親子での事業承継にもポイントはある!メリットやデメリットとトラブル例を解説
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まだまだ親子での事業承継は多い
最初に事業承継の選択肢として親子がどの程度選択されているのかご説明します。
親子承継は全体の38%
帝国データバンクの調査によると、親子での事業承継は全体の38.5%です。子供以外の親族は20%程度であるため、親族の中でも子供への事業承継が積極的に選択されていると受け取れます。
ただ、前回調査では子供への事業承継は全体の40.4%ありました。近年はM&Aなど事業承継の選択肢が幅広く認知されるようになったため、それに伴い子供以外の選択肢も選ばれるようになってきています。
減少傾向にはあるが選択肢のトップ
帝国データバンクの調査を参照すると、親族内承継の割合はここ数年で減少傾向にあります。ただ、それでも事業承継先の選択肢としてトップに位置し続けているのには変わりありません。
今はサーチファンドなどが増え、親子での事業承継以外にも事業承継する選択肢がいくつもあります。そのような状況においても未だ親子で事業承継する人が多い状況です。
親子で事業承継するメリット
親子での事業承継にはいくつものメリットがあります。それらの中でも代表的なメリットを以下でご説明します。
従業員や取引先に説明しやすい
親子での事業承継であれば、従業員や取引先に後継者の説明がしやすいでしょう。外部の人材を後継者にすると説明を求められる可能性がありますが、親子ならば説明は最小限で済むためメリットがあります。
もちろん、親子での事業承継でも「なぜ子供に事業を承継するのか」と尋ねられる可能性はあります。ただ、親子であれば説明は簡単であり、そもそも説明を求められる可能性も少ないはずです。親子での事業承継は世の中的に多々あるため、従業員や取引先から理解を得やすいメリットがあります。
事業承継してからも会社の様子が把握しやすい
事業承継をしてからも会社の様子を把握しやすいメリットがあります。子供であるため直接本人に尋ねれば、簡単に会社の様子を把握できるからです。
外部の人間に事業承継をしてしまうと、簡単に会社の様子は尋ねられません。事業承継をしてしまうと会社の人間ではなくなってしまうため、もともとは自分の会社であろうとも後継者は企業秘密を回答ができません。
親子でも事業承継をすると親は外部の人間になってしまいます。ただ、親族であることなどから、会社の様子は把握しやすくなるでしょう。
引き継ぎなどに長い時間を割ける
親子ならば引継ぎに余裕を持った時間を割けます。日頃から顔を合わせる機会が多いため、引き継ぎする機会が多いからです。
従業員や外部の人材に事業承継をすると、引き継ぎに割ける時間には制限が生まれます。顔を合わせる時間帯が限られているため、その時間内ですべての業務を引き継がなければならないわけです。引き継ぐ内容が多いと間に合わない可能性すらあります。
しかし、親子での事業承継であればこのような問題は発生しづらいでしょう。じっくりと時間をかけて引き継ぎをし、問題なく引き継ぎができてから事業承継の手続きをします。
親子で事業承継するデメリット
親子での事業承継にはデメリットもあります。こちらについても正しく理解しておきましょう。
個人保証を避けられない可能性がある
中小企業で金融機関から融資を受ける場合、経営者が連帯保証人になっているケースが多くあります。親子間で事業承継をしても、この個人保証は避けられない可能性があります。
個人保証が必要となる理由は、会社の業績悪化などで金融機関への支払いができなかった場合に、個人が支払いをするためです。金融機関は貸し倒れにならないよう、個人保証を求めます。
事業承継をしても後継者である子供が、十分な資産を保有していないかもしれません。この場合は個人保証の意味がなくなってしまい、引き続き親が個人保証をしなければなりません。金融機関の判断に左右されますが、子供に十分な資産がなければ事業承継しても個人保証は続くと考えるべきでしょう。
相続の問題が起きる可能性がある
子供に事業承継をさせると、後継者に選ばれなかった他の相続人と遺産トラブルが起こりかねません。法定相続人が複数いると、事業承継をした子供は株以外の資産がわずかしか相続できない、事業承継をしない子供は将来的に事業から得られる報酬等がないので不公平感を抱く、といったことが起こる可能性があります。
基本的に相続は法定相続人が法律で決められた割合で資産を取得しなければなりません。この場合、後継者として選ばれていない人にも株式などが相続されてしまいます。ただ、このような状況は会社運営に悪影響を与えることは言うまでもありません。
相続で事業承継をする場合は、株式や資産の分配などでトラブルになりかねません。トラブルを避けるために、事前に事業承継に向けた手続きを済ませておくのが理想です。
事業承継にあたり税金がかかる
親子で事業承継をする場合でも、各種税金がかかります。税金の内容は贈与か売買であるのかなどによって左右されます。
「自社の株価は高くない」と考えている人は多いですが、実際に評価額を算定すると高額になるケースは多々あります。株価は貸借対照表の純資産を株式数で割った金額に近いため、思わぬ金額になるケースが多いです。
株式の評価額が高額になると、支払う税金も高額です。場合によっては会社の資産を売却して税金を支払う必要があり、事業承継しても会社運営に支障が出てしまうかもしれません。
なお、親子での事業承継では「個人版事業承継税制」と呼ばれる制度で税金の支払猶予などが適用される可能性があります。支払う税金が高額になると見込まれるならば、このような制度が利用できないか専門家に相談してみるのが良いでしょう。
親子で事業承継する場合のトラブル例
親子で事業承継をするとトラブルが起きる可能性があります。以下ではどのようなトラブルが起きかねないかご説明します。
子が事業承継を受け入れてくれない
親子での事業承継を考えていても、子供が事業承継を受け入れてくれない可能性があります。親として事業承継をしてもらいたいとどんなに願っても、子供が受け入れなければ実現はできません。
事実、中小企業庁の調査では子供から事業承継の了承を得るまでにかかった時間は、3年以上の割合が37.1%です。逆に1年以内に了承を得られた割合は20.5%で子供から了承を得るのには時間がかかる様子が伺えます。
親としては子供にいち早く事業承継したいことでしょう。しかし、子供にも自分なりの考え方があるため、思うように進めづらいとの点でデメリットです。
経営者としての素質が不足している
親子で事業承継をすると、子供に経営者としての素質が不足している可能性があります。親子での事業承継にはメリットがあるものの、経営スキルのない人材に引き継ぐことは「会社の経営」との観点でデメリットです。
言うまでもなく会社の経営は誰でもできるものではありません。経営者に必要なスキルを持ち合わせていなければ、最悪の場合、会社を潰してしまいます。
親子での事業承継にこだわると、経営者の素質がない人材に承継することになるかもしれません。仮に親子間では合意できていても、従業員などからは心配される可能性があります。
まとめ
事業承継において子供を事業の後継者として選ぶ人は多く、全体の38%と最も多い選択肢です。若干の減少傾向にはありますが、選択肢のトップに位置し続けています。子供を後継者に選ぶとメリットがありますが同時にデメリットもあります。これら両方に注目して、親子で事業承継すべきか考えなければなりません。
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