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M&A時にでてくる「のれん」とは?

M&A時にでてくる「のれん」とは?

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M&A時に発生する「のれん(営業権)」について、「聞いたことはあるが、いま一つ意味がわからない」という担当者や代表者は多いのではないでしょうか。今回は、そもそも「のれん」とは何か、どのように会計処理したら良いか、事例を交えながらご説明します。

■「のれん」の概要を知ろう。

「のれん」はブランド力・超過収益力

「のれん」はM&Aの際に発生するもので、「企業が支払った金額(買収先企業を購入した金額)」と「買収された企業の時価純資産価額」との差額のことを指します。

例えばA社というブランド力のある企業をB社が買収するとします。A社の時価評価の純資産額が4.0兆円とした時、B社は4.0兆円ではA社を購入することはできないはずです。なぜなら、A社には顧客を引きつける「ブランド力」や「収益を生み出す力」があるからです。そのため、買収価格は、時価評価純資産額を上回る、例えば4.5兆円という金額になるでしょう。この4.5兆円ー4.0兆円=0.5兆円が無形固定資産の「のれん」です。

「のれん」はこのようにM&A時に発生する無形固定資産であり、M&Aしていないのに勝手に自社のB/S(貸借対照表)に発生させて良いものではありません(勝手に発生させることを自己創設と言います)。「営業権」も「のれん」と同義の言葉です。

「のれん」にはマイナスもある

一般的には「ブランド力」や「収益を生み出す力」が「のれん」であり、M&A時に買収対象企業の時価評価純資産額よりも高く支払ったプレミアム部分が「のれん」だと言えます。ただし、稀に、時価評価純資産額よりも低く買収できる場合もあり、その場合は「負ののれん」と言って「マイナスののれん」が発生します。買収する側の企業としては「負ののれん」分お得に企業を買収できたと言えるでしょう。

通常の(正の)のれんが発生した場合は無形固定資産に計上しますが、負ののれんが発生した場合はその金額分を当期の特別利益として計上する必要があります。昨今、話題になったRIZAPはM&Aを推し進めていましたが、負ののれんの計上により特別利益を計上している点にも注目が集まりました。

「のれん」の償却

日本の会計基準では、建物や設備などのような有形固定資産と同様に無形固定資産である「のれん」も毎年その価値が減少していくと仮定して減価償却する必要があります。償却期間は会計基準では20年以内であれば任意に設定することができるとされていますが、税務上は5年と設定されています。これは5年以内であれば任意に設定できる訳でなく、ぴったり5年という意味です。

任意設定する場合でもM&Aを通して買収企業に投資した金額を何年くらいで回収できるかという計算の上で償却期間を決定する必要があります。あまりに短いとその分利益を圧迫してしまいます。

日本の会計基準や税務上では償却をすることになっている「のれん」ですが、IFRS(国際財務報告基準)では、償却しないことになっています。償却をしないということはその分会計処理的には楽ということもできます。

このように「のれん」の償却方法、具体的な償却期間等に関しては専門的な知識と判断が必要なため、顧問税理士あるいはM&A時にアドバイザリーとなった税理士等にきちんと確認することが必須です。

■「のれん 」と会計基準

「のれん」の減損処理とIFRS(国際財務報告基準)

日本の会計基準と税務上は償却する「のれん」ですが、上記の通りIFRSでは償却しないことになっています。ただし、IFRSも日本の会計基準と同様に「減損処理」を行うため、一度計上した無形固定資産としての「のれん」の金額は低くなることがあります。

買収対象企業のブランド(超過収益)部分の価値を評価して買収し、そのブランド部分を資産計上したものが「のれん」ですが、数年後に「そこまでのブランド(超過収益力)は無かった」という結論になった場合、資産価値を減額し、その減額部分を損失として当該年度に費用計上する必要があります。このことを減損処理と呼びます。

減価償却であれば当初(のれんを計上した期)より決まった金額を決まった期間で順々に減価償却費として費用計上していくため、見通しが立ちやすいというメリットがあります。一方でIFRSの場合、「のれん」の減価償却を認めていないため、減損処理が起きた年のみ多額の費用計上を行うということにもなりかねません。当然、減損処理をしたとしてもその年にキャッシュアウトがあるわけではないので、実際の資金繰りには影響しませんが、減価償却なしで減損処理のみがあるIFRSは損益計算書が不安定な推移をするリスクがあると言えます。

「のれん」の減損処理を行うながれ

減損処理は大まかに1減損損失の認定、2減損損失の測定の2段階で処理を行います。

1減損損失の認定:割引前将来キャッシュフローを算出しその総額が帳簿価格を下回る場合は回収できる見込みが無いと判断し、減損処理をする必要があると認定します。割引前将来キャッシュフロー総額が帳簿価格を上回る場合は当然、減損を認定しません。この時点で作業終了となります。2:減損処理が必要と認定した場合、実際に回収可能な金額まで帳簿価格を下げます。そして減額分を損失計上します。実際の減損会計では1減損損失の認定の前に、資産のグルーピングという作業を行い、資産全体を捉えたうえで、上記のプロセスを経て最後に減損損失分をのれんに振り分けて処理します。減損会計はその手間からM&A等に慣れている税理士に対応してもらうことが必須と言えます。

例で見る「のれん」の処理

2018年の野村ホールディングスの赤字転落のニュースはまさに今回ご説明した「のれんの減損処理」によるものです。過去に買収していたリーマン・ブラザーズ等の「のれん」で800億円を超える減損処理(その分損益計算書上の利益を押し下げる)を行なったことが要因です。なお、野村ホールディングスは米国(ニューヨーク証券取引所)でも上場している企業であり、IFRSを採用して決算書を作成しています。日本国内の大手企業複数社がIFRSへ移行することを表明する一方で、「のれん」に関する会計処理の違い等を含むIFRS適用による影響を嫌って米国上場廃止を行う企業もあると言われています。

■まとめ

「のれん」について用語解説をしてきました。M&A時は当然、「いくらで買うか」が大きなポイントになりますが、一般的には時価純資産価額以上の金額を支払う必要があります。本文中にも書きましたが、買収企業に投資した金額を何年くらいで回収できるかを慎重に議論していく必要があります。

また、M&A時に実際に支払った金額と時価純資産価額との差額が「のれん」です。日本の会計基準や税務上の処理を行う多くの中堅中小企業にとっては基本的には減価償却していく必要があります。ただし、償却期間の設定等、一度決めてしまうと途中で変更することができないため慎重に決定していく必要があります。できる限りM&Aに一緒に取り組んでくれた税理士等に、M&A後のれんの処理等についてもサポートしてもらうようにしましょう。

uen0(ライター)
政府系金融機関にて約5年法人融資業務に従事。年商1,000万円から200億円まで様々な規模、業種を担当。融資だけでなく、外為、M&A等にも携わる。現在は自身の起業を準備をする傍、個人事業主や起業家向けコンサルティング業務を行っている。
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