チェックリストでやることを確認!事業承継は計画的に進めよう
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計画的に事業承継を進める重要性
事業承継を計画的に進めないとどうなる?
中小企業の存続における大きな課題が、経営者の高齢化と後継者不足です。日本政策金融公庫総合研究所が2020年に発表した調査によると、調査に回答した中小企業4759社のうち半数が廃業を予定しており、廃業理由に「後継者が見つからない」ことを理由に挙げた経営者が29.0%いました。その内訳は以下のようになっています。
子どもがいない…12.5%
子どもに継ぐ意思がない…12.2%
適当な後継者が見つからない…4.3%
「後継者が見つからない」と答えた人の4割が「子どもに継ぐ意思がない」としています。
後継者が決まらないまま経営者が高齢になると、認知症になるリスクが高まります。 事業を誰にどのタイミングで受け継がせるのか計画を立てておくことは、事業を継続させ、従業員の雇用を守るために経営者が行うべき重要な責務です。
事業承継計画表を作成しよう
事業承継計画表とは、事業承継に関する経営者・後継者の具体的な動きや、会社の中長期的な経営計画を時系列に並べたものです。
計画表には社内や取引先・金融機関などへの事業承継の周知、株式や財産の分配、後継者候補の社内教育の計画などについて、いつ行うかを具体的に記入します。おおよそ10年後までの動きを押さえておくのが理想です。
事業承継計画を立てるために
事業承継計画を立てるには、事業に必要な資源や経営者の現状、後継者候補などについて現状を把握し、事業承継の方法を検討する必要があります。
会社の現状を多角的に把握する
以下のような内容について、現状を確認しておきましょう。
(1)会社の経営資源の状況
- 従業員数と年齢層
- 会社の資産・負債
- キャッシュフローの現状と今後の見込み
(2)会社の経営リスク
- 現状の競争力と将来の見込み
- 事業を展開している業界の動き
(3)経営者自身の資産状況
- 個人名義の土地、建物
- 保有する自社株式
- 負債
- 個人保証
(4)後継者候補
- 後継者候補の有無、候補者は親族内か親族外か
- 後継者候補の能力や適性、経営への意欲など
- 後継者候補と経営者で経営理念などの共有はできているか
- 後継者候補が現時点でいない場合、会社をどのように継続させるか
(5)相続の際に想定される問題
- 法定相続人や相続人相互の人間関係、株式保有状況などの確認
- 相続財産の特定や相続税額の試算
- 相続税の納税方法や猶予制度の利用の検討
事業承継の方法を決める
会社の現状を踏まえ、事業承継の方法を決めます。事業承継方法には以下の3つがあり、それぞれメリットとデメリットがあります。
(1)親族内承継
【メリット】
- 社内や取引先、金融機関などの同意を得やすい
- 後継者の教育期間や株式の譲渡などに時間をかけられる
【デメリット】
- 親族内に後継者として適任の者が見つからないことがある
- 相続人が複数いる場合、財産を移転させる際に後継者以外の相続人への配慮が必要になる
(2) 従業員などへの承継
【メリット】
- ・親族内だけで後継者を探すよりも、適任者が見つかる可能性が広がる
- ・社内で長く勤務している役員などに承継すれば、現経営者からスムーズに経営を引き継げる
- ・社内の理解を得やすい
【デメリット】
- 経営者から株式を取得する際、資金力がない場合がある
- 経営者の個人債務保証を引き継ぐのが難しい
- 親族内継承に比べると、関係者の同意を得るのが難しい場合がある
(3) 第三者への承継(M&A)
【メリット】
- 親族内や社内に適任者がいなくても、広く後継者候補を探せる
- 会社を売却することで経営者が譲渡益を得られる
【デメリット】
- 売却価格や従業員の雇用など、経営者の希望がかなえられない場合がある
- 譲渡先の方針によって、経営の方向性などが変わってしまう可能性がある
事業承継計画の作成手順
会社の現状を把握し、事業承継方法が決まったら、以下の手順で事業承継計画を立てます。
(1)経営理念、中長期目標の設定
