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建設業界のM&A動向は?直近事例をもとに解説

建設業界のM&A動向は?直近事例をもとに解説

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建設業界は、業界の特性から規模の経済が働きづらいこと、合併することで公共工事の入札参加機会が減少すること、などから業界再編が起こりづらい面がありました。一方、近年では人材不足解消や新規事業参入などの狙いからM&A事例が増えてきています。そこで、この記事では建設業界の概要や最新事例を解説していきます。

■建設業界の概要

建設業界とは

建設業とは、「元請、下請、その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業を言う」と定義されています。
建設業は建設工事の種類によって、28許可業種に区分されており、28許可業種を大きく分けると、以下のとおり2種類に大別されます。

 

  • 総合建設業
  • 専門工事業

 

総合建設業は、いわゆるゼネコンです。元請負者として発注者からの建設工事全体について、企画・指導・調整等を行います。
 

専門工事業は、ゼネコンからの委託を受けて工事の一部を請け負うことになります。工事の規模によっては、一次下請、二次下請、三次下請、など多数の下請業者が登場することもあります。そのため、ゼネコンは下請業者を多数活用する場合には、外注管理が重要なポイントとなります。
 

建設業の商流について、顧客と仕入先は以下のように整理されます。
 

  • 顧客(施主):国、地方公共団体、民間企業、個人
  • 仕入先:鉄鋼メーカー、木材メーカー、セメントメーカー、商社

 

国や地方公共団体など、公共工事の場合、入札方式で行われます。しかし、過度なダンピング問題が発生するようになって以降、入札価格だけではなく、環境問題への配慮、安全対策、騒音対策、高性能など、総合的に評価して落札者を決める総合評価落札方式と呼ばれる方法も採用されつつあります。
 

建設業界の仕入先は鉄鋼メーカーなど、資材メーカーです。そのため、資材価格の上昇→仕入金額の上昇→利益率の悪化に繋がります。近年は資材価格が上昇傾向にあり、建設業界を苦しめている原因の一つとなっています。

建設業界の市場規模

建設業界の市場規模は、国土交通省が発表している「建設投資見通し」により把握することができます。2019年時点の建設投資額は62兆9,400億円です。内訳は、政府投資21兆6,300億円、民間投資41兆3,100億円です。政府投資と民間投資の割合はおおよそ1:2となっています。
 

一方、建設投資額は、1992年の84兆円をピークに減少傾向にあります。2010年には42兆円とピークの半分まで減少しましたが、現在は約63兆円程度まで回復している状況にあります。
建設業界の主なプレイヤーは以下の企業です。

 

  • 大林組
  • 鹿島建設
  • 清水建設
  • 大成建設
  • 竹中工務店
  • 戸田建設
  • 前田建設工業
  • 三井住友建設
  • 五洋建設
  • 大和ハウス工業

 

■建設業界においてM&Aを実施するメリット・デメリット

建設業をM&Aするメリット

買い手にとって建設業をM&Aするメリットは以下のとおりです。
 

  • 事業規模の拡大により資材の一括購入など、スケールメリットを得られる
  • 優秀な技術者、技能者の獲得
  • ビジネスエリアを拡大することができる
  • 経営事項審査(経審)の点数アップを狙え、官公庁からの仕事が取りやすくなる

 

売り手にとって建設業をM&Aするメリットは以下のとおりです。
 

  • 後継者不足の解消
  • 従業員の雇用を継続させることができる
  • 売却による創業者利益の獲得
建設業をM&Aするデメリット

買い手にとって建設業をM&Aするデメリットは以下のとおりです。
 

  • 株式譲渡によるM&Aの場合、簿外負債を引き継ぐリスクがある
  • 高齢な従業員が多い建設会社を買収した場合、M&Aをきっかけに大量離職されるリスクがある

 

売り手にとって建設業をM&Aするデメリットは以下のとおりです。
 

  • 売り手自身が納得できる評価額が付くとは限らない
  • 買い手との交渉、デューデリジェンス対応、契約書作成など経営者の時間が必要

 

