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法人を休眠会社にする?売却する? ケース別の税金と注意点について
更新日:
■手間をかけずに会社をやめる方法
法人を一口にやめるといっても廃業する場合、手間やコストがかかります。債務超過で自己資本がマイナスの場合、破産手続きでしか廃業することができません。また、会社を消滅させたくないという気持ちもあるでしょう。そこで、会社を消滅させず、手間やコストが少なくて済む方法について紹介します。
会社を休眠させる方法
休眠会社とは、一般的には長期間事業活動をしていない会社のことを指します。税務署や市区町村に「休業届(異動届)」を提出したり、年金事務所に「適用事業所全喪届」や「被保険者資格喪失届」を提出したりします。
なお、法律上の休眠会社は以下のとおりです。
「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したものをいう(会社法472条1項)」
会社を他人に売却する方法
休眠会社にしないで完全に事業をやめる場合、会社を他人に売却する方法があります。「株式譲渡」と「事業譲渡」のいずれかです。
- 株式譲渡:オーナーの所有している株式を売却し、会社の経営権と全財産を売却する方法
- 事業譲渡:会社の事業に必要な従業員、資産、取引先などの一部または全部をチョイスして売却する方法
2つの売却方法のメリット・デメリットはさまざまですが、完全に事業をやめる場合、許認可が引き継げる「株式譲渡」のほうが優れています。「事業譲渡」の場合、買い手に、売却する会社の許認可までは引き継げません。
■休眠会社と会社売却(株式譲渡)にかかる税金
休眠会社と株式譲渡による会社売却では、課税される税金は大きく異なります。それでは、会社経営のやめかた別に税金について説明します。
休眠会社にかかる税金
休眠会社は法人税、消費税、社会保険料など事業活動に伴う税金は課税されませんが、休業中でも納める税金があり、おもに次のとおりになります。
(1)登録免許税
株式会社の場合、法律上の取締役の任期が最長10年のため、休眠会社でも任期終了後の役員変更登記に伴う登録免許税が発生します。税額は資本金に応じて次のとおりになります。
- 資本金1億円以下:1件あたり1万円
- 資本金1億円超:1件あたり3万円
(2)法人住民税の均等割
均等割は所在する事業所に対して課税する税金です。そのため、基本的に休眠会社でも納付しなけばなりません。しかし、均等割が免除されたり、減額されたりする自治体もあります。たとえば、岐阜市の場合、6ヵ月以上休業している休眠会社に対して均等割の50%相当額が減額されます。会社が所在する都道府県や市区町村への問い合わせをおすすめします。
(3)事業再開後に青色欠損金が利用できる
そもそも休眠会社は、累積赤字を計上している傾向にあります。そのため、事業再開後に青色欠損金という累積赤字を翌年度以降の損金に算入できる制度が利用できます。利用条件は次のとおりです。
①赤字を計上した年度に青色申告法人であること
青色欠損金とは、青色申告により申告した赤字額のことを指します。そのため、青色申告が取り消されると青色欠損金が利用できなくなってしまいます。
②赤字を計上した年度から10年以内に利用すること
青色欠損金の繰り越せる期間は次のとおりです。
- 平成30年3月31日以前に開始する年度:9年
- 平成30年4月1日以後に開始する年度:10年
そのため、休眠会社になってから事業再開するまでの期間が最長10年を過ぎると青色欠損金は利用できなくなります。
株式譲渡による会社売却にかかる税金
そもそも株式譲渡は個人と法人という人格を軸に4パターンに区分できます。
売り手 | 買い手 |
---|---|
個人 | 個人 |
個人 | 法人 |
法人 | 個人 |
法人 | 法人 |
ここでは、中小企業に多い、売り手と買い手がともに個人であるケースについて見ていきましょう。
個人の株式譲渡は譲渡所得の対象となり、売却益に対して一律20%(所得税15%、住民税5%)が課税されます。
例)取得価額1,000万円の株式を時価2,000万円で売却した場合
- 売却益:売却価格2,000万円-取得価額1,000万円=1,000万円
- 所得税・住民税:売却益1,000万円×税率20%=200万円
中小企業のような非上場株式の場合、基本的に時価という現在価値を把握する必要があります。時価と実際の売却価格の差額によって、売却益以外にも贈与税が課税される可能性があるためです。時価の算定方法など詳細は税理士への相談をおすすめします。
■休眠会社と株式譲渡、それぞれの注意点
休眠会社または株式譲渡をする際の注意点について見ていきましょう。
休眠会社にする際の注意点
休眠会社にする際には、事業を再開するにしても、また、会社を売却する場合においてもそうですが、対外的な信用を低下させないことがポイントになります。おもな注意点は次のとおりです。
(1)税務署への申告は必要
会社が存在している以上、法人税が課税されなくても税務署への申告が必要になります。2期連続して提出期限を過ぎて申告した場合、青色申告が取り消されてしまいます。たとえば、令和元年度、令和2年度の2期分を提出期限までに申告をしなかったとします。この場合、令和2年度から青色申告が取り消されます。
(2)役員変更登記をする
株式会社の場合、12年間登記をしないと前述の法律上の休眠会社となり、「みなし解散」と整理作業の対象になってしまいます。法務大臣の公告・通知から2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出または役員変更登記をしないと、登記官が職権により解散登記をします。
(3)借入金の返済をきちんとする
債務の返済を滞らせると、事業再開後の融資の引き出しに不利になってしまいます。法人が金融機関に借入金を返済できないのはもちろん、代表者個人が借入金返済やクレジットカード引き落としができずに信用情報機関に履歴が残るのも信用低下につながります。
他人に株式譲渡をする際の注意点
株式譲渡のポイントはいかに有利な形で会社経営をやめるかどうかに尽きます。後継者がいる・いないによってやり方が変わってきます。
(1)後継者がいない場合
オーナーが所有している株式をいかに高く売るのかがポイントになります。そのためには、自社の価値を高めて、買い手側にメリットを与える必要があります。価値の高め方については専門家に事前相談をおすすめします。
(2)後継者がいる場合
オーナーの考え方によって「できるだけ高く売る」または「後継者が買い取りやすくするために株式の時価を下げる」のいずれかを選択することになります。
上記(1)と(2)の土台として、オーナー自身の株式の保有比率を高める必要があります。保有比率が50%未満など低すぎる場合、買い手がオーナーの株式をすべて買い取っても経営権を行使しづらいためです。
■まとめ
会社をやめるにしても休眠会社と株式譲渡では、税金面や手続き方法が違うため、自社の状況に応じていずれかの方法が適切かどうかが決まってきます。そのため、休眠会社と株式譲渡のメリット・デメリットを比較したうえで、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
▼参考URL
- https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shomei/houjin/02a_32-2a.pdf
- https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150407.html
- https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20150407-02.html
- https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#3437(会社法472条1項)
- https://www.city.gifu.lg.jp/item/5738.htm
- https://www1.g-reiki.net/gifu/reiki_honbun/i700RG00000205.html(市民税の減免 第1条)
- http://www.moj.go.jp/MINJI/minji92.html#10
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4423.htm
- https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm
- http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html
- http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00082.html
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