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黒字でも廃業する企業は多い!黒字廃業の現状とM&Aの活用方法

黒字でも廃業する企業は多い!黒字廃業の現状とM&Aの活用方法

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黒字廃業の概要と現状

はじめに、黒字廃業の概要とその背景、および現状について見てみましょう。

そもそも黒字廃業とは

「廃業」とは、経営者が自主的に自社の事業を終わらせることです。つまり「黒字廃業」とは、会社の業績が黒字であるにもかかわらず、経営者が自主的に事業を継続しないことを指します。
 

廃業と混同しやすい表現に「倒産」がありますが、倒産は債務を支払えずに事業を終了せざるを得ないことを指します。
 

黒字にもかかわらず、経営者が自主的に会社をたたむ黒字廃業の背景には、経営者の高齢化と後継者不足があります。2016年、日本政策金融公庫総合研究所が全国約4,000社の中小企業経営者に行ったアンケートによると、60歳以上の経営者の約50%が廃業を予定していると答えました。その理由として約3割が「後継者がいないこと」を理由に挙げています。
 

後継者候補の決定から育成、事業の引き継ぎまでには5〜10年の時間が必要といわれています。株式会社東京商工リサーチの2021年「休廃業・解散企業動向調査」によると、休廃業企業の経営者の平均年齢は71.0歳で、遅くとも経営者が60代のうちから後継者の決定・育成を進めなければ間に合わないことがわかります。

会社が黒字廃業している現状とは

(株)東京商工リサーチの「休廃業・解散企業動向調査」によると、2021年の休廃業企業は4万4,377件にのぼり、2000年の調査開始以来、過去最多を記録した2021年の4万9,698件よりも1割強減りました。コロナ禍でさまざまな支援策が実施され、休廃業を免れた企業もあったと考えられます。
 

しかし、休廃業企業のうち、休廃業の直前期の決算が黒字であった割合を見ると、56.5%(約2万5,000件)でした。調査開始以来、2001年までは黒字率が70%あり、その後は下降したものの2020年までは60%台前半で推移していました。2021年に初めて60%を割りこんだ原因として、コロナ禍による経営環境の急激な悪化が考えられます。
 

このことから、現在は「休廃業企業の多くが黒字廃業」とは必ずしもいえない状況になっており、今後は休廃業企業の「黒字率」が減少する可能性があります。

黒字廃業をしないほうが良い理由

財務的には事業継続ができるにもかかわらず、自主的に事業を停止する「黒字廃業」は、大きく2つのデメリットがあります。

・多くの人に迷惑がかかる
・資産の価値が減少し、コストがかかる
 

それぞれのデメリットについて詳しく説明します。

多くの人に迷惑がかかる

黒字廃業をすると、その企業に関わっている「従業員」「取引先」「顧客」に多大な迷惑をかけてしまいます。
 

●従業員
企業がなくなるということは、従業員の働く場所がなくなることを意味します。失業は当然、従業員の生活に支障をきたします。黒字廃業後、従業員が困らないように経営者には以下のような配慮が必要です。

  • ・廃業時期をあらかじめ従業員に告知し、十分な就職活動期間を与える
  • ・十分な退職金を用意する
  • ・再就職先を斡旋する

 

●取引先
ひとつの企業が廃業すると、取引先の経営状況にも影響を与えます。たとえば、黒字廃業する企業がメーカーなら、メーカーに原材料を販売している取引先企業は売上が減少してしまいます。さらに、取引先が黒字廃業の企業に大きく依存していると、連鎖倒産を招くリスクもあります。
 

●顧客
黒字廃業する企業の製品やサービスを利用する顧客にとって、その企業がなくなることは製品やサービスが手に入らなくなることを意味します。企業が生み出している製品やサービスによっては、顧客に大きな損失をもたらすものもあります。

