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事業承継と廃業はどちらが良い?違いやメリット・デメリットを解説

事業承継と廃業はどちらが良い?違いやメリット・デメリットを解説

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高齢や後継者不在、会社の将来性…経営者が会社の経営から退くことを考える理由はさまざまです。経営からの引退する際、具体的には会社の経営権を誰かに譲渡する「事業承継」か、企業活動を停止する「廃業」のどちらかを選ぶことになります。
  ここでは、事業承継と廃業のメリット・デメリットを解説します。

事業承継と廃業の違い

経営者が会社の経営から退くとき、後継者に会社を託す「事業承継」か、会社をたたむ「廃業」を選ぶことになります。まずは、それぞれの意味を理解しておきましょう。

事業承継とは会社を継がせること

事業承継とは、会社の経営権を後継者に譲り、跡を継がせることです。誰が後継者になるかによって、次の3タイプに分かれます。

・親族内事業承継

子どもをはじめとする親族に継がせる形態です。かつて、いちばん多かった事業承継のタイプですが、近年は減りつつあります。
跡を継がせることができる子どもなどがいない、あるいは「子どもはいるが跡を継ぐ意思がない、または継がせたくない」というケースが増えているからです。

・親族外事業承継

親族以外で、会社の従業員など会社に縁のある人に事業承継する形態です。親族外事業承継では、後継者が経営者からの株式買取資金を用意できるかが問題になります。また、経営者の親族から反感を買う可能性も考慮しなければなりません。

・第三者への事業承継(M&A)

M&Aとは「合併と買収」のことです。M&Aによって、経営者の親族や会社関係者以外の人物を後継者にすることが、事業承継の形態として近年増加しています。
 

(株)帝国データバンクが調査した、事業承継における新社長の就任経緯を2017年と2021年10月時点で比較すると、以下のようになります。

2017年 2011年(10月まで)
親族内 41.6% 38.3%
親族外(内部昇格) 31.1% 31.7%
外部招聘(M&A以外) 7.4% 7.6%
M&A 15.9% 17.4%

親族内での事業承継が減少し、親族外やM&Aの形態が増加していることがわかります。

廃業とは自ら会社を清算すること

「廃業」は経営者の判断で法人格を消滅させ、事業を辞めることです。似た言葉として「倒産」がありますが、倒産は債務が履行できず会社が経営できなくなる意味です。
 

廃業は会社の経営状態と関係なく行われるため、黒字経営であっても起こり得ます。

会社が廃業になる原因とは

(株)東京商工リサーチの調査によると、2021年の休廃業・解散企業件数は4万4,377件、そのうち黒字だった割合は56.5%でした 。黒字経営にもかかわらず、廃業を選ばざるを得ない背景には、後継者や経営者に関する問題があります。

後継者についての問題がある

後継者問題が解決されないために、廃業を選ぶ経営者は少なくありません。少子化の影響もあり、跡を継ぐ子どもがいないのです。

 
また、後継者になりうる人物はいるものの、その人自身に跡を継ぐ意思がない、または経営者としての資質が備わっておらず、親族内での事業承継を諦めてしまいます。
 

そのほか、社内の従業員を後継者にしようと思っても、後継者候補側に経営者が持つ株式を買い取る資金がなく、断念するケースもあります。

経営者側の原因・要因

経営者の事情で廃業を余儀なくされることもあります。経営者が高齢であるため、後継者が跡を継ぐことができるまで待てずに廃業してしまうケースです。後継者の育成には5〜10年 が必要ともいわれていますが、「気がつけば80歳間近で、今から後継者を育成していては間に合わない」という後継者は少なくありません。

