食品製造業の業界動向
食品製造業の業界定義
食品製造業とは、生ものである原材料を購入し、食品・飲料の製造を行い、製造した製品を販売する業種のことをいう。
経済産業省が作成・公表している「工業統計表」によれば、パンや肉製品、調味料などの製造は「食料品製造業」に分類され、ビールや清酒、清涼飲料、たばこなどの製造は「飲料・たばこ・飼料製造業」に分類されている。
食品製造業界の市場規模
食品製造業界の現状・課題
短期的にみると拡大傾向、長期的にみると縮小傾向
寡占度が低く、中小零細比率が高い
食品製造業界は、いわゆる「大企業」の合計シェアも1%程度にとどまり、99%を中小零細企業が占める業界である。
地域に根差した企業も多いことも特徴。
【主要企業】
出所:各社の有価証券報告書、決算報告等
【食品製造業界の構造】
出所:総務省「平成24年労働力調査」
季節性があり、繁閑対応が必要
原料の入手時期に季節性があり、豊凶の差によっても原料の仕入単価が変動するうえ、原料の仕入れ次第で生産数量にも影響が出る。
また、商品によっては季節によって売れ行きに大きな差が出るものも多いため、消費が落ち込む時期には他の商品を製造するなど、季節変動をできるだけ、少なくする必要がある。
為替相場・原料相場の影響
食料自給率の低い日本の食品業界においては、原材料となる小麦や大豆などの穀物をはじめとするの農産物、あるいはその加工品を輸入して使用している場合はもちろん、
国内原料を使用している場合も、畜産物を育てる飼料から原材料まで輸入品に頼っている場合が多いため、為替相場の影響を受けやすい。
円安により、輸入食品・原材料価格が上昇する恐れがある。
特に、交渉力の弱い中小零細企業においてはコスト増分を製品価格に転嫁するのは簡単ではない。
また、長期的に見れば、新興国の経済成長に伴う食糧需給の構造変化や異常気象による不作等も原材料価格上昇の要因になるなど原材料価格は不安定さを増している。
【輸入物価指数】
出所:日本銀行「物価指数年報」
【食品製造業生産額指数(推計)とGDPの推移】
出所:農林水産省「食品産業動態調査」
消費傾向は二極化が進む
消費者の傾向は、低価格志向とプレミアム志向の二極分化が進んでいる。これのメリハリ消費への対応は、小売業にのみならず、製造業においても求められるポイント。
健康・美容への関心が高まる中で「機能性表示食品」や「特定保健用食品(トクホ)」や日本食に代表されるヘルシー志向の商品の伸びも見込める。
安全性の追求
食品製造業者には安全な食品を消費者へ届けるという役割と、消費者の健康に深く関わるという大きな責任も持つ。
特に日本の消費者は、食の安全や品質、健康への意識が高いため、消費者のニーズに応えうる管理体制を築いているかが、重要なポイントとなる。
その責任が果たされない場合、業務停止や損害賠償といった大きな代償があることも。
食品製造業界におけるM&A活用のメリット
- 後継者問題を解消できる
- 従業員の雇用を守ることができる
- 借入金の個人保証や担保を解消できる
- 販路が拡大することで販売の強化ができる
- 地域に根付いた産業を守ることができる
譲渡側のM&Aのメリット
- 規模・シェアの拡大を見込める
- 新商品の提供ができる
- 設備・システム等生産ラインを一括で取得できる
- 季節性による繁忙期・閑散期を分散させることができる
- 海外等慣行の違う地域へのスピーディーな進出が可能に
譲受側のM&Aのメリット
食品製造業界のM&Aのポイント
- 衛生管理、品質管理の仕組みは整備されているか
- 材料の調達や販売における安定性は保たれているか
- ブランド力のある商品があるか
- 製造工場の設備はどうか
- 衛生面など食の安全を守れる水準にあるかどうか
食品製造界のM&Aニュース
2020.5.12 | 丸大食品、乳加工食品を製造・販売するトーラクの全株式を取得し子会社化 |
2020.6.10 | ダスキン、いちごHD及びストロベリーコーンズより宅配ピザ関連事業を譲受へ |
2020.5.8 | アークランドサービスホールディンス、とんかつ、コロッケなどの冷凍食品を製造するコスミックダイニングを子会社化 |
2019.3.26 | 日清製粉グループ、トオカツフーズを完全子会社 |
2019.3.18 | インスタイルグループ、ライフスタイル専門店の運営会社イルムスジャパンの全株式を取得 |