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会社を廃業するプロセスとは?解散から清算までの流れを解説

会社を廃業するプロセスとは?解散から清算までの流れを解説

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後継者がいなかったり、事業に将来性の見込みがなかったりなどの理由で、会社の廃業を考えている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。会社を廃業するには「解散」「清算」という手続きを踏む必要があります。ここでは、解散・清算の流れについて解説します。

廃業・破産・解散・清算 知っておきたい言葉の違い

会社がなくなることを表す言葉に「廃業」や「破産」があります。また、会社を廃業させるには「解散」「清算」といったステップを踏みます。
 

まずは、4つの言葉の意味を理解しておきましょう。

廃業は自主的に事業をやめること

「廃業」とは、経営者が自発的に事業をやめ、会社の法人格を消滅させることです。対して「倒産」とは、資金繰りが悪化し、従業員や取引先にお金を支払えなくなり、会社が経営できなくなる状態を指します。
 

事業をやめただけでは法人格を消滅させることはできず、廃業にはなりません。「解散」「清算」という段階を踏む必要があります。「解散」とは、事業を停止して残った財産を整理する活動に入ることを指し、財産を整理することを「清算」といいます。
 

なお、倒産した場合、会社を存続させる「民事再生」や「会社更生」と、存続させない「破産」がありますが、破産手続きを行う場合も解散・清算の手続きを行います。
 

次から、解散と清算について詳しく解説します。

解散は法人格を消滅させるための出発点

廃業とは事業をやめ、会社の法人格を消滅させることです。事業をやめただけでは会社の法人格は消えず、「解散をする=事業を停止し、残った財産を整理する活動に入る」必要があります。
 

会社法第471条によって、株式会社が解散できる事由は「定款で定めた存続期間の満了」「定款で定めた解散の事由の発生」「株主総会の決議」などと決められています。後継者不足などを理由に廃業する場合は「株主総会の決議」を行って解散します。
 

解散をしても法人格は消滅しませんが、申告や納税の義務はなくなります。また、法人は役員の任期満了や再任に合わせて手続きが必要になりますが、解散すれば役員の任期を意識する必要はありません。

清算は会社の資産・負債を整理すること

解散をしただけでは法人格は消滅しません。解散ののち「清算=会社の財産整理」が必要です。清算とは、具体的には会社の資産を売却したり、債権の回収・債務の弁済をしたりすることです。
 

清算には「通常清算」と「特別清算」があります。

・通常清算

資産の売却や債権の回収によって、会社の債務をすべて支払えるケースを「通常清算」とよびます。

・特別清算

上記の方法では債務が残ってしまうケースを「特別清算」とよびます。特別清算を行う場合、裁判所に申し立てる必要があります。

通常清算の流れを押さえよう

ここでは、通常清算の流れを見ていきます。

解散して清算人を選出する
(1)解散・清算人の選出

解散は会社法によって定められた事由によって行われ、解散と同時に清算人が選任されます。
 

株主総会の決議によって解散する場合、特別決議の要件を満たす必要があります。特別決議は原則、議決権を行使できる株主が持つ議決権のうち、過半数を満たす株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
 

解散の特別決議を行ったあと、同時に清算手続きを行う清算人を選任します。代表取締役や取締役が清算人になるケースが多いです。

(2)解散登記・清算人選任登記・関係機関への届け出

清算人は解散が決まった日から2週間以内に、本店所在地の所轄法務局で解散登記と清算人選任登記を行います。
 

登記完了後、税務署や県税・市税事務所、年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署に解散に際して必要な届出をします。

資産・負債の整理を行う
(1)財産目録・貸借対照表作成

清算人は会社の財産を調査し、財産目録と貸借対照表を作成します。作成後は株主総会の承認を得て、社内に保管します。

(2)債権者保護手続き

清算人は官報公告や個別の催告(会社が債権者へ通知を出すこと)を通じ、会社が解散したことや債権の申し出を行うよう債権者に告知します。
 

官報公告では、債権者の申し出期間を最低2か月間設ける必要があります。期間内に申し出がなかった債権者は、弁済を受けられません。

(3)解散事業年度確定申告書の提出

事業年度開始日から解散日まで(解散事業年度)の確定申告書を、所轄の税務署に提出します。この確定申告書を「解散事業年度確定申告書」といいます。提出期限は解散翌日から2か月以内です。
 