資産の価値の減少やコストなどがかかる

廃業が決まると、生産設備などの事業用資産を売却しますが、事業を停止すると資産の売却先を見つけるのが難しくなったり、資産の簿価が下がることが多かったりするため、価値が下がってしまいます。また、賃貸物件から退去する場合の原状回復費用や、売却できないものの処分費用など、廃業にともなってコストがかかるケースがあります。
 

加えて、資産の譲渡益や経営者の債務免除益などによって利益が出ると、法人税が発生します。
 

業績は黒字なのに、廃業をするためにコストがかかってしまうようでは、黒字廃業はデメリットが多いといわざるを得ません。

黒字廃業を避けるためには

黒字廃業は企業と関わりのある人々に迷惑をかけ、コストもかかります。「経営者が高齢で、身近な人の中に後継者もいないから」という理由で黒字廃業を考える前に、黒字廃業を避ける方法を考えましょう。

黒字廃業を避けるためには後継者探しが重要

後継者がいれば、会社を引き継ぐことができます。後継者を選ぶ方法には以下のような3つの方法があります。
 

●親族から選ぶ
かつて多くの中小企業では、後継者を親族から選んでいました。特に経営者の子どもが後継者になっていました。
 

しかし、先に述べたように、休廃業した経営者の約3割が「後継者がいない」と答えています。具体的には、以下のような意見が挙がっています。

  • ・子どもはいるが継ぐ意思がない
  • ・子どもがいない
  • ・適当な後継者が見つからない

現在、子どもに継ぐ意思がなければ無理に継がせないと考えている経営者が多いようです。そこで、親族から後継者を選ぶ場合は子どもにこだわらず、一緒に働いている親族や子どもの配偶者にまで範囲を広げて探します。
 

●親族外から後継者を選ぶ
少子化が進む今、子どもがいない経営者も少なくありません。そんなときは、従業員の中から経営者の素質がありそうな人に後を託します。従業員は企業のことをよく理解しているため、親族の中から後継者を選ぶよりも後継者教育の期間が短くて済みますが、自社株などを前経営者から引き継ぐ際に資金力不足が問題になることもあります。
 

●M&A
M&Aとは経営者と関係のない第三者が企業を買収し、経営権が第三者に渡ることです。以下のような方法で行われることが多いです。

  • ・株式譲渡…自社の株式を第三者に譲渡する
  • ・事業譲渡…事業に必要な設備や知的財産などを譲渡する

親族や従業員などの中から後継者としてふさわしい人が見つからない場合は、M&Aを検討してみましょう。

黒字廃業を避けるためにM&Aを利用するメリット・デメリット

黒字廃業を回避する方法としてのM&Aには、さまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。
 

●メリット
後継者問題が解決するほか、従業員の雇用や取引先・金融機関との関係を維持できる点も大きなメリットです。また、企業が培ったブランドやノウハウなどの知的財産を残せます。

さらに、M&Aによって経営権を譲渡した経営者は、売却益を得るため、そのお金を老後資金に充てることもできます。
 

●デメリット
譲渡先を探す際、M&Aに詳しい弁護士や税理士、M&A仲介会社、公的支援機関などが間に入りますが、すぐに買い手候補が見つからないこともあります。専門家や仲介会社に依頼する場合は、仲介費用も発生します。

また、メリットで述べた「従業員の雇用や取引先・金融機関との関係の維持」についても、新たな経営者の意向によって状況が変わる可能性もあります。

まとめ

業績がよいにもかかわらず、廃業する「黒字廃業」の背景には、経営者の高齢化と後継者不足があります。黒字廃業は従業員をはじめ、企業に関わりのある各方面に多大なダメージを与え、コストもかかります。
 

黒字廃業を食い止める方法として、近年増えているのがM&Aによる事業承継です。第三者に経営を委ねることで、従業員や取引先などが守られるほか、企業が培ってきた有形無形の財産を残すこともできます。黒字廃業を考えておられる経営者の方は、M&Aも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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