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どうやって自社を譲渡する?さまざまなM&Aスキームを知ろう

どうやって自社を譲渡する?さまざまなM&Aスキームを知ろう

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自身や会社の今後を考えるとき、自社・事業の譲渡も選択肢のひとつとして考えている経営者の方は少なくないのではないでしょうか。近年、中小企業でもM&Aを活用した会社・事業の譲渡が増えています。ここでは、さまざまなM&Aスキームの中から、中小企業でよく活用されている3つの方法について解説します。

さまざまなM&Aスキーム

M&Aは「Mergers(買収)とAcquisitions(合併)」を意味する言葉ですが、その手法は多種多様です。代表的なM&Aスキームには以下のようなものがあります。
 

  • 買収:株式譲渡、第三者割当増資、株式交換、株式移転、事業譲渡(全部譲渡・一部譲渡)、会社分割
  • 合併:吸収合併、新設合併

 

買収は、一方の企業が他方の企業の株式や資産・事業を買うことです。合併は、複数の企業をひとつの会社に統合する方法です。
 

今回は、中小企業のM&Aでよく用いられる「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割」について詳しく解説します。

代表的なM&Aスキームのメリット・デメリット

中小企業のM&Aでよく用いられる株式譲渡・事業譲渡・会社分割について、それぞれの方法や譲渡する側のメリット・デメリットについて見てみましょう。

株式を買い手に譲渡する株式譲渡

株式譲渡とは、売り手側企業の株主が持っている株式を買い手側企業に譲渡し、株主が対価を現金で受け取る方法です。通常、すべての株式が譲渡されるため、その会社の経営権は買い手側に移ります。後継ぎのいない会社が、第三者に会社を承継してもらう際に用いられるスキームです。

【メリット】

株式譲渡の手続きは、売り手側と買い手側で株式譲渡契約を結び、代金の決済を行ったうえで株主名簿を書き換えるという比較的シンプルなものです。
 

株主が変わる以外、売り手側企業で働く従業員や取引先にはあまり影響はありません。売り手側企業が持っていた事業や資産、負債などはそのまま買い手側企業に引き継がれます。
 

中小企業では、経営者自身がすべての株を所有していることが多く、その場合、経営者は株式譲渡によって現金を受け取り、引退後の生活資金にできます。なお、株式を譲渡した個人株主には、譲渡所得(譲渡して得たもうけ)に対して20.315%の税金(所得税・復興特別所得税・住民税)が課せられます

【デメリット】

株主が経営者だけなら簡単に手続きが進みますが、経営者の家族や親戚など複数いる場合、株主全員の同意が必要となります。

事業・資産を選別して譲渡する事業譲渡

事業譲渡は、売り手側企業が自社の事業や所有資産の中から選別して買い手側企業に譲渡し、対価として現金を受け取る方法です。対価を受け取るのが株主ではなく、売り手側企業である点が株式譲渡と異なります。
 

売り手側企業にとって、不採算事業を切り離して経営の立て直しを図りたいようなときに事業譲渡のスキームを用います。

【メリット】

自社の事業や所有する資産、負債、営業権などについて、譲渡するものとしないものを選別できます。当然、買い手も引き継ぎたい資産や引き継ぎたくないものがあるため、双方の交渉次第です。
 

また、自社の事業などを譲渡したあと、経営者は会社の経営権自体を引き続き持てます。

【デメリット】

資産や営業権、従業員など譲渡の対象に応じて、売り手側が取引先に説明をしたり、買い手側が契約を新たに結んだりする必要があるため、事業譲渡が完了するまでに時間と手間がかかります。
 

また、事業譲渡は法人間での行為となるため、売り手側企業には譲渡益に対して約34%の法人税等がかかります。繰越欠損金や役員退職金で節税できる場合もあるので、うまく使いましょう。

社内の組織再編に用いられる会社分割

会社分割とは、売り手側企業が事業の一部または全部を買い手側企業に渡す方法です。事業譲渡と同様に、経営の立て直しを図る手段として用いられます。ただし、事業譲渡とは異なり、会社分割では譲渡する事業や資産を選別できません。事業に関わる資産や負債、契約などを包括的に譲渡します。

買い手側企業が既存企業である場合は「吸収分割」、新設企業である場合は「新設分割」とよびます。また、売り手側企業が事業を引き渡して得た対価(株式)を自社の株主に渡す場合を「分割型」、自社で保有する場合を「分社型」とよびます。分割型の場合、売り手側企業の株主は買い手側企業の株主にもなります。

