、解説します(Ⅰ型、Ⅱ型共通です)。

対象となる経費は、以下のようなものです。

  • 【事業費】人件費、店舗等借入費、設備費、原材料費、知的財産権等関連経費など
  • 【廃業費】廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費など

 
新たな商品やサービスを生み出すための事業費に加え、経営革新に伴う既存事業の廃止などにかかる廃業費も対象となっているのが大きな特徴です。詳細は2020年の公募要項でご確認ください。

2つの事業承継補助金制度の内容

Ⅰ型:後継者承継支援型(経営者交代タイプ)とⅡ型:事業再編・事業統合支援型(M&Aタイプ)でそれぞれ補助上限額が異なります。

  • Ⅰ型…事業承継を行う個人および中小企業などが対象(法人が承継者である場合、事業譲渡や株式譲渡などによる承継は対象外)。
  • Ⅱ型…事業再編・事業統合などを行う中小企業などが対象(後継者不在により、事業再編・事業統合などを行わなければ、事業継続が困難になる見込みの者に限る)。

 
補助上限額は以下のとおりです。

タイプ 枠組み 補助率 補助上限額
Ⅰ型 原則枠 1/2以内 225万円
Ⅱ型 原則枠 1/2以内 450万円

Ⅰ・Ⅱ型ともに、原則は対象となる経費の2分の1以内であり、上限額も設定されています。補助金は対象となる事業が完了後、精算後に実費で支払われます。

なお、事業転換による廃業を伴う経費がある場合は、補助上限額が引き上げられます。上乗せ額はⅠ型で+225万円以内、Ⅱ型で+450万円以内となり、それぞれ補助上限額が倍増します。

さらに「ベンチャー型事業承継枠」「生産性向上枠」の要件を満たす申請は、Ⅰ・Ⅱ型ともに補助率・補助上限額が引き上げられます。ベンチャー型事業承継枠、生産性向上枠の要件は2020年の公募要項でご確認ください。

タイプ 枠組み 補助率 補助上限額
Ⅰ型 ・ベンチャー型事業承継枠
・生産性向上枠
2/3以内 300万円
Ⅱ型 ・ベンチャー型事業承継枠
・生産性向上枠
2/3以内 600万円

この場合も、廃業を伴う経費がある場合は、補助上限額が引き上げられます。上乗せ額はⅠ型で+300万円以内、Ⅱ型で+600万円以内となります。

■事業承継補助金の手続方法

事業承継補助金の交付を受けるまでには、書類の準備に始まり、いくつもの手順を踏むことになります。ここでは、その概要を説明します。

事業承継補助金の手続手順

事業承継補助金の交付を受けるまでの流れは、次のとおりです。

①必要書類の準備

承継者、被承継者それぞれ必要書類(後述)を揃える。

②申請

原則、電子申請で行う。「gBizIDプライム」のアカウントが必要となるので、取得していない場合はgBizIDのホームページより、gBizIDプライムの申請を行う。
申請マイページを開設。マイページ内のフォームに必要事項を入力し、必要書類のファイルを添付する。

③補助金事務局による審査、交付決定
④補助事業の実施

交付決定後、実績を報告するまでに必要書類を提出する。

※詳細は2020年の公募要項でご確認ください。

補助事業を実行する期間中、遂行状況を事務局に提出する。

⑤事業の完了報告

補助事業完了後、30日以内に実績報告書を提出する。

⑥補助金事務局による確定検査、補助金の金額確定

事務局が事業内容を検査、経費内容を確認し、補助金の額を確定する。

⑦補助金の受取

実績報告書の提出から補助金を受け取るまで、2~3か月程度要する。

事業承継補助金の交付申請に必要な書類

事業承継補助金の交付を申請するとき、さまざまな書類が必要になります。書類は申請マイページからPDF形式のファイルで添付します。

【承継者】
  • 「認定経営革新等支援機関による確認書」

事業承継補助金ホームページより書式をダウンロードし、「認定経営革新等支援機関」に作成、押印してもらいます。認定経営革新等支援機関は各都道府県の税理士や金融機関などが認定されており、中小企業庁のホームページから調べることができます。

【法人の代表または個人事業主】
  • 「住民票(法人の代表または個人事業主)」
【法人の場合(承継者・被承継者)】
  • 「履歴事項全部証明書」
  • 「確定申告書別表一、二、四(税務署受付印のある直近のもの)」
  • 「確定申告書の基となる決算書」
※設立前、または設立初年度の場合は別途必要書類あり
※被承継者の確定申告と決算書は、承継前の経営が反映された年度分を提出
【個人事業主の場合】
  • 「確定申告書B第一表、二表と所得税青色申告決算書(税務署受付印のある直近のもの)」
※開業前、または開業初年度の場合は別途必要書類あり
※被承継者の確定申告書Bと所得税青色申告決算書は、承継前の経営が反映された年度分を提出

■まとめ

事業承継補助金を交付申請する際、認定経営革新等支援機関による確認が必要となるため、専門家にアドバイスを受けながら進めることになります。また、電子申請が原則であるため、「gBizIDプライム」のアカウントを取得する必要があり、時間がかかります。
2021年の事業承継補助金を交付申請に関心を持たれた場合は、今から専門家に相談したり、下調べをしたりすることをおすすめします。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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