M&Aを検討する最適なタイミングとは?何から始めればよい?
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売り手都合はM&Aの成功率が低くなる
近年、中小企業において、M&Aは事業承継の手段として使われることが増えています。M&Aによる自社の譲渡を検討するうえで重要なことは「売り手側の都合でタイミングを図らない」ことです。「65歳になったら譲渡を検討する」「経営意欲が衰えてきたら……」と、自身の状態と照らし合わせて検討時期を考えていても、タイミングよく買い手が現れるとは限りません。
M&Aで買い手が見つかるまでに時間がかかることもあり、M&Aが実行されるまで1年以上かかるケースもあります。事業承継を目的としたM&Aの場合、1社も買い手が現れなければ、いずれは廃業に追い込まれてしまいます。
また、M&Aによる譲渡の目的の一つは「自社をできるだけ高い価格で譲渡すること」ですが、売り手側経営者の都合で譲渡を行おうとすると、M&A市場における自社の価値が低いタイミングに当たってしまうケースがあります。
「後継者が親族内・社内にいない」などの理由で、M&Aによる譲渡を考えはじめたら、買い手が見つかりやすく、高値で譲渡できるタイミングを見極めましょう。
M&Aを検討する最適なタイミングとは?
では、買い手が見つかりやすく、自社を高く譲渡できるタイミングとは具体的にどのような時期なのでしょうか。ここでは、M&Aを検討するうえで最適な4つのタイミングについて解説します。
収益が出ているときは企業価値が高くなる
自社の業績が好調なときにM&Aに向けて動き出せば、高値で譲渡できる可能性が高いです。M&Aでは会社の業績をもとに企業価値が算出され、譲渡価格が決まるからです。
売り手の立場からすると「収益が出ているときに、なぜ譲渡を検討しなければならないのか?」と思うところですが、M&Aの目的は「より高い価格で譲渡すること」です。売り手の立場に立てば、収益力が高い企業は費用をかけてでも欲しくなります。
業績が伸び続けている時期は売るのが惜しくなりますが、業績が下がると企業価値も低下し、譲渡価格は安くなります。赤字になると、特殊な特許を持っていたり、ニッチな分野でトップシェアを持っていたりするなどの独自性がなければ、なかなか買い手は決まりません。
いずれはM&Aによる自社の譲渡を決めているなら、業績好調期は譲渡するタイミングとして一つの目安になります。
やる気はあるが体力の衰えを感じたら検討
「経営意欲はあるが、体力がついていかない」と感じたときも、M&Aを検討するタイミングです。
「経営意欲が落ちるまでは頑張りたい」と考える経営者が少なくありませんが、病気などで経営判断ができなくなってしまうと、M&Aについての判断もできなくなってしまいます。特に高齢の経営者は、認知症などによって経営判断ができなくなり、契約などの法律行為ができなくなるリスクが高くなります。
M&Aの実行に経営者自身が関与し、満足のいく結果を得るためにも、経営意欲はあっても体力的な限界を感じた時点でM&Aを検討しましょう。
また、会社の業績が良い状態で譲渡するためにも、経営者が経営に携われているうちに譲渡することが望ましいです。経営者の経営意欲が低下すると、従業員のモチベーションや会社の業績にも悪い影響を与える傾向があるからです。
経営者は、気力が元気なうちに引退することを惜しまないことが大切です。
好景気は高く譲渡できる可能性あり
景気が良い時期は、売り手にとって自社を高く譲渡できるチャンスです。事業拡大に積極的な企業が増えるため、M&A市場に多くの買い手が集まります。M&Aで企業を買収したいと考える買い手の目的は、効率よく事業拡大を図ることにあるからです。
また、買い手が多くなると、優秀な売り手企業の取り合いになり、譲渡価格も上昇する傾向にあります。売り手にとっては、買い手が多く集まるほど、良い条件で譲渡できる可能性が高くなります。
ただし、景気が良いときに、高値で売れるタイミングを狙って欲を出しすぎると、好景気の流れに乗り遅れてしまうこともあります。M&Aを視野に入れると、仲介会社など専門家のアドバイスを受けながら進めることになりますが、アドバイザーと相談しながら決断しましょう。
業界再編期は売り手が見つかりやすい
自社の業界が業界再編期にあるとき、業界内のM&A市場は活発になります。業界大手の企業は積極的に売り手を探しているため、自社を高い価格で譲渡できる可能性があります。
業界の動きをチェックし、業界再編の動きを注視し、譲渡のタイミングを逃さないようにしましょう。
景気の流れと同様、業界再編もある一定の期間に集中して行われます。再編の動きが活発になり始めるタイミングでM&Aを検討すると、高値で譲渡できる可能性が高くなります。逆に、業界再編の流れが収まりつつある局面で買い手を探しても、思うように譲渡できないことがあります。
また、業界と深いかかわりのある法改正や、新型コロナウイルスの世界的な流行のような経済全体に影響を与えるような事象も、業界が大きく動くきっかけとなるので要注意です。
企業価値を向上させてM&Aに備えよう
M&Aを検討すべきタイミングが来たらすぐに動けるようにするには、そのときに備えて自社の企業価値を上げておく必要があります。ここでは、企業価値を向上させる2つの方法について解説します。
法務・財務・労務面における問題点の洗い出しと改善
企業価値を向上させるには、健全な経営を続けることがポイントになります。法務・財務・労務の各方面における問題点を出し、改善しなければなりません。
法務面ではコンプライアンスに対する取り組み、労務面では従業員の離職防止や労働環境向上に対する取り組みを見直します。
また、財務面では以下のような改善を行います。
- 既存ビジネスモデルや業務フロー、事業に対するリソースの配分などを見直して、事業の収益性を高める
- 固定資産・流動資産を整理し、投資の効率化を図る
- 資金調達額や調達先を見直したり、負債を整理したりする
企業の強みを見える形にしておく
自社の問題点を洗い出して改善を図るとともに、自社の強みを整理しておくことも大切な作業です。自社の強みをアピールすることは、M&Aの成功にもつながるからです。特に、数字に表しにくい無形資産について、リスト化しておきましょう。
無形資産とは、具体的には企業が積み重ねてきた実績や特許、取引先や得意先、従業員が持つスキルなどを指します。また、従業員の定着率も企業を評価する目安の一つとなり得ます。
まとめ
M&Aによる自社の譲渡を考える際、事業承継など経営者の事情があったとしても、経営者の都合で検討する時期を決めるのは望ましくありません。買い手が現れやすい、さらには良い条件でで譲渡しやすい時期を見極めなければなりません。
自社の業績が良いときやM&A市場が活況を呈するとき、自社が身を置く業界の再編時期など、いくつかのポイントがあります。M&Aの検討時期を探りながら、M&Aに向けて自社の企業価値の向上にも取り組みましょう。
このように、M&Aを実行するまでには、企業価値を向上させながら実施時期を見極める時間が必要です。M&Aを考え始めたら、先送りせずに準備を始める必要があります。M&Aの事情に精通しているM&A仲介会社などのサポートを受けながら、M&Aを成功に導いてください。
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