事業承継と廃業のメリット・デメリット

経営者の選択として、事業承継と廃業それぞれのメリット・デメリットを見てみましょう。

事業承継のメリット・デメリット

事業承継のメリット・デメリットとして、それぞれ以下のようなものがあります。

【メリット】
●会社や事業を存続できる
会社が培ってきた技術やサービス、ノウハウは社会に貢献しています。会社がなくなるということは、技術やサービスなどが失われることを意味します。
事業承継を実行すれば、技術やサービスは引き継がれます。これは親族内・親族外・M&Aのいずれにおいても変わりません。
 

●従業員の雇用を確保できる
会社を廃業すると、いちばん困るのは従業員です。事業承継によって会社が存続できれば、従業員の生活が守れます。
ただし、M&Aによる事業承継の場合、従業員の雇用環境が変わる可能性があります。前経営者の時代よりも環境が悪くなると、従業員が離職してしまう恐れがあるので、M&Aの際に十分擦り合わせをする必要があります。
 

●譲渡対価を受け取って生活資金に充てられる
経営者は、株式や事業を売却して受け取った譲渡対価を生活資金に充てられます。
 

【デメリット】
●後継者の選定や育成に時間がかかる
親族内、親族外ともに、後継者を選んで育成するまでに時間がかかります。そのため、経営者は時間に余裕をもって事業承継を考える必要があります。
また、M&Aによる事業承継でも、条件に見合う売却先が見つかるまでに時間がかかることがあります。
 

●後継者に負担がかかる
上述したように、親族外への事業承継では、後継者が経営者から株式を買い取る必要があります。しかし、後継者が従業員の場合、十分な資金を持っていないことが多いです。
後継者の負担を減らすため、一般的には持株会社をつくって 金融機関から資金調達を行い、持株会社が経営者の株式を買い取ることで経営権を後継者に移す方法をとります。この方法をMBO(マネジメント・バイアウト) またはEBO(エンプロイー・バイアウト)といいます。後継者が経営陣・役員クラスの場合はMBO、従業員の場合はEBOとよびます。

廃業のメリット・デメリット

廃業のメリット・デメリットには以下のようなものがあります。

【メリット】
●会社の経営から解放される
廃業を決断することで、会社の経営から解放されるのがいちばん大きなメリットです。
経営者が会社の存続のことを考える背景には、経営者自身が健康問題を抱えていたり、会社や業界の将来を見通せなかったりといったことがあります。不安を抱えたまま、会社の経営を続けるのは精神的にも厳しいです。
業界の発展が望めないなど、事業承継によって会社を存続させるメリットがない場合は、廃業することで経営者が楽になります。
 

【デメリット】
●従業員の雇用が確保できない
廃業すると、従業員が生活に困ってしまいます。従業員に廃業の経緯を丁寧に説明し、就職先をあっせんしたり、時間をかけて転職活動ができるよう配慮したりするなど、誠意のある対応が求められます。
 

●取引先などに迷惑がかかる
仕入れ先や納入先など、取引のあった企業にも迷惑がかかります。取引先のビジネスに支障が出る恐れがあるからです。
取引先に早い段階から廃業することを知らせ、取引先が適切な対応できるよう配慮しなければなりません。
 

●会社が蓄積した知的財産が失われる
会社が廃業すると、それまで蓄積した知的財産が失われてしまいます。
会社は企業活動の中で、技術やサービス、生産ノウハウなどの知的財産を生み出して蓄積していきます。会社が存続すれば、ここから次の新たなモノやサービスが生み出されますが、このサイクルを失うことは社会的な損失につながります。
 

●個人資産を売却して借入の返済に充てる必要がある
借入時に経営者の個人保証をつけている場合、廃業しても返済しなければなりません。返済のために、個人資産を売却する必要が出てきます。

まとめ

事業承継とは、経営者が後継者に会社の経営権を譲り、会社を存続させたうえで経営から退くことです。一方、廃業は会社の法人格そのものをなくしてしまうため、何も残りません。
 
従業員や仕入れ先、会社を取り巻く環境など、総合的に判断したうえで、事業承継か廃業かを判断しましょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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