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顧問先を重要印に譲って独立を支援する「のれん分け」とは?

顧問先を重要印に譲って独立を支援する「のれん分け」とは?

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飲食業などでは、経験を積んで技術を身に着けた従業員が独立する「のれん分け」が行われます。税理士の世界も従業員の独立が行われますが、一般的なのれん分けとは異なる部分もあります。
ここでは、一般的なのれん分けについて述べるとともに、税理士業界におけるのれん分けについて詳しく解説します。

従業員に対して自社の屋号を認める「のれん分け」は、日本の商家で江戸時代から行われてきた制度です。商家に住み込んで奉公していた人間に対する、主人の労いの意味がありました。
のれん分けは単なる屋号の使用許可ではなく、店舗経営の方法も認めるものです。現在も飲食業など理髪店業など、「スキルを磨いて独立する」という志向の強い人材が集まる業界では、のれん分けを制度化している会社がたくさんあります。
税理士法人(会計事務所)にも、働きながら税理士資格を得て将来的には独立したいという人材が集まってきます。所長は従業員の独立時、応援の意味も込めて顧問先を数件譲ることがあり、税理士業界における「のれん分け」といえます。ただし、独立する従業員が元の税理士法人の屋号を使うことはあまりありません。

のれん分けとフランチャイズの違い

「のれん分け」は従業員が独立し、元の会社と同じ屋号で事業を行う形態です。“同じ屋号で事業を行う形態”といえば、フランチャイズ制度があります。
フランチャイズ制度とは、フランチャイザー(本部)がフランチャイジー(加盟者)を募り、加盟者に対して屋号や経営ノウハウ、商材などの資源の使用を認める制度です。加盟者は本部に対して、加盟料や本部から許可された資源の使用料(ロイヤリティ)を支払います。また、加盟者の事業運営方法は、契約内容で本部から厳密に決められています。
本部は加盟者の商材の発注内容や売上など、経営状態を細かく管理します。販売を強化してほしい商材やキャンペーン期間が本部によって指定されるなど、加盟者にとって経営の自由度は低くなります。
フランチャイズ制度における本部と加盟者の間に契約関係はありますが、のれん分けにみられるような徒弟的関係はありません。本部にとって加盟者はいわば「第三者」です。経験もノウハウもない第三者に対し、事業を営めるだけの知識とスキルを身に着けさせて開業させます。
対する「のれん分け」は、会社と元従業員、あるいは経営者とその親族などのように「身内内」の制度といえます。独立する人は、会社で働いている間にスキルと経験を身に着けます。
独立した人の事業運営方法は、フランチャイズ制度ほど厳密ではありません。また、独立にあたって支払う加盟料・ロイヤリティも、フランチャイズ制度よりは低額、あるいは不要の傾向にあります。
税理士業界における「のれん分け」の場合、独立する側は所長から数件程度の顧問先を譲り受けることが多いです。ただし、譲渡された側がその対価を所長に支払うかどうかは、両者の人間関係に左右されるところが大きいようです。

のれん分けのメリット・デメリット

独立される側にとって、のれん分けにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。一般的な事例を挙げながら、税理士業界でのケースについても説明します。

【メリット】従業員のモチベーションアップにつながる

会社にとって、のれん分けを行うメリットは多店舗展開が効率的に行えることや、ブランド力の維持にあります。また、求人の際に「のれん分け制度」を打ち出すことで、優秀な人材を集めることができるうえ、従業員のモチベーションアップにもつながります。
税理士業界、特に中小の税理士法人や会計事務所の場合、のれん分けのメリットは多店舗展開やブランド力の維持というよりも、従業員のモチベーションアップです。
かつて、税理士業界における独立はあえて表に出すようなことではなく、従業員の独立を積極的に応援する姿勢を取る税理士はあまりいませんでした。しかし、最近は求人時に「独立支援制度(のれん分け制度)あり」を打ち出す税理士法人も増えています。背景には、税理士業界の人材不足や高齢化といった問題が考えられます。

【デメリット】のれん分け後に利益が得られないことがある

のれん分けのデメリットは、のれん分けによって得られる利益がフランチャイズ制度よりも少ないことです。のれん分けの対象が「身内」であることが多く、顧問先を渡した対価などをフランチャイズ制度と比べて高く設定できない傾向にあるからです。
また、従業員が独立してどこで事業を始めるかによっては、自社の経営に影響することがあります。フランチャイズ制度では、出店エリアは本部がコントロールできますが、のれん分けの場合は、会社と従業員との間で独立するエリアについて契約を結ぶ必要があります。
税理士業界におけるのれん分けにおいても、従業員の独立に際して顧問先を譲る際、対価を求めるかどうかは所長次第ですが、あまり高額な対価を要求するのは難しいでしょう。
 

そもそも、フランチャイズ制度が「加盟金やロイヤリティを得ることで成立するビジネスの仕組み」であるのに対し、のれん分けは従業員の働きに対する労いの意味があります。そのため、二つの制度は単純に比較できるものではありません。

税理士法人ののれん分け事例

ここでは、税理士法人ののれん分けがどのように行われるのか見てみましょう。

独立時に顧問先を有償または無償で譲渡

従業員が独立するとき、税理士法人や会計事務所は顧問先の中から従業員が担当しているところを譲渡したり、業務の一部を委託したりして、独立を支援する場合が多いです。顧問先の譲渡が無償なのか有償なのかは、事務所によってさまざまです。有償の場合、譲渡される顧問先から得ている年間報酬の何%かを、独立時に事務所に支払うパターンが多いようです。

独立後のトラブル対策は必須

従業員の独立後、トラブルにならないように、事務所は対策を立てておく必要があります。人材の採用・育成を通じて以下のようなことがらに注意しましょう。
 

  • ・求人の際、独立支援制度(のれん分け)の有無を明確に周知する
  • ・従業員との関係を良好に保つこと
  • ・定期的に顧問先の担当を替えたり、所長と顧問先のつながりを強くしたりする
  • ・従業員が独立する際、営業エリアに関する取り決めを書面で交わしておく

 

基本的なことですが、従業員と所長との関係を良好に保つことは、従業員が独立した後のトラブルを防止するうえでいちばん大切なことです。両者の関係が良好でない場合、従業員が独立した際に顧問先を持ち逃げすることがあります。従業員が退職後、顧問先が「税理士を変更する」と申し出て、初めて持ち逃げされたことに所長が気づくといった事態になってしまいます。
また、従業員が独立したときに顧客の取り合いなどにならないよう、事務所と同一地域で営業しないことをルールにする「競業避止義務」と、違約金を設定しておくことをおすすめします。その際、競業避止とする地域を具体的に定めましょう。

まとめ

「のれん分け」は江戸時代の商家のしきたりの名残で、商家に長い間務めた奉公人が、主家から労いの意味を込めて店を持たせてもらうというものです。現在も、技術を身に付けて独立する人が集まる業界では、のれん分け制度を設ける会社がたくさんあります。
のれん分けは会社で一定期間働いた人を対象としている制度であり、運営本部が加盟者を広く募ってビジネスノウハウやブランドを使用させる「フランチャイズ制度」とは異なります。
税理士法人の従業員も、資格を取ってノウハウを身に付け、事務所を構えることを目標にしているという点では「のれん分け」が行われている業界と共通しています。実際に独立支援制度(のれん分け)を設けている事務所もありますが、独立した従業員とトラブルにならないように注意を払う必要があります。
 

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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