【メリット】

会社分割は事業再編の手段として使えます。グループ内企業で100%の支配・被支配関係にある企業同士など、税制適格の要件を満たす企業間で会社分割が行われる場合、買い手側企業は税制上の優遇措置が受けられます。
 

また、事業を切り分けて新設分割によって分社化し、経営者の後継者に経営を任せて事業承継の準備をするといった活用方法もあります。
 

事業譲渡と手法は似ていますが、契約などを一つひとつ結び直す必要がないため、手続きの手間が少なくてすみます。

【デメリット】

会社分割を行う際、税制適格の要件を満たす場合と満たさない場合とで税務上の扱いが異なり、手間と専門的な知識が必要になります。複雑な手続きを行うためのコストが発生します。
 

会社分割を行う際には、債権者保護手続が必要になります。債権者保護手続とは、会社分割のような企業の経営判断によって債権者が不利にならないよう、経営判断が行われる前に債権者が異議を唱える機会をつくることです。
 

具体的には、官報に公告を出し、1カ月以上の異議申立期間を設けます。異議を申し立てた債権者に対しては、債務を弁済するなどの対応が必要になります。

自社に合わせたM&Aスキームを選ぶポイント

M&Aにはさまざまなスキームがありますが、会社や事業を譲渡する目的に合わせたものを選びましょう。

譲渡

する対象によってスキームが変わる

会社の経営を第三者に譲渡して、自分は経営から身を引きたい場合は株式譲渡を選びます。
 

自社が手がける事業を整理したい場合は、事業譲渡や会社分割を選びます。事業譲渡は自社の資産や事業について、残すものと譲渡するものを選択できるのが特徴です。会社分割の場合は、譲渡する事業について関係する資産や人材などをまとめて譲渡することになります。

スキームによって対価を受け取る対象や税負担が異なる

Aという中小企業の経営者が会社の株式をすべて保有していて、株式譲渡を行った場合、その対価はAの経営者に入ります。一方、A社が事業譲渡や会社分割によって事業を譲渡した場合、譲渡益はA社に入ります。今後の経営のことを考えて、会社に対価を入れたい場合、事業譲渡や会社分割を選ぶ方がよいでしょう。
また、前者の場合、Aの経営者に課せられる税金は譲渡所得の20.315%ですが、後者の場合、A社に課せられる税金は譲渡益の約34%となり、税負担は株式譲渡の方が軽くなります。

包括的承継にはリスクが生じる

株式譲渡や会社分割は、買い手側企業に事業を包括的に承継してもらうスキームです。一方、事業譲渡は、売り手側と買い手側で譲渡・譲受する資産などを交渉して選択します。
 

包括的承継はスピーディにM&Aが成立するメリットがあるものの、買い手側にとっては、簿外債務や偶発債務などを引き受けるリスクをはらんでいます。M&Aの交渉過程で、買い手側からリスクを指摘され、譲渡価格などに影響を及ぼす可能性があります。

スキームによって手続きにかかる時間が異なる

一般的に株式譲渡に比べ、事業譲渡や会社分割は手続きに時間がかかります。株式譲渡は売り手側企業の株主が変わる以外、売り手側企業に勤める従業員や取引先、資産などに大きな変更はありません。
 

一方、事業譲渡では、売り手側企業が自社の従業員や取引先と取り交わしている契約は、買い手側企業に自動的には引き継がれません。買い手側は譲渡されるリソースに対し、一つひとつ契約を結び直す必要があります。
 

会社分割の場合は、債権者保護手続を行う必要があります。債権者保護手続では、債権者の異議申立期間を1カ月以上設けることになり、やはり時間がかかってしまいます。

M&Aにはさまざまなスキームがあり、中小企業のM&Aにおいてよく用いられる方法として株式譲渡・事業譲渡・会社分割があります。譲渡する内容や目的に加え、税負担やM&Aにかかる時間・手間にもそれぞれの方法で違いがあります。
 

いずれの方法を取る場合においても、M&Aの経験が豊富な専門家のアドバイスを受けながら、進めていくことになります。事業や会社の譲渡を考えている経営者の方は、自身の今後や自社の将来に対するビジョンをしっかり持ったうえで、M&Aの専門家に相談しましょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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