経営理念は、事業に対する経営者の価値観や信条をわかりやすい言葉にしたものです。明確な経営理念を作成していない場合は、事業承継の準備を機に明文化して従業員に示すことで、次世代へ向かって進むことを社内に印象付けられます。
また、中長期目標は5年後、10年後の自社の目標を具体的な数値で示したものです。後継者が経営者になる頃に、会社がどのような姿になっていたいかを描きます。
経営理念や中長期目標の設定は、経営者と後継者が一緒になって行いましょう。二人の経営に対する共通認識を形成でき、事業承継をスムーズに進められます。
(2)事業承継対策と実施時期を決める
事業承継対策には、以下のようなものがあります。上記で確認した「会社の現状」をもとに、それぞれの実施時期を決めておきましょう。
- 親族で後継者について話し合いを持つ
- 社内や金融機関へ後継者を発表する時期
- 後継者教育の具体的な計画
- 現経営者の引退時期
- 株式や財産の分配方法、遺言の作成
- 弁護士との契約
(3)上記2つの事柄を事業承継計画表に落とし込む
事業承継計画表の様式や記入例は、中小企業庁「中小企業ガイドライン(第3版)」などに示されています。
事業承継に向けて行うべきことチェックリスト
事業承継の際には事業承継計画を作成し、中長期的な展望で臨む必要があります。上述した事業承継計画の作成の手順にもとづき、事業承継に向けて行うべきことをチェックリストで確認しておきましょう。
事業承継計画の作成に関する項目
(1) 会社の現状を把握しているか
(2) 経営者自身の現状を把握しているか
(3) 後継者候補をリストアップし、各候補の適性をチェックしたか
(4) 相続発生時に予想される問題点、解決方法を把握しているか
(5)事業承継について、後継者や親族、会社の役員などと話し合いができているか
(6) 事業継承の方法を検討し、後継者を決めたか
(7) 経営理念や中長期的な目標を設定し、事業承継対策の実施時期を決めて事業承継計画を作成したか
承継方法ごとのチェック項目
●親族内承継を行う場合
(1)社内外の関係者に事業承継計画を公表したか
(2)後継者を重要ポストにつけて権限の一部移譲を行い、社内外の関係者とコミュニケーションを取らせているか
(3)後継者をサポートできるような将来の役員組織の編成を進めているか
(4)社内外で後継者教育を行い、後継者に将来の経営者としての自覚を促しているか
(5)専門家に相談しながら、親族内承継に合わせた株式・財産の分配方法について検討しているか
●従業員などへの承継を行う場合
(1)社内外の関係者に事業承継計画を公表したか
(2)後継者に経営権を譲る前に、役員にすることを検討したか
(3)後継者をサポートできるような将来の役員組織の編成を進めているか
(4)事業承継後、現経営者が会長職などの立場で社長をサポートすることを検討したか
(5)社内外で後継者教育を行い、後継者に将来の経営者としての自覚を促しているか
(6)専門家に相談しながら、従業員などへの承継に合わせた株式・財産の分配方法について検討しているか
(7)現経営者の個人債務保証や担保を減らすため、金融機関との交渉や債務の圧縮を行ったか
●M&Aを行う場合
(1)M&Aの手法や手続きについて、おおよその理解ができているか
(2)M&Aの仲介会社などに相談したか
(2)会社売却価格を算定し、企業価値の向上を検討しているか
事業承継を支援してくれる支援金などを活用しよう
事業承継の過程では事業の強化や再編も行われ、さまざまな費用がかかります。また、贈与や相続、譲渡にともなって税金も発生します。社内だけで事業承継を進めるのは限界があるため、専門家のサポートをおすすめします。
中小企業庁では、事業承継やM&Aをきっかけに経営改革を行う企業や、M&Aを行う際の専門家活用に対して補助金を交付しています。事前申請が必要となり、応募期間も限られているので中小企業庁のホームページでチェックしておきましょう。
まとめ
事業承継は単なる経営者の交代ではありません。経営に必要な有形無形の資産を後継者に引き継ぐことであり、数年を要します。親族や社内外の関係者も巻き込んだ一大プロジェクトです。公的補助金や専門家の力を借りながら、計画的・戦略的に進めていきましょう。
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