■建設業界のM&A事例

2021年に行われた建設業のM&A事例

2021年1月1日から5月15日までの間に発表されたM&Aは以下のとおり、20件あります。
 

  • 1. 2021年1月18日 アートリフォームによる(株)遊の買収(1.5億円)
  • 2. 2021年1月25日 サコスによる親和電気(株)の買収
  • 3. 2021年1月27日 東京エネシスによる火力発電工事事業の買収(28億円)
  • 4. 2021年1月29日 アウトソーシングによるアイテックの買収
  • 5. 2021年1月29日 ビーネックスグループと夢真ホールディングスが合併
  • 6. 2021年1月29日 オーテックによるインターセントラルの買収(35億円)
  • 7. 2021年2月4日 ひかりホールディングスによる本田組の買収
  • 8. 2021年2月8日 ユアテックによるSigma Engineeringの買収
  • 9. 2021年2月25日 三栄建築設計によるAlpha Constructionの買収
  • 10. 2021年2月26日 サンフロンティア不動産による(株)コミュニケーション開発の買収
  • 11. 2021年2月26日 ひかりホールディングスによる小林工業(株)の買収
  • 12. 2021年3月1日 高松コンストラクショングループによる大昭工業(株)の買収
  • 13. 2021年3月10日 トーアミによる(株)渡部建設の買収
  • 14. 2021年3月11日 協和日成によるガイアテック(株)の買収
  • 15. 2021年3月17日 本間道路による新潟みらい建設(株)の買収
  • 16. 2021年3月22日 ジューテックホールディングスによる中部フローリング(株)の買収
  • 17. 2021年3月30日 大盛工業による港シビル(株)の買収(1.4億円)
  • 18. 2021年4月5日 イーグランドによるリフォーム工事業の買収
  • 19. 2021年4月9日 TOKAIホールディングスによる(株)マルコオ・ポーロ化工の買収
  • 20. 2021年4月15日 アウトソーシングによる米軍電気通信工事会社の買収

 

上記案件のうち、金額が公表されているのは、1番、3番、6番、17番の4案件です。

アートリフォームによる(株)遊の買収(1.5億円)

2021年1月18日、アートリフォームは、上場会社であるウィルの100%連結子会社である(株)遊の株式を1.5億円で取得しました。(株)遊はリフォーム工事の設計・施工管理を行っている会社です。アートリフォームは、大阪府で住宅などの工事業を営んでいる会社ですが、(株)遊の取得により、リフォーム関連の強みをより強化していく狙いです。

オーテックによる(株)インターセントラルの買収(35億円)

2021年1月29日、オーテックはインターセントラルの株式100%を約35億円で取得することを発表しました。インターセントラルは放射冷暖房システムの設計施工や電気暖房機器を製造販売している企業です。オーテックの「環境システム事業」、「管工機材事業」におけるシナジー効果を狙ってのM&Aです。

 

■まとめ

建設業界の市場規模は約63兆円、日本の国内総生産と比較しても10%を占めており、様々な業界の中でも大きな市場と言えます。以前は業界再編が起きにくい業界と言われたこともありましたが、現在は業界の枠を超えたM&Aも見られます。
 

2021年1月~5月において、建設業界のM&Aは上場企業の案件だけで、20件もあります。未上場企業同士のM&Aを含めれば、より大きな件数となることが予想されます。建設業界を担う人材が高齢化しているという業界特有の問題もあり、今後、ますます建設業界のM&Aは活発になるのではないでしょうか。
 

実際に建設業界のM&Aを考えている場合、まずはM&Aに詳しい専門家に相談してみることがおすすめです。相談の第一歩を踏み出してしまえば、各々に適切なアドバイスをしてくれるため、適切な形でM&Aプロジェクトを推進することが可能となります。

 

yokoyoko777(ライター)
公認会計士歴15年、監査法人、コンサルティング会社を経て、IT企業にてM&Aや投資に関する実務を行っております。
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