なお、清算中は、解散日翌日から1年間を1事業年度(清算事業年度)とする「清算事業年度確定申告書」を提出しなければなりません。事業年度終了日の翌日から2か月以内が提出期限です。清算が1年以上かかる場合は、事業年度終了ごとに申告書を作成・提出します。

(4)資産の売却・債権の回収、債務弁済、株主などへの分配

債権者が確定したら、清算人は会社の資産を売却したり、売掛金などを回収したりして現金化し、債権者に弁済を行います。
 

資産・債務の整理を終えた後に残った残余財産は、株主に分配します。

法人格の消滅と決算結了の登記
(1)残余財産確定事業年度確定申告書の提出

清算事業年度の途中で残余財産が確定したら、清算事業年度の開始日から残余財産確定日まで(残余財産確定事業年度)の確定申告書を作成します。これを「残余財産確定事業年度確定申告書」といいます。
 

残余財産確定事業年度確定申告書は、残余財産の確定日から1か月以内に提出する必要があります。

(2)株主総会で清算事務報告の承認

清算人は清算事務が完了したら、すみやかに清算の決算報告書を作成します。決算報告書には、清算中に資産を売却して得た現金や回収した債権、清算にかかった費用、残余財産の金額、株主一人当たりへの分配金額などを記載します。
 

株主総会で清算事務報告の承認を得ると、会社の法人格は消滅します。

(3)清算結了登記

株主総会の承認を得て清算が結了したら、2週間以内に清算結了の登記を行います。登記申請書には、株主総会議事録と清算の決算報告書を添付します。

(4)関係機関への清算結了の届け出

登記完了後、税務署や県税・市税事務所などに清算結了にかかわる届出を出します。

散から清算結了までにかかる費用と期間

(1)解散・清算に必要な費用

・登録免許税
登記を行う際、法務局に納める税金です。解散・清算の過程で登録免許税が必要になるのは、解散・清算人選任の登記と清算結了登記です。
 

解散と精算人選任の登記申請は「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」で一度に行えます。解散登記の登録免許税30,000円+清算人選任登記の登録免許税9,000円=39,000円分の収入印紙を台紙に貼り、申請書とともに納めます。
 

清算結了登記申請は「株式会社清算結了登記申請書」に登録免許税2,000円分の収入印紙を台紙に貼り、申請書とともに納めます。
 

・官報公告費用
官報に解散公告を出す際、掲載料が必要になります。官報公告料金は1行あたり3,589円(税込)で、解散公告はおよそ22行が目安とされており、約4万円かかると見ておきましょう。
 

・登記事項証明書取得費用
解散登記、清算結了登記の完了後には税務署や県税・市税事務所などの関係機関に届出をします。その際、登記事項証明書が必要です。登記事項証明書1通当たりの取得費用は以下のようになっています。提出先の数に合わせて取得しましょう。
 

書面請求600円
オンライン請求・送付 500円
オンライン請求・窓口交付 480円

・株主総会開催費用
場所を借りて株主総会を開くと、数十万円の費用が必要になります。
 

・専門家への依頼費用
解散・清算の過程で司法書士や税理士、弁護士などの手を借りる必要があります。それぞれ数万円から数十万円の費用がかかります。

(2)解散から清算結了までにかかる期間

解散後、清算の手続きを経て清算結了までにかかる期間は、会社の規模や資産・債務の過多に影響されます。株主総会で解散が承認されたあと、官報公告を出して2か月間は債権者の申し出を待つ必要があるため、清算結了まで最低でも2か月はかかります。
 

会社の規模が大きく、資産・債務の整理に時間がかかる場合、数年かかることも珍しくありません。

まとめ

経営者が廃業を決めてから、実際に法人格が消滅するまでには、解散・清算の手順を踏む必要があります。その過程には、株主総会による承認、登記や官報公告への掲載、確定申告書の提出など、さまざまなルールがあります。
 

税理士、司法書士、弁護士など複数の専門家のサポートを受けながら、滞りなく進めましょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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